軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

第288話 デスマーチ

―――英霊の地下墓地・第6層

大部屋は激しい戦闘によって優美であった装飾の殆どが破壊され、また部屋自体も崩壊寸前のところだった。今は俺の緑魔法で補強しているので安心だが、やはり広範囲攻撃はしなくて正解だったようだ。

「申し訳ありません、ご主人様。その、余計だったでしょうか?」

「いや、逆に助かったよ。あのままだと俺がやるところだった」

エフィルが謝罪しようするが、俺が光竜王を倒してしまっては竜ズの誰も進化することはできなかった。土埃の汚れを 清風(クリーン) で洗い落としながら、逆に良くやったと褒めてやる。頬を赤くするエフィルは恥かしそうに僅かに俯いてしまった。ういやつめ。

「むう、古竜の身で崇高の存在であった我を破るとはな。崇高でなくなった我も脱帽だ」

そしてなぜか会話に混ざる先ほどまでの敵。昨日の敵は今日の友とも言うものだが、順応が早過ぎるのも考え物な気がする。

結論から言ってしまえば、光竜王への止めはムドファラクが刺した。ムドファラクがエフィルと共に密かに作り出した新技、もとい新 息吹(ブレス) によって。本来放射するように広範囲に放つ 息吹(ブレス) をたった一点に集中させ、弾丸のような形状に押し固めた 竜の砲弾(ドラゴンズシェル) 。こいつが俺が光竜王の動きを封じた時に現れた、カラフルな攻撃の正体である。エネルギーを一極集中させた分、威力と速度が段違いに向上。それにエフィルの 爆攻火(ヒートファーニス) が加わって、炎・氷・雷の各属性をそれぞれ孕んだ3色の弾丸は見事奴の光輪を鐘ごと粉砕した。ちなみに余談ではあるが、 爆攻火(ヒートファーニス) の効果は各首に1回ずつの効果判定となる。

「崇高でなくなったのか……」

「うむ。これからはただの白竜、我の名であるムルムルと呼ぶが良い」

よって、竜王の座から落ちた白竜ムルムルも生きている。「 崇高なる我の光輪(ノーブルオレオール) を破壊されては敗北したと同義」と、勝負が決する前にムドファラクに対し敗北を認めてしまった為だ。何も命のやり取りまでする必要はなかったらしい。竜王でなくなったムルムルは最早不敬も糞もないようで、これ以上戦う必要もなくなった。 ……なくなってしまったのだ! にしても、そんななりでムルムルって…… いや、もう何も言うまい。

「ムドちゃんの様子はどうですか?」

「まだ俺の魔力内で寝込んでるよ。セラの時みたいに結構かかりそうかな?」

肝心のムドファラクとはと言うと、召喚を解除し俺の魔力内で安静にしているところだ。ムルムルに認められ、新たな光竜王の座に就いたことによる進化の最中である。

『『『グォン……』』』

時たま糖分摂りたいだのとの気持ちが伝わってくるのは、女の子? なのだから仕方がない。進化が終われば、もしかしたら人型に変身できるようになるかもしれないな。落ち着いたらエフィルに沢山スイーツを作ってもらうといい。

「にしてもよ、アンタ大昔に現光竜王に負けて死んだ筈だろ? 何で生きてるんだ? それも竜王のままよ」

人型となったダハクがムルムルに問い掛ける。それは俺も気になっていた。

「先ほどの漆黒竜か。当然の疑問であるな。確かに崇高でない我は不本意ながら配下に敗北し、そこで命を落とした」

「ああ。で?」

「……なぜであろうな? 我にも分からん」

「ああん!?」

素っ頓狂な声を上げるダハク。

「分からんのだから、仕方あるまいて。長きに渡る眠りから覚めたら、眼前に我の墓を破壊する貴様らがいたのだから。む、我の墓……? 覚えのない知識が幾つかあるな」

「なんてこった、寝過ぎて呆けたのか……」

「待て待て、一度整理しよう」

ムルムルは元々デラミスと友好的な竜王であった。大昔の教皇との盟約により、現在のトラージと水竜王のような関係にあったこともあると言う。しかし大戦の最中に配下の一体に裏切られ、奇襲を受けて死んでしまった。

