軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

第339話 仮拠点

―――ドクトリア王国

一先ずして仮の帰郷を終えたセラ。だがこれから向かう先は本命の、と言っては変だが、正真正銘の生まれ故郷であるグレルバレルカだ。魔王グスタフの亡霊の噂が立っている事だし、用心に用心を重ねていかなければなるまい。

幸い、ドクトリアの王であるガリアは俺たちに惜しみなく協力すると確約してくれた。この国の貨幣の援助、食料の融通、情報の提供。果ては城の一部を割譲するとまで言ってくれたが、そこまでしてしまうと色々と政治的な問題が発生してしまうので断った。セラ風に言うと、あ、それは別にいらないわ! である。代わりといっては何だが、街中にある一等地を譲って貰った。せっかく土地を貰った事だし、仮の拠点を作る算段なのだ。ずっと住む訳ではないが、いっその事別荘にしてしまってもいいだろうしな。

「ここであれば城からも近く、商業施設などにも不自由しないかと。要らぬ世話ではありますが、治安も良いです。 ……本当によろしいのですか? ここ、邸宅の老朽化が酷い状態ですよ?」

「問題ないよ。直せば十分住めるさ」

心配無用、土地さえあれば主にダハクが修繕してくれるだろう。むしろ自前で作れる。しかし、王様自らお膳立てしてくれるからか、行動が早くてとても助かる。外見は牛と蛇だけど繊細な仕事振りだ。

『全員、マップに記した場所に集合!』

念話で仮拠点の話を交えて、仲間達に召集をかける。程なくして、皆が集まってきた。メルフィーナは早速買い食いをしていたのか、食い物を抱えている。 ……おい、金はどうやって手に入れた?

「道端で腕相撲勝負というのをやっていまして、そこで小金を少々」

「あー、そういう金の稼ぎ方もあるか」

まあ、もう金の心配はないが。この国に限ってだけど。

「ですがあなた様、地下世界の食べ物はあまり期待されない方がよろしいかと。どの店も焼けばいい、煮ればいい、後で味を足せばいいと、お世辞にも調理技術が発達しているとはいえませんでしたので…… モグモグ」

その申し出、地獄の飯を食いながら言っても効果ないぞ。あ、でもいつもより量が少ないな。効果半減に訂正してやろう。

「ダハクがまだ来ないな? また単独行動でどっか行ったか?」

毎回毎回、フッとどこかへ消えてしまうのも困ったものだな。大方 奈落の地(アビスランド) の珍しい植物を探索しに行ったとか、そんなところだろう。或いは男磨きか?

「主、主」

「ん? ムド、どうした?」

ローブをちょこんと摘まんで、黄ムドが呼びかけてきた。差し出した小さな手には手紙がある。

「これ、ダハクから」

「……嫌な予感しかしないな」

念話で事足りるだろと思いつつも、黄ムドから手紙を受け取る。

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―――ケルヴィンの兄貴へ

ちょいと土竜王の旦那に挑戦してくるッス。磨きに磨いた俺の男気、今こそ見せる時ッ! ムドやボガに遅れを取っちまったが、俺も立派な竜王になって戻って来るんで気長に待っていてほしいッス。あ、しっかり強化もしないとな。途中、植物の収集もしときます。おっしゃ、俺はやるぜ!

―――第1の舎弟、ダハクより

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手紙を閉じ、眉間に手を当てる。

「どっちも当たっていたけど、行動が自由過ぎるだろ……」

場所も伝えず、勝手に土竜王に挑戦しに行きやがった。メニューさん時代のメルフィーナを思い出すな。せめて一言伝えてから動けと。まあ文章の内容から察するに、ダハクと土竜王は知り合いなのだろう。旦那とか言ってるし。配下ネットワークで居場所と状態は把握できる事だし、危なくなったら強制的に召喚解除すればいいか。

「主、ドンマイ」

「お前も手紙を預かったのなら教えてくれよ。ダハクから事情は聞いてたんだろ?」

「聞いたけど、黙っていた方が面白くなりそうだと思って。後悔はしてない」

「今日から3日間おやつ抜きな」

「今後悔した! とても反省した!」

うーん、どの色も基本的な性格は変わらないムドであるが、黄ムドはやや好奇心旺盛というか、何にでも首を突っ込みたがるというか。菓子好きな面は一貫しているんだけどな。

「あなた様、何という酷い罰を科すのでしょうか……! 本当に人間ですか?」

いいえ、魔人です。

「あの…… やはり、こちらで別の場所を手配しましょうか?」

「必要ないよ。確かにダハクがいないと飾り気がなくなるけど、補強するだけなら問題ない」

剛黒の城塞(アダマンフォートレス) の応用で老朽化した建物をアダマントでコーティングさせていく。ぐいぐいずいずい、と――― 作業は数秒も掛からずに終わって、耐久性バッチリな仮拠点の出来上がり。実にお手軽である。

「な、なんと、一瞬で……!」

「細部はダハクが戻って来てからいじるとして、寝泊りするだけならこれで十分だろ。真っ黒で色彩に欠けるけど、今は実用性第一で。エフィル、予備の家具をクロトに出してもらってくれ。一応警備用のゴーレムもな」

「承知致しました。せっかくですので先に掃除しておきますね。クロちゃん、お願い」

エフィルの肩に乗ったクロトの分身体が揺らめくと、保管の中から掃除道具一式がポンと放出される。本家の屋敷より大分小規模だし、エフィルの腕なら10分も掛からず終わるかな。あ、もう玄関先が輝き出してる。エフィル、あまり張り切らないで! 眩しいからっ!

「……セラ様。ここにいらっしゃる皆様は、全員があのような異能を持っておられるのですか?」

「んー、割とそんな感じ?」

「申し訳ありません。私、それほどセラ様のお力になれそうにないです」

ガリアが目に見えて意気消沈している。おい、どうした?

「何でよ? 私たち、ガリアの支援にかなり助けられているわよ?」

「ああ、現に無一文のお上りさんだったからな」

「気を遣って頂きありがとうございます。しかし皆様のお力があれば、どれもが直ぐにでも解決できる些細な問題。このままではラインハルト様に顔向けできませぬ。 上級悪魔(アークデーモン) にまで至ったというのに、己の不甲斐なさが恥ずかしい……」

蛇足をビッタンビッタンと地面に叩きつけながら思い悩むガリア。王様、舗装された道に亀裂が走り始めてますよ。仮拠点とはいえ、自宅前の歩道を破壊しないで頂きたい。悩まなくとも十分助かってるから。

「えっと、ガリア―――」

「ハッ! そうか、アレであればお役に立てるかもしれん! セラ様、皆様、暫しお待ちをっ! 爺、爺はどこかっ!」

蛇足に似合わぬ俊足で城の方向へ消えていくドクトリア王。言葉を掛ける間もなく行ってしまった。コロコロと物言いが変わったり走り出したりと忙しい奴だ。悪い奴ではないのだが、後に残されたのは壊されかけの舗道である。

「歩道、セルフで直すか……」

アダマント、家の前まで伸ばしてやろうか。

「ご主人様、清掃終了致しました。 ……何かありましたか?」

「いや、何でもないよ」

「?」

騎士型ゴーレムを入口に配置して、俺たちは仮拠点へと足を踏み入れた。 ……う、若干眩しっ!