軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

228話 テンプレオリエンテーリングだぞっと

天に銀色の魔法陣が描かれる。複雑な幾何学模様の魔法陣は紫電を発して、グリフォンがゆっくりとその勇姿を現す。

空の王者たる鷹の頭と翼を持ち、陸の王者たる獅子の胴体。その身体は全長10メートルはあり、誰もが息を呑む獣の王者としての威容を見せていた。

「クケェ〜ッ」

グリフォンは地上に降り立つと頭をあげて、翼を大きく広げると咆哮する。

空気がビリビリと震えて、その内包する魔力を本能で感じて、隠れていた魔物や動物たちが一斉に逃げ出す。

「ピヨ〜ッ」

みーちゃんも合わせて、細っこい腕をパタパタさせて、クルリンとダンスを踊りながら咆哮する。

空気がほんわかして、その内包する愛らしさを本能で感じて、逃げ出した小動物が一斉に戻ってきた。

「これはグーちゃんですか? 以前と比べて力がまったく違いますが」

周りの面々が圧倒的なグリフォンの力を感じて、顔を強張らせる中で、立ち直った闇夜が真剣な顔でカメラをパシャパシャ鳴らしながら聞いてくる。

みーちゃんはカメラ目線で、パタパタと腕を振って、敵からのヘイトを下げる『ヒヨコの舞Ⅳ』を舞いながら、ニパッと愛らしく笑う。

「うん! ししょーとの訓練でグーちゃんと個人で契約することができるようになったんだ!」

「召喚石の召喚獣と直接契約したのですか! さすがはみー様です」

「ほぇぇぇ、普通はできないよね〜。すごーいエンちゃん。どんなご飯で契約したの? 油揚げをくれれば玉藻も契約しちゃうかも」

闇夜がパシャパシャと褒めてくれて、玉藻が狐の尻尾をふりふりと振りながら、驚きの顔になる。

ホクちゃんたちも、その顔は驚きで……。

「エンちゃんだもんねっ!」

「……んん。驚きはない」

「ドーナツをくれれば、私も契約するよ〜」

平然とした顔で三人娘は驚いてくれなかった。むぅ、サプライズに慣れちゃったか。闇夜と玉藻は優しいね。ウルッとくるよ。

「え、なんで驚いてないのぉ〜。私たちが変?」

唖然として口を開けて、鈴たちは驚いてくれるので満足である。腰を抜かしているリアクション芸人もいるしね。

グーちゃんと契約できるようになったのは『錬金Ⅳ』で召喚石を契約書に錬成したからだ。

特別な素材が必要なのだが、今のみーちゃんなら妨害してくるフリッグお姉さんの魔の手以外は楽勝でした。素材の中に魔法宝石があったのは言うまでもないことだろう。

なので、グーちゃんは正式にみーちゃんの召喚獣となった。そのため、みーちゃんのレベルに合わせた召喚獣となった。

その力はもはや並大抵のボスよりも強い。レベルが上がっただけで特殊能力とかは覚えていないノーマルグリフォンだけど、情が移ったから仕方ないよね。

ついでにアリさんも契約書に変えて、召喚獣にしておいた。貴重な召喚枠を埋めて、装備を失うのはコレクターとしては残念だけど、もう装備枠をレベルの低い装備で埋めたくなかったので仕方ない。

