軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

130話 再びの合流なんだぞっと

真白の服を探して、闇夜とニニーが貨物庫に残ることになったので、美羽は玉藻と一緒に外を調べることにした。

もしかしたら、敵がわんさか待ち構えている可能性があったからだ。長政と共に今浜という奴が裏切ったらしいと、オーディーンのおじいちゃんから、連絡があったからだ。

『隠れる』

『隠れる』を使用して、空気の中に溶け込むように姿を消す。

サブジョブのため劣化はしているが、『盗賊Ⅳ』の『隠れる』は強力だ。敵がいても、よほどの強者でないと、見つけられないと思う。

「『姿隠し』上手だね、エンちゃん。でも、魔法感知に気をつけてね。コラ〜って、見つかっちゃうから」

姿を消したみーちゃんへと、玉藻が注意を促すので、なるほどと頷く。それはやばいね。

なにがやばいって、ゲーム仕様の鷹野美羽。『隠れる』は魔法にも感知されません。バレたらヤバい。それと玉藻よ、みーちゃんはこっちだよ。そっちには誰もいないよ。

『狐変化!』

玉藻がくるりと身体を回転させると、ぽふんと煙に包まれて姿を変えてしまった。

狐さんに変わった。

「これなら目立たないよね〜。コンコーンって、狐の真似〜」

質量保存の法則は、魔法のある世界ではないらしいと教えてくれる狐っ娘である。そうか、狐にも変化できるのか。

「わかった。それじゃ気をつけて行こう!」

1メートルにも満たない小柄な体躯、黄金のもふもふの毛並み。つぶらな瞳にピンと張った狐耳。ふわふわな尻尾をぶんぶんと振ってくる愛らしい狐さん。

つぶらな瞳を見せるもふもふ狐をガッシと抱え込み、みーちゃんはきりりと真剣な表情になって言う。

玉藻狐を抱えたことにより『隠れる』の効果が無くなったけど、特に問題はないだろう。

今は、狐のお腹に顔を突っ込むのみ!

