軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

229話 キャンプの準備だぞっと

拠点のコボルドたちは6人の美少女パーティーにより殲滅されました。

約1名は戦闘に加わらなかった? いやいやボス倒したよ。たぶんボス。小さな肉塊となったので、お掃除大変でした。

でも、一撃で風船みたいに破裂したから、ボスじゃなくて、野良魔物だったのかもだけどね。

「ねぇ〜、この魔石で充分じゃないかな〜? 用意した魔石より高品質だよぉ」

わんちゃんキングの魔石を拾って、鈴が遠い目をして言ってくる。たしかに用意したのはレベル40。わんちゃんキングの方が良い魔石だ。

「もっと良い魔石が手に入るかもしれないから、とりあえず仕舞っておくね。ここで提出したら、キャンプ終わっちゃうし」

「キャンプの方が大事なんだねぇ」

呆れた表情で見てくるけど、当然でしょ。皆とワイワイキャンプをするのは、魔石を提出するよりも大事です。

というわけで、一番大きな廃屋を拠点とすることにして、皆でお掃除中だ。

昔はお館様の屋敷だったのだろうか。離れの家屋は倒壊しているが、本宅は柱も腐っておらず屋根に穴も空いていない。魔法による保存がかけられているのだ。

だけど屋敷内は泥だらけで、雑草が入り込んで汚らしい。とてもではないが、掃除をしないと使えない。

「玉藻ちゃん、これを使って」

「はーい。おぉ、凄いのを持ってきたね〜。ニッシッシ」

用意しておいた紙束を玉藻に手渡すと、玉藻はその紙束を見て一瞬驚くが、面白そうに笑う。

「任せて、コンコン魔法を見せちゃうよ! 魅せちゃうよ〜」

紙束をパラリと解くと、扇のように広げて、踊るようにクルクルと回転する。

「てりゃあ〜!」

『修復符万全乱舞』

ふわりと飛翔すると紙束、いや符の束を花びらを撒くように放り投げる。

ひらひらと符が舞い上がり、ぴかりと輝くと屋敷が優しい光に覆われていく。

そうして、屋敷内に繁茂する雑草は刈られて外に吹き飛び、泥は光の中に消えていく。ひび割れていた壁は新築同然に戻り、屋敷を覆っていた蔦は剥がれて枯れて地面に落ちる。

光が収まった後には新築同然の屋敷が出現するのだった。

「さすがは玉藻ちゃん! やるね、凄いね、素晴らしいね、惚れ惚れするね、玉藻ちゃん」

なんだか古い言い回しで褒めるみーちゃんだが、玉藻はてれてれと頬を染めて、頭を突き出してくる。

ふわふわな髪の毛だよねと、ナデナデして褒めてあげる。ついでに尻尾ももふもふしちゃう。いつも手触りサイコー。

これで2泊3日の拠点は決定だね。

「エェッ〜〜〜! ちょ、ちょっと……今の『修復符』じゃない? 相場で2億はするのを、パーッと使わなかった?」

なぜか鈴たちがアワアワと混乱気味な顔で慌てる。

「ニッシッシ。30枚は使ったかな? ほれほれ〜って使ったかな?」

「うん、36枚あったよ」

「72億円を使っちゃったんだよぉ〜?」

「私の部下に超一流の巫術師がいるから、安く手に入るの」

マツが作ってくれるから、無料なのだ。魔木などの素材も持ち込みだしね。

『修復符』は見ての通り、建物を修復する巫術だけど、制作に高難易度の技術が必要で、素材も希少なので高価なのだ。

ゲーム仕様のみーちゃんでは、このアイテムは作れないから、マツが仲間に入ってくれて助かったよ。

「あぁ〜! そういえば、皆テント持ってきてないぃ〜! 最初から拠点を作る気だったんだぁ〜」

ワナワナと指を震わせて、信じられないと、もはや混乱の極みにある猫娘。

