軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

305話 夜中のお話し合いなんだぞっと

その日の夜中である。

みーちゃんはママの監視を逃れて、『マイルーム』に移動していた。

みーちゃん構成体は結構なダメージを負っている。どういうことかというとだ。

鷹野美羽

HP9000

MP5500

おわかりだろうか。元は9000あったMPが減っている。即ち最大MPが減少しています。ヘルヘイムは結構な強敵であったということである。

ママはそんなことはわからないはずだけど、痛そうな表情が本当だと見抜いて、みーちゃんのお布団から離れなかったのだ。

寝ずに看病してくれるママに愛されているなぁと感動して寝たけど、オーディーンのおじいちゃんたちと話し合う必要があったので、こっそりと夜中に移動しました。

見つからないように、ニムエに『睡眠』の魔法をママにかけてもらったから、朝まで熟睡だろう。寝室に運んでおくように指示をしておいたよ。

そして、見なれた部屋に移動して、よろよろと身体をよろめかせてソファに沈み込むように座る。

やはり日常生活はまだ無理だな。ゲーム仕様のみーちゃんだけど、アストラル体へのダメージは深刻でした。

歩くだけで、炎の上を素足で歩くように体は熱く激痛が走っている。絶対安静なのはたしからしい。まぁ、出歩くんだけどね。

部屋にはオーディーンのおじいちゃん、フリッグお姉さんとフレイヤ、そしてヘイムダルがいる。

アリさんとぽよりんは部屋の隅っこですやすやとおやすみだ。ぽよりんをぷにぷにウォーターベッド代わりにアリさんは使っているみたい。まぁ、良いけどさ。

その中の一人が大騒ぎをしており、かなりうるさい。

誰かといえば、ヘイムダルに決まっていた。

「ずるーい! ずるいよレディ! なんで皆は普通に復活しているんだい? 力は不完全だけど、神としての力を強く感じるよ! 悔しいからギャラルホルンを鳴らそう」

パプゥとハーモニカを夜中に鳴らす迷惑な男である。悔しいからって、終末の日を簡単に到来させないでほしい。

「みーちゃんは絶不調だから、静かにしてくれない? 二日酔いよりもひどい体調なんだけど?」

「お嬢様、それは両親の前では口にしない方が良いわよ?」

「みーちゃんは良い子だから、TVのマネをしただけだよ」

ソファに座ってワインを飲んでいるフリッグお姉さんがツッコミをしてくるので、すぐに答えを返す。みーちゃんは二日酔いって、どういうものかわからないもん。とっても気持ち悪いって聞いてるよ。

「そんなつまらない漫才はいらないよ! 僕も神の身体が欲しい! 欲しいったら欲しい」

ヘイムダルはテーブルの上に横たわると、駄々っ子ヘイムダルとなり、手足をバタバタと振る。この神にはプライドというものがないらしい。

「ふむ……お嬢。ヘイムダルの神の権能はどうなっておるのだ?」

白髭を撫でながら、オーディーンのおじいちゃんがガンマン人形を実験体を見るような知的興味を持つ光を隻眼に宿して聞いてくる。

「う〜ん、ヘイムダルは緊急避難的に受肉させたから、全部中途半端な性能なんだよね。神域を脱出するのもヘルヘイムとの戦いでも役に立たなかったし」

ビミョーすぎる性能なんだ。相手の構成や戦闘力は視認すれば看破できるみたいだけど、こいつ強敵が現れたら逃げそうだしなぁ。

「私のぬいぐるみコレクションにしておこうかな。アリさんの隣に飾れば良いと思う?」

「思わない! 思わないよ!」

コテリと首を傾げて、新しいお友だちのために、ぬいぐるみの配置を変えなきゃと思っていると、即座にヘイムダルは反論してくる。

しかも駄々っ子モードをやめて、余裕ある笑みで見てきた。

「酷いよ、レディ。………しかしわかっているのさ。僕の能力『千里眼』を使ってほしいのだろう?」

なるほど、状況は理解していたのか。まぁ、神様だからなぁ。

「わかっていたなら話は早いね。そうだよ、『千里眼』を使って、ある物を見つけたいんだ」

「『黄金のドーナツ』がどこにあるのかということよね」

「違います。『フリズスキャールブの王座』がどこにあるのか知りたいんだ」

真剣な顔でフリッグお姉さんが欲しいお菓子を口にするけど、黄金の腕輪を増やすだけの神器なんかいらない。それよりも知りたい神器があるのです。

「な、なるほど。『フリズスキャールブの王座』はあらゆる場所を閲覧できる神器です。敵の手に渡っていると考えているんですね?」

「うん、そうなんだ。放置されていれば良いけど、神無公爵あたりにこれからの行動が全て盗み見されるのを防ぎたいんだよ」

フレイヤがおどおどとしながら口を挟む。そのとおりなんだよね。

『フリズスキャールブの王座』とは、オーディーンの持つ神器の一つだ。その王座に座れば世界の果てまで全てが見通せるチートな神器である。

『終末の日』でオーディーンのおじいちゃんが滅んだあとに、たぶんヘルヘイムにパクられているはず。ヘルヘイムが滅んだ今はどこに放置されているか気になるんだよね。

「そうね。愛する夫の遺産を盗むなんて許せないわ。遺産は全部最愛の妻である私のものなのに」

天井を見上げて、黄金の瞳を切なげにして手を組んで祈るように演技をするフリッグお姉さん。たぶん、天井にオーディーンのおじいちゃんの幻影が映っていたりするんだろうね。

