作品タイトル不明
第352話 予期せぬ成長
―――ケルヴィン邸・地下最下層
トラージの転移門から放たれる光のゲート。初めのうちは躊躇したものだが、今となっては何の戸惑いもなく眩い光の中へと足を踏み入れる。僅かに視界が歪んだ後、目の前に広がるは我がマイホームの地下。それもここは皆が使う修練場、鍛冶場やゴーレム試験場といった俺の趣味部屋が設置された層より更に深いところにある場所だ。屋敷の使用人であるエリィやリュカでさえ俺の案内なしでは辿り着けない迷宮構造なので、表向きは工事中という事で立ち入り禁止区域に指定している。
「来たわね、ケルヴィン!」
「ご主人様、お帰りなさいませ」
転移先にはセラとエフィルが待っていた。
「おう、こっちも問題なく設置できたようだな」
「当然よ。コレットやシュトラと一緒に転移門をバラして研究した私が付いているんだもの!」
俺がトラージに転移したのは、何もコレットの凶行から逃れる為だけのものではなかったのだ。ツバキ様にお土産を渡す為だけのものでもない。携帯型転移門が想定通りに起動するかの試験を兼ねて。そして俺がトラージに向かったその間に、屋敷の地下にもう1つの固定型転移門をセラ達に設置してもらい、トラージからこの場所へ転移できるかを確かめる為だったのだ。
「そうするようにって、急に念話を飛ばしてくるからびっくりしたのよ? 事前に教えておいてほしいものだわ」
「それは悪かったけどさ、コレットがあんな状態じゃ伝える暇がないって」
「まあまあ。クロちゃんのお蔭で運搬に労力をかける必要はありませんでしたし、取り付けも不都合なく終える事ができました。終わり良ければ全て良し、ですよ。冒険者ギルドのミストギルド長は大変驚かれていたようでしたけど」
まあ、正直に言えばトラージに到着してから思い付いたんだけどさ。言葉巧みに勧誘してくるツバキ様を躱して雑談で時間を稼ぎ、設置場所を配下ネットワークに詳しく地図を載せはした。が、確かに唐突過ぎた感がある。他国の転移門なんてそうそう気軽に使えるものじゃないから、どうせ帰るならとこんな形になってしまったんだよなー。しかしなぜだかよく分からないが、ツバキ様はかなりご機嫌だった。うん、親睦を深めれたという事でここはひとつ。
ミストギルド長については、ツバキ様に引き続き驚かせてごめんなさいと謝るしかない。 奈落の地(アビスランド) からの転移申請だ。そりゃ驚くよ、普通。クロトの保管を通して俺のギルド証を使い回し(同じパーティ内であれば使えるらしい)、俺の名を使っての申請で通るか微妙なところと踏んでいたんだけど、上手くいって本当に良かった。これが通らなきゃトラージからパーズまで走って向かう必要があったからな。しかもその場合、俺の手で設置をしなければならず大変面倒臭い。 奈落の地(アビスランド) に向かうとパーズ出発前にエリィとリュカに話していたんだが、気を利かしてギルド長にも伝えてくれたのかな。どちらにしろ、俺を信頼してくれたミストギルド長には感謝するばかりだ。地獄製の菓子ではなく、エフィルお手製の菓子を今度差し入れに行こう。まあ、一番喜ばれるのは敬遠されがちな高難度依頼をクリアしまくる事らしいが、それはいつもやってるし。
「けどさ、どっちの転移門も全然問題なさそうじゃないか。これなら気兼ねなく使えるようになるな」
「向こうに戻るにはガリアの転移門を借りなきゃだけどね。自分のものだと思って使ってください! なんて言ってたけど、流石に本気じゃないだろうし」
セラは唇に指を当てながらそう言うが、それ、たぶん本気です。しかし、俺も遂に転移門を持つ身になってしまったか。これからはこの門を通じて人を迎える事もあるんかね。最悪の場合を考えて最下層に設置したが、警備も強めておくかな。
「ご主人様。お疲れのところ申し訳ないのですが、もう1つ連絡したい事があります」
「ん、どうした?」
「それが―――」
「エフィル、実際に見させた方が早いわ。って事で、屋敷に戻るわよ!」