「それじゃあ、皆で追いかけよ〜」

「了解です」

お座りしたグーちゃんの背中によじよじと乗って、ぽすんと座る。皆も同じように背中に乗ったので、ペチペチとグーちゃんのもふもふな毛皮を叩く。

「それじゃあ、グーちゃん頼んだよ」

「クケェ」

わかったよと、グーちゃんが翼をばさりと広げると飛翔する。

「うひゃー、たかーい!」

「ウワァ、凄いね!」

高空までグングンと急上昇して、地上がジオラマのように小さくなり、その光景に見惚れてしまう。たぶん地上では先生たちが慌てている予感がする。

グーちゃんは加速すると音速に近い速さで飛行する。まるで戦闘機のような速さで飛行をするが、風圧は感じずにそよ風がそよそよと頬を撫でるだけだ。

「風の結界をかけてくれるなんて、頭の良いグリフォンだねぇ」

高速飛行でも影響を受けないために、鈴が感心して言ってくる。ゲーム仕様だから当たり前だけど、それはナイショ。

「うん! だからいくらでも速く飛べるよ」

なので、誤魔化しておくと、玉藻が忠告してくる。

「空中機雷魔法があるから、あんまり速く飛ばない方が良いよ。ボカンってなっちゃう」

「はぁい」

この世界で戦闘機が流行らない理由だよね。魔法で撃ち落とす必要なんてない。ちょっと邪魔な障害物を空中に浮かすだけで、飛行機は壊れちゃうから。

それでも、グーちゃんは召喚獣だ。空中機雷魔法ですら防ぐことはできるだろうけど、その秘密をわざわざ明かす必要はない。

グングンと飛行していく。端末を操作すると、隠し金山ダンジョンが書かれたダンジョンまとめサイトを発見した。

「これなんだ」

「はい。グループダインで噂をされてました」

「ふーん。グループダインは苦手で見ていないんだよね」

前世から苦手意識があるので、みーちゃんはアカウントすら持っていないのだ。連絡はメールでよろしく。

「タイムスタンプは……つい最近みたいだよ」

テテテと操作すると、不思議なことに管理者としてログインしちゃったので、詳しく内容を確認しておく。偶然って怖いね。

どんなに隠しても追跡できちゃうのが、みーちゃんクオリティです。

「怪しい話が流れているということですか?」

「そこまでじゃないけど、きっとなにか理由はあるよ」

「あ、あそこらへんじゃないかな? ほら、廃墟を発見しちゃったよ〜。コンコンッ」

狐っ娘の指差す先には、草木に覆われてはいるが、廃墟の集落が見えた。

「武田信玄の元拠点ですね。『保存』の魔法が付与されているので、家屋は崩壊していないようです」

「数百年も保つなんて、昔の魔法も強かったんだね」

家屋のドアなどは崩れて、草が入り込み、内部は泥だらけのようだ。それでも、倒壊しないのは凄い。

魔法の世界はやっぱり違うね。

「でも、もう住んでいるのがいるみたいだよ」

ホクちゃんが身体を乗り出して地上を見る。

「たしかに魔物たちの棲家になっているようだね」

屋敷周りに魔物の姿がチラホラと確認できた。

シンたちを追い越して、先に到着してしまったので、拠点の掃除をしないといけないらしい。

「………コボルドたち。鉄を腐らせて土に変える魔物」

「鉱山が近いからみたいだよぉ。腹が減っては戦にならず。お腹はグーグーなるぅ」

セイちゃんの言うとおり、二足歩行の犬たちが棍棒を手にして徘徊している。体格の良い犬もいる。

泥だらけで毛皮もカサカサの犬の魔物『コボルド』だ。その口からは狂犬病のように泡を吹き出し、狂気を示すように凶暴な目つきをしている。

良かったよ、ポメラニアンのような可愛らしい見かけじゃなくて。あれならば容赦なく倒せる。

「たぶん、ほとんどの一年生がここに集まると思いますわ」

「なら、一番良いお屋敷を拠点にしよっか」

闇夜が言うとおりだ。たぶん誘導されたクラスメイトたちが集まる予感。

「オッケ〜。それじゃあ、いっちばーん!」

「……仕方ない」

「ご飯の前の適度な運動〜」

ホクちゃんたちが、ぴょんとグリフォンから飛び降りる。3人ともお揃いの量産型『ウォータン』を着込んでいる。

スーツ全体を包む薄型装甲を身に着けて、背部スラスターが搭載されているシンプルなものだ。魔法障壁を強化するために、マナタンクを増設している人気のタイプだね。

「それでは参ります」

「コンコンッ」

漆黒の魔導鎧を纏う闇夜と、巫女服のような魔導鎧を着込む玉藻も飛び降りていく。

もちろんみーちゃんも後に続く。

「皆で倒しちゃおう。アイキャンフォール!」

四肢を伸ばして小柄なみーちゃんも飛び降りる。

皆は風圧で髪を靡かせて、風に頬を撫でられながら、好戦的な笑みを浮かべて地上にスタンと降り立つ。

それぞれ武器を構えて、凛々しくかっこいい姿を見せる美少女パーティー。

「それじゃあ、殲滅しておこっか」

