軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

349話 前祝いだぞっと

あれから、皆と一緒に家に戻った。勝利はなぜか気絶していたので、聖奈が連れて帰りました。聖奈って、本当に聖女だね。

勝利を助ける方法は残念ながら思いつかなかったよ。元凶のボスを倒せば元に戻る可能性が少しあるけど、様子を見るしかないので、監視をつけておくに留めておく。

まぁ、自分から虎の口に飛び込んだからなぁ……。保険はかけておくためにも、今度お出かけしようかな。みーちゃんは本当に丸くなったよ。

体型は丸くないよ。本当だよ。だって痩せていて成長が止まっていると心配されているぐらいだからね。

強調するのは意味がある。

お家に帰ってきたみーちゃん一行は、今食堂にいるからだ。

「『王』就任おめでとう、みーちゃん」

「凄いわね、みーちゃん」

「おめでとうございます、みー様」

「やったね、エンちゃん」

「おめでとう、美羽おねーさん」

パパとママ、闇夜と玉藻、そして弟の春君、油気両親がお祝いをしてくれる。いわゆる前祝いというやつだ。春君だけ仲間外れは可哀想だからと、玉藻が家族を呼んできたんだよ。

長テーブルの周りに座り、お料理を前にみーちゃんはご機嫌です。

「ありがとう、皆! みーちゃんは王様になります! えっと、目標はまずは東京の住人千人!」

高い目標だよねと、えっへんと胸を張ってコップを掲げて挨拶をする。中にあるオレンジジュースがちゃぽんと音を鳴らす。おっとっと、零れちゃう。

「千人は簡単に集まると思うよ? もう住所変更をし始めている目端の利く人がいるからね」

ビールを片手に、パパが言ってくる。むむむ、そうなのか、千人は簡単なのね。

「それじゃ、百万人を目指します!」

「あらあら、一気に高い目標になったわね」

クスクスと笑うママに、そうかなぁと恥ずかしくなり、テレテレと身体をくねらせちゃう。

「みー様なら簡単にできると思いますよ?」

「うんうん。玉藻も一緒に頑張るよ〜。栄えさせようね〜」

「ありがとう、闇夜ちゃん、玉藻ちゃん」

力強い言葉に、頼もしく思い花咲くような笑みで応える。ペカリと微笑むみーちゃんスマイルを見て、皆は優しい笑みを浮かべる。

「それじゃ、すき焼きを食べよ〜! カンパーイ」

「おー! カンパーイ!」

グラスをぶつけ合うカチンという音が響き、楽しい楽しい夕飯が始まるのであった。

目の前にはコンロの上に乗っかったお鍋がある。ぐつぐつと煮えるそのお鍋はすき焼きだ。

バンザーイ、すき焼きも大好き。ママの手作りハンバーグが最高だけど、皆でつつけるお鍋も美味しいよね。その中でもすき焼きはみーちゃんの大好物だ。一番はふぐチリかな。

「……でも、すき焼きってどうやって食べるのが正しいんだろう?」

「こうやって鍋で煮るんでしょ?」

「いえ、これは皆が食べやすいようにしたのかと。本来は焼いたお肉に割り下を注いで食べるらしいですよ」

「それって焼き肉じゃないの? それにその食べ方だと皆で食べることできないよね?」

少し疑問だねと小首を傾げちゃう。う〜んと悩むみーちゃんたち子供軍団。パパたちは大人同士でお話しながら、気にせずに食べている。

「お嬢様、試してみればよいのです」

スッとニムエが横合いから顔を出すと、新たなるお鍋を置いてくれる。空のお鍋だ。

なるほど、オチが読めたよ。自分で焼いてみせて、そのまま食べるつもりだな。後ろで蘭子さんがスタンバっているね。

「まずは牛脂を敷きまして、そしてお肉を投入します」

ニムエは淡々と言いながら、ドスンとお肉を鍋に置いた。熱せられたお鍋に置かれたお肉がジュウッと焼ける音を立てる。焼けたお肉の匂いで、お腹がクゥと鳴っちゃう。

とっても美味しそうだ。……けどなにこれ?

「これ何グラムの塊?」

「1キロですね。えーと、サッと焼いたら割り下を注ぐ?」

ニムエはメモを読みながら、ドバドバと割り下を注ぐ。でも、ローストビーフにしてもおかしくない肉の塊に染み込みそうにない。

「むむむ、これは生焼けです! おかしいですね……このとおりにすれば作れるはずだったのですが」

「そのメモ、薄切り肉って書いてあるよ?」

「大は小を兼ねると言いますので……。なんだか表面だけ焦げてきました!」

大変大変とニムエが慌てて、コロコロと肉の塊を転がす。そりゃ、焦げやすい割り下をそんな風に注げば焦げるだろうよ。

「仕方ないですね、まったくもう! 一旦厨房で切り分けてきましょう」

「この食べ方では駄目だったと証明できて良かったです」

自身の料理下手を自覚しない青髪メイドはお鍋を持って、蘭子さんに引きずられながら去っていった。

今の食べ方で料理法が間違っていると言われたら、関西人に怒られるよ、まったくもう。

まぁ、皆で食べるにはみーちゃん的にはお鍋でクツクツ煮る食べ方で良いよ。

「今日はみーちゃんのお祝いだから、野菜肉肉白米肉肉で良いよね!」

いつもは野菜肉白米野菜野菜だけど、今日は少し違う食べ方でも許されると思うんだ。

「それじゃ、お野菜から食べようかな」

「ふふっ、みー様のお皿に取り分けますね。どれにしますか? ヒュドラ白菜、円月椎茸、火炎ネギ。高級食材がたくさんありますね」

にこやかな笑みで菜箸を持って、闇夜が尋ねてくる。

「えーとね、んとね、なんでうちのコックはこういうお祝いの時は張り切っちゃうわけ? いや、お祝いだから張り切るんだよね……」

アイスブルーの瞳にチビッコみーちゃんをバッシャバッシャと泳がせて、目の前にある野菜を見て口元を引きつらせちゃう。

ヒュドラ白菜はなんだか蛇の頭のようだよ? しかもニョロリンと何本も根っこから生えているよ?