「おぉ〜、ふかふかだよ、もふもふだよ。狐っ娘の体温が感じられるのが、またいい感じだね!」

もふもふ〜と、灰色髪の少女は蕩けるような顔で狐のお腹に顔をスリスリとさせる。あぁ〜、こういうの夢だったんだ。

「くすぐったいよぉ〜、エンちゃん」

狐っ娘は、狐モードでも話せるらしく、恥ずかしそうに言ってくるが、もう少しもふもふさせて〜。

狐さんは身体をくねらせて、尻尾でみーちゃんの顔を叩いてくるが、それもまた良き。

年相応の少女へと戻り、二人はキャッキャッとふざけちゃう。最近は楽しいことを前にすると、前世を忘れるみーちゃんだ。

潜入調査を忘れちゃうフォックスたちである。蛇に襲われても仕方のない娘たちだ。

「ん? 誰か来たみたい」

「そうだね、誰か走ってきてる」

みーちゃんは『狩人Ⅳ』となり『気配感知』の効果も上がっているので、すぐに気づき目を細める。

遊んでいても、実は注意はしている。違和感があればすぐに気付けるのだ。スキルの特性でもあるんだけどね。不意打ち無効だからさ。

玉藻も獣の感知能力となっているのか、狐耳をピクピクと動かして、鼻をひくひくと動かす。

可愛らしいお鼻だなぁと、狐の鼻をちょんちょんと触りながらも、スキルを使用しておく。

『忍び足』

『隠れる』は、どう考えてもバレたらまずいスキルなので使うのはやめて、敵とのエンカウントを減らす『忍び足』を使用しておく。

正直、『隠れる』があれば使わないスキルだ。メリットは、『盗賊』でなくとも使えるというところだろうか。

現実でも、その効果は発揮されて、美羽のたてる音は全て消えて無音となった。たしか劣化するのは効果時間だけのはずだ。効果そのものは劣化しない仕様だったはず。

「玉藻ちゃん、私の頭の上に!」

「コンコン!」

ノリの良い親友は、美羽の頭にちょこんと乗ってお座りをしてくれる。実にプリティな姿を見せながら、弓を構えて猛禽のように、鋭い目つきで警戒する。

カンカンと金属を蹴る足音が複数聞こえてくる。呼吸すら止めて、美羽は壁に溶け込むように静かに存在感を無くし、通路の角から現れるだろう相手を狙う。

だが、角から現れた相手を見て、ホッと息を吐き弓を下ろした。

「おぉ、やっぱり戻ってやがったか、鷹野伯爵! アンブローズ・ニニーがいるから大丈夫だとは思ったがな」

赤毛の巨漢、粟国燕楽を先頭にして、武士たちが姿を現したからだった。どやどやとその数は10人近い。

アンブローズ家の『鏡渡り』は有名らしい。まぁ、そりゃそうか。マーリンの子孫なだけではなく、貴重な転移魔法を使える家門だからな。

「はい! ましろんを助けて帰ってきました!」

「コンコンッ!」

玉藻狐と一緒に得意げに胸をそらす。反らしすぎて、玉藻狐が頭に慌ててしがみついてきたけど、ご愛嬌だ。

その可愛らしいコンビに、燕楽たちは虚をつかれたように呆気にとられるが、すぐに気を取り直して、真剣な表情へと変わる。

「帝城真白を助けたのか?」

「皆の力を合わせて、助けてから逃げ帰ってきました!」

「なるほどな……。上手いことやったんだな」

嘘は言っていない。その前に中ボスを倒したけどね。

美羽は、可愛らしい笑顔で真実を隠した。

玉藻狐が頭の上から、クゥンと顔を覗いてくるが、なにかなぁ? 純粋なみーちゃんになにか言いたいことがあるのかな? さっぱりわかりません。

「武の帝城家の長女に、魔道具使いの油気家。万能の魔法使いのアンブローズ家、最後に回復魔法使いの鷹野伯爵か。あの森林でも、敵を出し抜ける構成というわけだな」

「はい! こっそりと隠れて、ましろんを助けました! ましろんは奥で寝ています」

大変だったんだ。少女たちは知恵を振り絞り、百難を超えて真白を助けたんだよ。本当だよ。

燕楽たちは、ふむふむと頷き、勝手に少女たちの大冒険を想像して納得した。蔦の隙間やら、木の枝を足場にこっそりと真白が捕まっている牢屋に潜入して助けたと考えたのだ。

まさか、正面からボスを倒して、トレント化した真白を落とし穴、いや、鏡に落として逃げてきたとは想像もしなかった。まぁ、10歳パーティーだ、当然だろう。

「そうか、良かった。ならば、今度はこちらのお願いを聞いてほしい」

燕楽は真白を助けたことに、ニカリと喜ぶと、すぐに真剣な表情となり頭を下げてくる。

公爵が頭を下げてくるとは、僅かに驚いてしまう。

「粟国公爵から、鷹野伯爵へとお願い申し上げる。現在、裏切り者のせいで多数の負傷者が出ている。どうか回復魔法にて治してほしい。特に重傷者を優先していただきたい」

その誠実な態度に、周りの武士たちは驚き感動の面持ちとなる。公爵が伯爵に、しかもこんなにも可愛らしい美少女に頭を下げるとは信じられないと思ったのだろう。

負傷者を助けるために、プライドを捨てて頭を下げる粟国のおっさん。

子供に対しても、誠実にお願いできるとは、できたおっさんである。

裏がありそうだけどとか、みーちゃんはそんなことは考えない純粋無垢な美少女なのだ。

「わかりました。すぐに負傷者のもとへと案内してください! 頑張って治します!」

純粋無垢な美少女鷹野美羽。このように頼まれてノーとは言わない。なぜならばクエストっぽいので。クエストならば、全て受けちゃう。

「み、みーちゃん! 私をい、癒やしてください! あ、あぅぅ」

聖奈が武士の後ろから姿を現し、みーちゃんにしがみつき、抱きついてお願いを口にしてくる。顔は青褪めて、苦しそうに顔を歪めていた。体もぷるぷる震えている。美しい銀髪も心なしか、艶がない。