その点に気づいたか。たしかにみーちゃんたちはテントを担いでいない。拠点作りは巫術で終わらせる予定だったしね。

72億が……とか、泡を吹いて倒れそうになる先輩たち。

対して、みーちゃんパーティーはというと

「コボルドの死体は全部グーちゃんが吹き飛ばしてくれたよ〜」

「……お布団作って」

「ご飯はカレーにする?」

「みー様、屋敷を前に一枚撮りませんか?」

平常運転です。

ふっ、鈴は修行が足りないね。

「とりあえずお風呂を入れようよ。皆汚れちゃったしね」

コボルドたちとの戦闘で汚れた皆。お風呂で綺麗にした方が良いと思うんだ。

「こ、このオリエンテーリングの意図は理解してるぅ?」

「うん、野営の大変さを知って、 知恵(かね) と 勇気(ちから) でサバイバルをするんだよね」

「うん……不穏な感じだけどぉ……もう、いっか」

「そうそう。エンちゃんはエンちゃんだから」

「うん、ようやく意味がわかったよぉ」

なぜか玉藻の言葉に同意する鈴。どういう意味なのか気になるんだけど。

まぁいっかと、気にすることはやめて、拠点作りを再開する。今日は拠点を作って、明日に本格的に魔物退治をする予定だ。

玉藻が新たに手渡した符を持って、テテテと屋敷に入り、お風呂を作りに向かう。

闇夜とホクちゃんは周りに魔物がいないか確認しに行き、セイちゃんはお布団作り。みーちゃんとナンちゃんはカレー作りだ。

「キャンプらしくなってきたね!」

厨房は薪を使わないといけないタイプだったので、面倒くさいので外で簡素な炎の魔道具を使用する竈を作ってカレー作りだ。

お肉をさっくり切りまして、小麦粉ジュージュー、砂金と同様の価値があると言われるスパイスをパラパラ〜。

やっぱりキャンプはカレーだよねと、ルンタタと鼻歌を歌いながら、ご機嫌みーちゃんはカレーを作る。今日は奮発しちゃうぞ〜。

「ご飯は30合ぐらい炊けばいいかな?」

土魔法を駆使して、巨大な鍋を作りお米を炊くナンちゃん。リュックサックの中身は全部お米だったのかな?

「明日の分も炊いておくの?」

「またまたぁ、全部食べちゃうに決まってるよ」

「あ、はい」

ナンちゃんが、見たことないほどに真剣な表情で告げてくるので、コクコクと頷き返す。

そうして太陽が沈みはじめて、オレンジ色の空へと変わっていく。

みーちゃんの作ったカレーはキラキラと輝き始めて完成した。『究極のカレー』だ。食べたら全ステータス10%アップするんだよ。

香りだけでも美味しいとわかる。順番にお風呂にも入って汚れを落としたし、夕飯の準備は万端である。

「それじゃあ、カレーを食べようっか」

「ふふ、キャンプっぽいですよね」

「いただきまーす」

屋敷前にテーブルを作って、お皿にカレーをよそい、さぁ食べようとフンスとスプーンを掲げる。もうお腹ペコペコだよ。

皆が笑顔でカレーを食べようと、カレーを掬ったスプーンを口に入れようとする時であった。

「随分、余裕のオリエンテーリングですのね」

少女の棘のある声が聞こえてきて、寸前で止まる。

誰だろうと、声のする方へと顔を向けると、瑪瑙エリザベートが森林からよろよろと現れた。

綺麗に整えられていたドリル髪はボサボサで、枝が髪に絡んでいたり、頬は泥で汚れている。

その顔は疲れ切っており、足取りにも力がない。

「ここに来るのは大変でした……」

月も同じような姿で現れると、聖奈やシン、勝利も出てきた。ニニーだけは箒に乗って涼しい顔だ。

珍しくシンも疲れた顔をしている。さらにクラスメイトたちや、万が一の護衛の先輩たちもぞろぞろと後から続く。

なんだ、これ? どうなってんの?