「お、おい、だから無理矢理腕を引っ張るなぁアダダダダ!」
この場所から屋敷まで、最短最速ルートでも十数分。それは詰まりもげそうになる腕の痛みに耐える時間となる訳で。よくもここまで面倒な道のりにしてくれたな、過去の俺。
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―――ケルヴィン邸
エフィルが伝えたかったもの。どうやら屋敷にそれはあるらしい。俺が連れて来られた先、そこは仕事中のリュカとエリィの前であった。
「あ、ご主人様!」
「あら、戻られたのですね。お帰りなさいま―――」
「……よう」
「ご、ご主人様っ!?」
尤も、俺は満身創痍な状態である。ふふ、流石はセラ。俺に与えたダメージ最多の女なだけはある。次点はアンジェ。
「だ、大丈夫? 私、気が焦っちゃって……」
「死にそうになる度に回復してたから大丈夫だよ。酒が入った状態よりは幾分マシだった」
「そう……?」
伊達にお前の彼氏やってないよ。アルコールに侵されてない分、反省して謝ってくれる今のシュンとしたセラは可愛いくらいだ。あー、エフィルがパタパタと扇ぐ風が心地よい。よし、十分リフレッシュした!
「心配させたな。それで、見せたいものって?」
「ご主人様、既に目の前に……」
「目の前?」
はて、目の前とは? 俺の眼前にはいつものメイド姿のエリィにリュカ、そして大人しくなったセラしかいないのだが…… いや、待て。もしや―――
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エリィ 28歳 女 従人 武装メイド
レベル:130
称号 :パーフェクトメイド
HP :650/650
MP :884/884
筋力 :317
耐久 :288
敏捷 :685
魔力 :934
幸運 :870
スキル:メイドの神髄(固有スキル)
格闘術(C級)
赤魔法(S級)
白魔法(C級)
要望察知(S級)
教示(B級)
奉仕術(S級)
魔力温存(B級)
調理(S級)
目利き(S級)
裁縫(S級)
清掃(S級)
補助効果:メイドの神髄/要望察知(S級)+
メイドの神髄/奉仕術(S級)+
メイドの神髄/調理(S級)+
メイドの神髄/裁縫(S級)+
メイドの神髄/清掃(S級)+
隠蔽(S級)
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リュカ 10歳 女 従人 見習い武装メイド
レベル:130
称号 :剣翁の仮孫
HP :540/540
MP :471/471
筋力 :423
耐久 :244
敏捷 :780
魔力 :197
幸運 :1238
スキル:把捉の箱庭(固有スキル)
剣術(S級)
格闘術(B級)
投擲(B級)
軽業(A級)
気配察知(B級)
隠密(A級)
奉仕術(S級)
調理(S級)
目利き(S級)
裁縫(S級)
清掃(S級)
補助効果:隠蔽(S級)
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―――お、おおう!? 進化した、のか?
「えへへ、お母さんと一緒に風邪をひいたかと思ったら、治った途端に強くなっちゃった!」
「あの時はロザリアやフーバーに迷惑を掛けてしまいました。 ……ご主人様。メイド長と比べれば凡庸なものですが、微力ながらもご主人様方のお力になれるよう、精進致します」
いやいや、凡庸なんて謙遜が過ぎる。最初の頃の俺たちの力とも遜色ないくらいだぞ。固有スキルまで身に付けている。ずっとパーティに入れていたからレベル的にそろそろな感じはあったが、まさかここまで成長するとは……! これは刀哉と再戦したら、また違う結果もあるかもしれん。
「えっへん! 褒めていいんだよ?」
「ああ、良くやった。良くやったが…… まだ見習いなんだな、リュカ」
「そこは触れちゃ駄目ー!」