軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

69話 ルーシーと佐々木あやは、語り合う

- ルーシー視点 -

「ゴブリン探しに行ってくる!」

朝一番に、まことはそう宣言した。

唐突だなぁ。

「ルーシー、さーさん、どうする?」

ウキウキした顔で、私たちを誘ってくる。

「私は遠慮しておこうかなぁー、街を散歩するよ」

あやが断った時、一瞬寂しそうな顔をしたまことを、私は見逃さなかった。

「私も街で買い物するわ」

断ってしまった。

まことと、二人きりのチャンスだったけど。

「もういいよ! 二人とも。じゃあ、ソロで冒険してくるからな!」

拗ねたように呟いて、まことは颯爽と行ってしまった。

「ねえ、ルーシーさん。どこ行く?」

当然のようにあやが、一緒に行動することを前提に聞いてくる。

「ケーキが美味しいカフェとか?」

私も、あやと話したいことがある。

二人きりで。

あやと一緒に、服屋やアクセサリー屋を巡り。

パスタ屋でランチをして。

小さな公園があったので、飲み物を買ってそこで休憩した。

チラリと、大きいカップで果物ジュースをコクコク飲んでいる、あやの横顔を眺める。

(可愛い……)

くりっとした目に、小動物のような仕草。

ベンチで、足をぶらぶらさせてる様子は、若干子供っぽい。

(これで、勇者並みに強いっていうんだから、反則よね……)

もっとも、魔法は使えないみたいだけど。

もし魔法が使えれば、おそらく勇者認定されてしまうだろう。

冒険者で言えば、最高位である『オリハルコン』ランクか。

私たちのパーティーの前衛にして、最高戦力。

無くてはならない存在だ。

「ねえ、ルーシーさん」

何気なく。世間話をするように。

自然な感じで、あやが話しかけてきた。

「藤原くんの結婚の話、驚いたね」

き、来た。

同じ異世界出身のふじやんさんの結婚のこと。

「う、うん。お嫁さんが二人ってびっくりよね」

実際のところ、人族で貴族の妻が沢山いることは珍しくない。

だから、これは話の糸口だ。

「高月くんは、どう思ってるんだろうねー」

「ほっとしてるって言ってたわよ。ニナさんとクリスさんが仲良くなって」

「あはは、それは私も」

何て言うか、行きの飛空船はずっとギスギスしてたし。

今日の朝ご飯は、久しぶりに和やかに食べられた。

それは良いことだ、と思う。

「……身近にいる人を、同時に好きになっちゃうと大変だよね」

「……そうね」

ぽろりと出た、あやの発言で。

空気が変わった。

これはもう、あれよね。

主語が違う人のこと言ってるよね?

「ルーシーさんは、奥さんが二人ってどう思う?」

「エルフ族は、原則、一人としか結婚しないわ」

「ルーシーさんは、って聞いたんだけど?」

その言い方にちょっと、むっとした。

「あやは、どうなのよ?」

「私のいた世界じゃ、重婚なんて誰もできなかったよ。法律で」

「あやはどう思ってるの、って聞いたんだけど?」

なんか、揚げ足取りっぽくなっちゃった。

でも、そもそもあやの質問はずるいんじゃない?

ちらりと目が合い。

しばらく、見つめ合う。

「高月くんは、どうなのかなー」

また、話題をそらされた。

いや、むしろ本命か。

「まことは、奥さんは一人でいいって言ってたわよ」

「でも、実際は藤原くんと同じだったりして。男はハーレム好きらしいよ?」

「まことは、そんなこと無いわよ」

「ルーシーさんは、高月くんのことを何でもわかってるねー」

その言葉に、少しいらっとした。

「あやは、まことと4年以上の付き合いでしょ。あー、敵わないなー」

「ええー、敵わないってなにー? 変なこと言うねー、ルーシーさん」

「変なのは、あやでしょ。何が言いたいの?」

「別に」

「ふーん、言いたくないんだ」

「何を?」

「さあ?」

「……」

「……」

気がつくと、私たちは狭いベンチで睨み合っていた。

(あれ? なんでこんなことに……)

- 佐々木あや視点 -

あ、あれ?

なんで、こーなったんだっけ?

眼前には、刺すような視線のルーシーさんがいる。

睨む顔が、それでも美しい。

クラスで一、二位の美人と噂されていた横山さきちゃんや川本えりちゃんより綺麗(私の主観)。

(はぁー、敵わないなぁー)

心がどんよりとする。

高月くんの最初の仲間で、高月くんのことが好きで、凄い美人なエルフの女の子。

凄いスキルがある魔法使いなのに、魔法が下手で高月くんに頼りがちなのがポイント高い。

(高月くんって、世話好きだからなー)

このちょっと放っておけない感じ。

高月くんが、好むタイプだ。

ずるいなぁ、と思う。

それはそうとして、この状況どうしよう?