「僕たちもこの拠点を目指していたんだけど、面倒な魔物が多くて。大変だったんですよ」

「お兄ちゃんは、襲われていたクラスメイトたちを助けていたから苦労したんじゃないですかっ!」

「まぁまぁ、同じクラスメイトだから助けるのは当然だろ?」

柔らかな笑みでシンが激昂する月の頭を優しく撫でて宥める。

本当に助かったよと、シンへとクラスメイトたちが口々にお礼を言う。

「ありがとうな、シン」

「危ないところだったんだ」

「ここに来るのって、大変だったのね」

「皆、同じクラスメイトじゃないか。これぐらいたいしたことじゃないよ」

嫌味なく笑みを浮かべて、手をひらひらと振るシン。

「さぁ、僕たちもキャンプの準備をしよう。動けない人はいない?」

しかも、怪我人がいないか、気遣いもしている。

……? おかしいな。この間のどことなく演技っぽい様子が見えない。本当に心底そう思っているように見えるよ。

そこには、原作どおりのお人好しな姿を見せるシンがいた。

なにこれ? どうなってんのと、聖奈へと視線を向けると、眉を顰めて苦虫を噛んだような顔になっていた。美少女が台無しになる顔だから、気をつけた方がいいよ、聖奈。

「ここに来るまで、皆苦労なさったというのに……。帝城闇夜さんは随分と楽なようですわね。琥珀生徒会長は贔屓がすぎるのでは?」

「ふぇっ?」

キッと噛み付くような視線で、エリザベートが鈴を非難する。

なんのことと、鈴が驚き戸惑う中で、エリザベートは言葉を荒らげて、さらなる追及をしてきた。

「生徒会長たち精鋭が護衛をして、かつ、宿泊施設を用意し、豪華な食事……。そして提出用の魔石も既に用意してある……。これを贔屓と言わずしてなんというのですか?」

「え、……ぇぇぇぇえっ!」

驚愕してパクパクと口を開くが言葉を発することができない鈴。

ふむふむ……贔屓かぁ。

たしかにみーちゃんたちの後ろには72億円かけて修復した宿泊施設があるね。

そして、見るからに美味しそうな『究極のカレー』。

お風呂に入って、身奇麗なみーちゃんたち。

テーブルに置きっぱなしのわんちゃんキングの魔石。

なるほど。今到着した人たちは、贔屓をしているように見えるや!

「違うよ? この宿泊施設はたった今72億円かけて直したんだょぉ」

「はっ、嘘をつくならもう少しまともな嘘にしたらいかが? どこの世界に2泊3日しかしないのに、それほどのお金をかけるアホがいますの? 予め直しておいたのでしょう!」

真実を話す鈴を鼻で笑うエリザベート。

そのアホはアイスブルーの瞳をうるうる潤ませて泣きそうなんだけど?

「みぃちゃん、助けて〜」

「う〜ん、これは何を言っても無駄だね! とりあえず言えるのはお風呂は沸いてるから、皆入ってきたら?」

疲れているようなので、そう言うと皆は顔を見合わせて……素直に屋敷に入っていった。

「ありがとう、女帝陛下」

「ふぅ、助かった〜」

「ご飯作るのに竈を借りて良い?」

「部屋割りって決まってるの?」

「うん、疲れた時は飴ちゃん食べると良いよ!」

たくさん作った飴ちゃんも配っておく。その飴、美味しいんだよねと、笑顔で受け取っていった。

宿泊する気満々でもある。まぁ、部屋はたくさんあるしね。別に構わない。

「な! そうやって人を誑かすのですわね! 琥珀家には負けませんわ!」

「まぁまぁ、僕たちは僕たちで魔物退治を頑張ろう。あの魔石以上を採れるようにさ」

エリザベートの肩に手をおいて慰めるシン。その瞳が不敵な光を宿す。

わかりましたわと頷き、エリザベートたちも屋敷に入っていくのであった。いや、普通に入るんかい。

……でもこれ、見たことあるぞ。

原作第一巻だ! 波乱のオリエンテーリングで、神無家を優遇する琥珀鈴。

太陽と取り巻きたちのために、たしかご飯を用意してやったり、テントを張ってあげたり、魔石を用意してあげたりと、召使いのようにせっせと働くんだよね。

瑪瑙家と距離をとることに決めたエリザベートはシンたちと一緒のパーティーを組むんだ。

そして、鈴たちに贔屓がすぎると文句をつける。

鈴はその抗議を鼻で笑い飛ばし、権力が全てなんだよと答えるのだ。

そうして、今のシンと同じセリフをシンが口にして、突如として現れたクラスメイトを襲う強力な魔物を倒し、魔石を手に入れて一番の成績となるのである。

生徒会長たち『須佐之男』と、本格的に敵対するのが一巻のエピローグだ。なぜか悔しがるのは鈴で、太陽はセリフも一言ぐらいだったな。

シチュエーションは違うし、立場も違うけど、なるほど、ストーリー準拠だったのか。

感動だよ。やったね。遂に原作が始まったんだ。

惜しむらくは、またもやみーちゃんはスルーされた模様。

空気なモブだから仕方ない。

ところで、お話をしている間にカレーを入れたお皿が空になっているんだけど、ナンちゃん何か知らないかな?