「竜王になる為の方法は実はもうひとつある。認められずとも、その竜王を殺してしまえば良いのだ。その場合、最も竜王の力に近しい古竜が次代の竜王となる」

―――らしい。それ以降、その配下の行方は不明だ。ダハクにも聞いたが、竜の間でも殆ど姿を晒さない者のようで、やはり詳細は不明。今度メルフィーナに聞いておくか。

蘇った理由については本当に分からないようだ。ただ、ここが英霊の地下墓地であること。この大部屋が自身の為に建てられた霊堂であることは、なぜか知識として分かるらしい。霊堂についてはそれだけムルムルがデラミスの人々に敬愛されていたのだろう。その墓が俺らに破壊され、無意識のうちにカチンと来たと。 ……あれ? 俺が悪いパターンじゃないか、これ? フィリップ教皇、ぶっ壊してすんません!

「よい。こうして崇高でない我は蘇ったのだ。今やここは無用の長物、フィリップに代わり我が許そう」

「そう言ってくれると助かるよ」

「ムルムル様。寛大な配慮、ありがとうございます」

「うむ。 ……その、美しき従者よ。代わりと言っては何だが、大きな音を立てる時は我に言ってくれ。生前のトラウマか、突発的なものがどうも苦手になってしまってな。予め覚悟していれば大丈夫だから」

「それは大変申し訳ありませんでした……」

あー、だからエフィルの炎に動揺していたのか。納得。

「我が竜王のままであったのは、竜王として死んだからだろうか? 蘇るなど前例がないから分からんな。蘇りについては力になれなくて済まないな」

「ああ、大丈夫だ。恐らく当事者がこの最奥にいるだろうからさ」

「何?」

俺は部屋の奥、下層へと繋がる階段を見据えた。

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―――英霊の地下墓地・第5層

一方その頃、デラミスの現勇者達はと言うと。

「さあ、走って走って、道はもう出来ているんだから! もっと速く! それでいて笑顔で! 撃ち漏らしはこっちで処理するから安心しなさい!」

「も、もう無理……!」

「ギュア!」

「奈々、諦めちゃ駄目!」

「待ってろ、スタミナを回復させる!」

「 大黒屍鬼(グレイブデスオーガ) がもう一体いて良かった…… 前に集中できる」

セラ主催の丸秘猛特訓を受けていた。別に秘密ではないが、 血を浴びし黄泉の軍勢(ヘイディーズブラッズ) を引き連れて刀哉らに追い付いたセラが気分で思い付いた特訓である。

内容は単純明快。刀哉らの背後をセラと 血を浴びし黄泉の軍勢(ヘイディーズブラッズ) が陣取り、 それなりの(・・・・・) 速度で追いかける。刀哉らはこれに追い付かれてはならず、越されでもしたら赤き髑髏の剣先で突っ突かれる。よって同等以上のスピードで前進しなくてはならない。ケルヴィン達が道すがら残していった、大量の高ランクモンスターを打ち倒しながら。後門のセラと骸骨軍団、前門のアンデッドエネミー。全力に近い速さで進む為に消費される体力。己の限界、敵を恐れぬ度胸との戦いでもあった。リオンの聖なる道が正しい道を示し、そしてある程度敵を退けているのが唯一の救いだ。

「うんうん。これを乗り切れば、貴方達はきっと生まれ変わるわ! 私の勘がそう言っているもの!」

まあ、アレである。昔ケルヴィンが勇者の師匠代わりのことをしていたのに対し、自分も何かしたくなったのだ。その結果がこれなのだが……

「神崎君、ありが――― キャー!」

ホラーやスプラッターが大の苦手である奈々にとって、この特訓はまさに試練であった。骸骨に関しては雅の魔法でいくらか慣れていたが、ものほんの幽霊はやはり駄目なのだ。階を下るにつれ醜悪さを増すその外見に、色々な意味で真に鍛えられているのは彼女である。

「……セラお姉ちゃん、私はこっちで良かったの?」

シュトラと熊人形、及びガード軍団はセラの軍団に混じって並走している。

「シュトラは今更B級と戦ったって意味ないでしょ。あ、でも次の階から強い気配が…… そこから参加する?」

流石に申し訳なく思ってか、強制的な快進撃を続ける勇者を見ながらシュトラは頷いた。