みーちゃんも少女型の穴から這い出てきて、メイスを構える。みーちゃんだけドスンという音がしたけど、気にしないでほしい。

突如として地上に飛び降りてきた美少女パーティーを見て、コボルドたちは目を剥き混乱をしていた。

「それっ!」

『 氷槍(アイシクルランス) 』

元気な掛け声をあげて、ホクちゃんが宙に氷の槍を作り出すと、素早く撃ち放つ。

「ギャインッ!」

氷が突き刺さった箇所から体が凍りつき、氷像となるコボルド。

なかなかの強さのホクちゃんだ。

『春風ホク:レベル31』

魔導鎧込みでも一流の強さだ。鍛えた結果、学生レベルではなくなっている。

「……ラー」

『 稲妻(ライトニング) 』

最後まで魔法を口にせず、眠そうな目で面倒くさそうにセーちゃんが稲妻を放つ。一直線に稲妻が奔り、コボルドたちを貫いていく。

『秋田セイ:レベル50』

セイちゃんも強いね。……うん、強いね。

「お腹を空かせちゃうぞ〜」

『 岩山礫(ガイアスピアー) 』

ムフフと得意げな笑みを浮かべて、ナンちゃんが地面に手を付けると、地面が盛り上がり岩の槍となりコボルドたちを串刺しにしていった。

『夏井ナン:レベル29』

ナンちゃんも結構な強さだ。というか、セイちゃんが強すぎなような……。雷を得意とするキャラはどのような世界でも強いのかね。

「皆さん、やりますね!」

『 闇刃(ダークネスブレード) 』

「玉藻も張り切っちゃうよ」

『狐火』

闇夜の振るう刀から闇の刃が放たれて、コボルドたちを切り裂いて、玉藻が無数の火球を作り出して、コボルドたちを燃やしていった。

5人の美少女たちの容赦のない攻撃により、コボルドたちは蹂躙されていく。

どちらが魔物かわからない程に、圧倒的に皆は強い。

『コボルド:レベル11、弱点雷』

まぁ、コボルドたちは数はいるけど雑魚だしね。5人の相手にはならない。

「ワオーン!」

しかしながら、コボルドたちの強みは群れである。敵が来襲したとコボルドの一匹が咆哮する。

その咆哮がこの廃村に響き渡り、わらわらと廃墟からコボルドたちが姿を現す。

「ワンッ!」

「ワンワンッ」

「キャンッ」

どことなく罪悪感を覚えさせる可愛らしい鳴き声をあげて、可愛らしくない凶暴な顔でコボルドたちは棍棒を手に襲ってくる。

その数はどこに隠れていたのか、数百匹はいるだろう。屋根に登り飛びかかってくるコボルド、雨戸を壊して飛び出してくるコボルド、草むらから不意をつこうと噛み付いてくるコボルド。

だが、この2年間で多くのダンジョンを攻略してきた5人はまったく動揺を見せずに駆逐していく。

「皆が強くなって嬉しいよ。でも、なんで私はスルーされるのかなぁ」

なぜかコボルドたちは、みーちゃんに近づかない。おかしいな、これはモブは参加できないイベントですか?

「こちらは任せてください!」

「木の葉分身使うよ〜」

「それそれっ! 前衛は任せて!」

みんなは張り切って、連携をして楽しそうに戦闘している。

コボルドたちも、キャンキャンガウガウと唸り、闇夜たちと激闘を繰り広げていた。

だけど、コボルドたちはみーちゃんをちらりと見ると、耳を折り畳んで尻尾を丸めてスルーしていくのだ。

なんで、みーちゃんからは一定の距離をとって、無視をしてくるわけ? 少し酷くない?

不満げにぷにぷにほっぺを膨らませて、こっちから攻撃しようかなと考えるが、背中合わせに戦闘をしているみんなのかっこいい姿を見るに、みーちゃんも同じように敵を待ち受けて倒したい。

「グルぉぉぉ」

迷っていると、今日の寝床にする予定だった廃墟から、のそりと大きなコボルドが姿を現す。

はちきれんばかりの筋肉の身体に、魔銀の胸当てを装備して、魔銀の槍を手にしている。身長は3メートル近く、あからさまにボスの雰囲気を見せていた。

『コボルドキング:レベル45、弱点、雷』

カァとカラスの鳴き声が聞こえると、敵の正体を教えてくれる。

「グルぉぉぉ!」

コボルドキングは、みーちゃんを敵と見たのか、弾けるように地面を蹴り、槍を突いてくる。風の壁が貫かれて、突風と共に眼前に迫ってきた。

コボルドの王様と名乗るだけあって、その力は暴虐と言って良い威力を持っている。普通の魔法使いならば掠るだけでも大怪我を負うだろう。

「てい」

「ギャンッ」

ぶんとメイスを一振りすると、コボルドキングの槍も身体もメキャリと音をたてて砕け散っちゃった。

「………ちょっと強くなりすぎたかも」

魔銀の胸当てがスクラップとなり転がり、コボルドキングは肉塊となって、地面に散らばるのを見て、僅かに眉を顰めてしまう。

まぁ……こいつが弱かったんだよね。きっとそうに決まってる。

調子に乗ってレベルアップを繰り返したせいなんてあるわけない。うんうん。