円月椎茸は縁が刃のように鋭く光って、食べたらお口がズタズタになりそうだ。火炎ネギに至っては、燃えてるよ! 食べられないだろ、これ!

なんでこの世界は無駄に恐ろしい食材を用意するわけ? そして、みーちゃんがまだ見ぬ食材はどれだけあるんだろうね!

「玉藻は火炎ネギがだーい好きなんだ。これって滅多に食べられないよね〜」

「コンコンッ」

玉藻が小皿に乗せた火炎ネギを美味しそうな顔をして。口に放り込む。コンちゃんはテーブルに脚を引っ掛けて、餌をくださいと口を開けていた。

「アチアチッ。炎を食べているようにお腹が熱くなるのが面白いんだよね」

ほふほふと咀嚼して、玉藻は美味しそうにゴクリと飲み込む。

「炎を食べていないかな? それって炎を食べているよね?」

魔法使いしか食べることのできない食材というやつだ。普通の人が食べたら大火傷をするのではなかろうか。

差別とかそういうレベルではない。狂気を感じるのは気のせいかな? 食に対する人類のチャレンジ精神には頭が下がるよ。

「この円月椎茸は、シャッキリとしていて美味しいですよ?」

「みーちゃんはホーンベアカウのお肉にしておくね!」

もう野菜は諦めよう。お肉だけにしておこう。

相変わらず美味しいお肉だ。赤身の食べごたえがあるのに、霜降りがたくさんあり、とても柔らかくとろける。

溶いた卵につけて、パクリ。夢中になって食べちゃう。

うん、美味しい美味しい。白米もお代わり! すき焼きはお肉を食べる料理法の中でも最高だよね!

薄切り肉を重ねて、二枚にして食べちゃう。禁じられた食べ方には背徳感があるよね。

「みー様、あ〜ん」

「あーん」

闇夜から差し出されたお肉をパクリと食べる。玉藻も同じようにお肉を差し出してくる。

「はい、エンちゃん」

「あーん」

お肉お肉、そして白米をむしゃむしゃと食べる。成長期だもんね、たくさん食べないと! 肉とお米のコラボは世界最強だ!

野菜が置かれたら、目を瞑って口に入れる。うう〜ん、たしかに面白い味だよ、この火炎ネギ。ぼ〜っと炎を吐けるかもしれない。

「美羽おねーさん、僕のもどうぞ」

春君がおどおどとした笑顔で、箸に摘んだお肉を差し出してくる。

「まずは私が味見をしますね」

だが横合いから闇夜がパクリと食べちゃう。

「くっ、それじゃこっちをどうぞ」

「持つべきものは弟だよね〜」

素早く新たなるお肉を差し出す春君だが、今度は玉藻が食いついて食べてしまう。

何ということでしょう。春君ってモテモテなんだね。弟と思っている子がモテモテなのは、少し鼻が高いよ。

春君が肉を摘んで、闇夜たちが食べるという激しい攻防を見ながら、お肉を食べる。ホーンベアカウのお肉サイコー。

グレートやキングは美味しすぎて、お米の相棒にならないんだよね。

「ビャンビャン」

椅子の下でチョロチョロと動き、お肉をもらおうとみーちゃんの視界に常に入っていたポメラニアンが我慢できなくなったのかしがみついてくる。

フレキとゲリはおとなしく部屋の隅でご飯を食べているのと大違いだ。

元はフェンリルだから味のついたお肉でも大丈夫だろうと、頭を撫でてあげながらお肉をあげちゃう。噛み付くように肉を食べると、すぐにお座りして次のお肉をリルは求めてくる。がっついている犬である。

パパたちはのんびりとお酒を飲みながら楽しそうにお喋りをしている。ニムエが戻ってきて、ローストビーフに変化した肉の塊を持ってきて、ワイワイと食べるのであった。

モキュモキュと食べながら、その光景を見て平和だなぁと微笑む。この光景がずっと続けば良い。

フラグじゃないよ。もはやフラグなどという理も破壊して自由に暮らすことにしたからね。

シンの居場所は結局わからなかった。けれどもフリッグおねーさんや、ヘイムダルに調べさせているから、いずれわかるだろう。

まぁ、だいたい居場所の想像はつくけどさ。もはや逃げ切ることはできないから、そこにいるとわかっていても、入れない防御の硬い場所にいることだろう。

「来年は波乱の一年になりそうだなぁ」

魔神『アシュタロト』を倒すことから始めようかな。三が日が終わった後にでもさ。

『アシュタロト』が滅べば、全てが変わる。ループは解けて、『魔導の夜』に未来という陽が昇ることだろう。

その時の私はどうなっているのだろうか。

不安は常に付き纏うが、考えても仕方ないし、それにみーちゃんには最高の家族とお友だちがいる。

きっと大丈夫だろう。

それよりも今はお肉を食べないとね!

白米おかわり!