そうだった。『 生命回復(ライフヒーリング) 』を使ったから、しばらくは回復できないんだった。どうやら、時間が経過して、反動がもろに身体にきた模様。

なんか色々ときつそうだ。あらゆるステータスが下がる『衰弱』だからなぁ。諦めてくれ。そのバッドステータスは神官では治せないんだよ。

「わ、私もみなさんを、い、癒やしたいのです……」

頭痛をこらえて頼み込んでくる聖奈である。まだ10歳なのに、凄い根性だなぁ。

「無理だから、ゆっくりと寝ていてね!」

「こ、ここは無理をしてでも皇族として……」

そっと離そうとすると、しがみつこうとしてくる聖奈。長政の下げてくれた人気を取り戻そうと必死な聖女だ。

「まぁまぁ、玉藻ちゃんでも抱いていて。それよりも案内してください!」

「もきゅ」

頭から玉藻をひょいと抱き上げると、聖奈に渡す。もふもふに癒やされてください。聖奈のお顔に玉藻狐を押し付けちゃう。頼んだよ、玉藻ちゃん。この娘を癒やしてくれ。

「わかった。こっちだ」

バタバタと慌ただしく駆けていく粟国のおっさんの後に続く。美羽のお願いを理解して、ベッタリと聖奈の顔にしがみつく玉藻狐。もふもふに負けたらしく、ふにゃあと聖奈は顔をゆるませて倒れていた。護衛が慌てて支えている。

まぁ、ゆっくりと寝ていてくれ。

揚陸艦の外に出て、真夏の強い陽射しに目を細めて周りを見渡す。長政の裏切りと、その部下の反逆により、大隊は崩壊して阿鼻叫喚となっていた。

と、思ったんだけど、意外や意外。倒れている者は少なく、怪我を負ってはいるが、元気そうに歩いている者たちが多かった。

装甲車が2台。真っ黒焦げとなって、煙を吹いて放置されているが、他の車両は無傷の物も多い。軒を並べているテントも壊れていないし、兵舎に至っては無傷だ。

てててと走りながら、怪我人たちの側へと向かう。

「裏切り者が現れて、大隊は崩壊したんですか? そうは見えないですけど」

「被害は軽微だ。ドルイドの爺さんが鷹野伯爵が攫われた後に現れてな。凄腕の魔法使いで、爺さんの助けもあって、森林内を簡単に撤退できたんだ。で、後方で暴れていた裏切り者の今浜の部隊を叩いた」

なるほどねぇ。今浜としては、混乱する大隊を殲滅しようと思ったのに、予想外に粟国のおっさんたちがすぐに戻ってきたから、あっさりと敗れたのね。

「死人が出ちまったが、50人に満たない。後は重傷者だな。負傷者は全員で300人はいるが、まずは重傷者を癒やしてほしい」

「裏切り者は何人ぐらいいたんですか?」

「200人程度だ。あいつらふざけやがって」

軽微だと、燕楽のおっさんは言うが、結構な被害だ。行方不明となっていた真白隊を抜かすと、合流できた調査隊の残りを含めて兵は2300人はいたはず。

そのうち、裏切り者たちを合わせると、損害は600人近くか。惨敗だな。回復魔法がなかったら、崩壊していてもおかしくないレベルだ。

『 範囲大治癒(エリアグレーターヒール) Ⅱ』

ぴょんと飛んで、手をフリフリと振って範囲魔法を寝込んでいる負傷者へとかける。

『神官Ⅲ』で使える『 範囲大治癒(グレーターヒール) Ⅱ』は今までの『 小治癒(マイナーヒール) 』とは比べ物にならないほど強力だ。

エフェクトはあまり変わらないけどね。キラキラ光る粒子が少し増えたぐらいか。

戦闘中に何度も使用する回復魔法はエフェクトしょぼいんだ。バトル中に長いエフェクトがあっても、イライラするから、当然なんだけど。

だが『神官』ジョブの補正効果が無くても、HP70は回復する。魔法陣に覆われた寝ている怪我人たちは、ゆっくりと起き上がると包帯を外す。

血でべっとりの包帯を外して肌を擦ると、綺麗な肌となっていた。

「おぉ……痛みもないし、疲れもとれたぞ!」

「あぁ、死ぬかと思ってたよ」

「さすがは聖女様」

皆が回復したことに感動の言葉を口にして、喜びの笑顔となる。実際に回復魔法で癒やされた人々は、そのとてつもない効果に驚くようだった。

ふぅと安心するけど……。これは大丈夫かなぁ……。色々と大変な結果となるだろう。その影響は計り知れないはず。

人々を癒やしながら、美羽は困った顔となってしまうのであった。