「儂の遺産を取り戻してくれ、愛する妻よって、オーディーンの思念が語っているわ」

「騙っているの間違いであろうが。儂は復活したし、貴様には酷い目にあった記憶しかない」

「どうも記憶に欠落があるみたいなの。記憶喪失なら監禁とか拷問とかノーカウントにしていいと思うわ。今は愛している記憶しかないの」

「今も昔も貴様が愛しているのは貴金属だけであろうが」

白けた表情で半眼で睨むオーディーンのおじいちゃんへと、いけしゃあしゃあとした顔で答えるフリッグお姉さん。

まぁ、フリッグお姉さんは悪妻と神話でもあるからなぁ……。普通にやり取りしているから、仲は悪くないんだろう。

「だからね、僕も完全体にしないといけないと思うんだ。ほら、もう一回受肉をやり直してくれ給え」

胸を張って、調子に乗るヘイムダル。こちらの足元を見て強気になる小物である。

「ヘイムダルって、こんな性格だったの?」

「えぇ、神の橋を守ると言って橋の前に家を作ったの。そして引き篭もってニートをしていたわよ」

「そ、そうですね。私が世界各地を英雄探しで奔走しているのに、暇そうでした。雨の中立っているのは大変だとか、敵がいつ来てもわかるように目を光らせているとか嘯いていて、大変なんだなぁと差し入れにいったら、家で本を読んでゴロゴロしていたんです!」

「『千里眼』があるから、立って見張りをする必要がないと気づいたんだよ! それならベッドでゴロゴロしていてもいいだろう?」

ジト目のフリッグお姉さんと、冷たい視線を送るフレイヤに必死になって抗弁するヘイムダル。なるほどニートだったのか。橋を守るだけって暇そうだもんな。

たった一人で守っていたということは、誰も見ていないから好き放題できたと。神話の裏話って聞きたくなかったよ。

「だーけーど、ほらそれでも僕の『千里眼』は本物だ。完全に力を発揮させるために、受肉をお願いするよレディ」

「しょうがないなぁ。それじゃ二身合体と三身合体のどれにする? 特殊合体でも良いよ」

「普通に受肉をさせてほしい! 怪しげな融合はお断りする!」

アリさんとぽよりんがみーちゃんの話を聞いて、合体するのかなと、ヘイムダルの横にちょこんと座ったので、不吉なる危機感を覚えたらしい。蒼白な顔で必死に訴えてきた。

みーちゃんの館はサービス万全なのに残念だ。

ヘイムダルの頭をむんずと掴み、回復魔法にして創造魔法を使うことにする。

『神意』

『 神癒(ゴッドヒール) 』

最終回復魔法『 神癒(ゴッドヒール) 』。その力はHP満タン、状態異常回復、デバフ解除、ステータスを10%上げるバフ効果も付く最高にして最後の回復魔法である。

みーちゃんは裏技として『神意』を複合すると、創造に変化できるのを知ったのでヘイムダルに試してみた。

ヘイムダルの身体が白金に光り輝き、その身体が変化していく。

「わっはっは、僕は身体を取り戻したぞ。これからは自宅警備をするからよろしく! たまに『千里眼』を使えばいいんだよね?」

光に包まれるヘイムダルは、心底嬉しそうにクズの発言をする。自分のスキルが有用だと知って、それだけの力に頼ろうとする神がここにいた。

白金の光がおさまると、もやしのように痩せた身体と不健康そうに隈ができている目元、青白い肌のヘイムダルが姿を現した。

「んん? あれぇ? 僕の姿が変じゃないかい? 僕はクールで二枚目のナイスガイだったよ? こんな弱そうな身体ではなかったよ?」

着ているのは黒色のジャージであり、神々しさの欠片も見えない。

不思議そうに首を傾げるヘイムダルだが、心当たりはあるよ。

「えっと、ニートと聞いてイメージが変わったみたい。ごめんね?」

たぶんみーちゃんのせいだ。

「ニートなヘイムダルを想像しちゃったんだよね」

「創造とかけなくてもいいよ! 早くやり直して! すぐにやり直して!」

「こ、これで良いと思います。元に戻すのはきちんと働いてからにしましょう」

フレイヤが満面の笑顔で押し留めてきた。どうやらヘイムダルのニートは許せなかったようだ。

「そうだね。ニートになられても困るし、パパの執事でもしてもらうかな。それよりも『千里眼』を使ってよヘイムダル。報酬は毎月『 神癒(ゴッドヒール) 』で少しずつ身体を健康にしてあげるよ」

「ぬぐぐ………足元を見られている……。仕方ない、未来のニート生活のためにも僕の力をお見せしよう!」

カッと目を光らせて、ヘイムダルは神の権能を使用する。なんか間抜けなエフェクトだ。

『千里眼』

「僕の目からは何者も逃れることはできない………むむむむむ」

ゴクリと息を呑みワクワクして待っていると、ヘイムダルはフッとクールに笑う。不健康そうな姿なので、まったく似合っていない。

「何も見えない! この神域は完全なセキュリティに守られているんだね!」

「さて、お外に行ってもう一度使おうか」

神域は覗き見禁止なのがわかって良かったよ。