何か私が煽っちゃったよね。

本当は、もっと冷静に話すはずだったのに……。

「……」

「……」

うぅ……。

ど、どうしよう。

逃げ出したい!

でも、逃げちゃだめだ!

「あや様ー、ルーシー様ー。こんなところで、偶然ですネ」

ニナさんが現われた! 助かった。

どうやら、ニナさんも買出しの途中だったらしい。

「ちょっと、あやと買い物にね」

「そうそう! ルーシーさんと買い物に。そろそろ帰ろっか」

「そうね、あや! そろそろ帰りましょう」

「ニナさんも一緒に!」

私たちは、息ぴったりだった。

「は、はぁ……」

ニナさんが、ぽかんとしながら頷いた。

宿までの道を三人で帰った。

「ねえ、ニナさん。結婚したら貴族になるんですか?」

そしたら呼び方を変えたほうがいいのかな?

「うーん、どうなんでしょうネ。私は貴族になりたいわけではなく、旦那様の妻になりたかっただけなので」

だ、旦那様呼び……。

いいなぁ。

「いいわねー、ニナさんは」

ルーシーさんは、声に出してる。

まったく持って羨ましい限りだ。

けど、それまでニナさんが悩んでいたのを、私は格闘技を教えてもらっている時に聞いている。

だから、ニナさんの結婚は心から祝福できる。

そんなことを考えていると。

「お二人は高月様と、結婚されるのでハ?」

ニナさんが、ニコニコと爆弾発言をした。

「「は?」」

ルーシーさんと私の声が、ハモる。

「今朝、クリスと話してたんですよ。もしかしたら、挙式はお二人に先を越されるかもしれませんねーって。貴族の結婚式は、準備が大変らしくテ」

「そ、そうなんですか」

「た、大変ねー」

私とルーシーさんは、乾いた笑い声で返答する。

帰り道。

あとは、終始のろけ話だった。

「では、私は旦那様のところに行きますのデ」

ニナさんは、ぴょんぴょんと階段を上がっていった。

5段飛ばしとは、さすがウサギ耳族だなぁ。

ルーシーさんと、再び二人きりになった。

ちらりと、隣をみると、目が合う。

「……さっきは、ゴメン」

「……こっちこそ、ごめんなさい。感じ悪かったね」

「ううん……私もだし」

なんとか、仲直りできた。

でも、このまま曖昧にしておくのは駄目な気がする。

「今度、きちんと話しましょう」

「うん、今度」

ちゃんと、話そう。

私たちは、パーティーのメンバーなんだから。

「ゴブリンは居なかったよ……」

夕食前に、とぼとぼと帰ってきた高月くんが少し可愛かった。

-高月まこと視点 朝の時間に戻って-

冒険者の本業は、悪い魔物を退治することだ。

最近は、修行ばかりだったけど、魔物討伐の勘を取り戻さないと、なんてカッコつけて出かけたんだけど。

「……魔物が居ない」

ゴブリンどころか。

大ネズミや角ウサギ一匹いない。

ここは王都の正門を出て、シメイ湖のほとりにある小さな森。

マッカレンの近くにある森に、少し似ている。

だから、何かしら獲物が居ると思ったんだけど。

えぇ……マジですか。

「ルーシーやさーさんが正しかったのか……」

連れて来なくてラッキーだった。

無駄な時間に、付き合わせるところだった。

仕方なくシメイ湖の水で、水魔法の修行をすることにした。

王都ホルンは、マッカレンと湖をはさんで反対側にある。

しばらく、修行を続けていると。

「……高月まことか」

後ろから声をかけられた。

振り返ると、先日さーさんにぼこぼこにされた元・守護騎士の男が立っていた。

違うか、ぼこぼこにされたのはこいつの部下か。

「変わった修行をしているな」

俺は水面に立って、湖の水を鳥の群れにして遊んでいた。

結構、集中力を要するので熟練度上げとして、俺の中で最近のはやりだ。

「本当はゴブリン狩りが、したかったんだけど」

俺がボソッと言うと、驚いた顔をされたあと笑われた。

「はっはっは、我が国の都には、魔物払いの結界が張られている。ゴブリンが寄り付くはずがないだろう」

「なん……だ……と」

驚愕に、打ち震えた。

なんてこった。

王都じゃゴブリン狩りはできないじゃないか!

「じゃあ、見回り騎士なんて要らないんじゃないの?」

つっこんでみる。

「ばか者! その油断が、命取りなのだ。それに盗賊や悪党は紛れている。我々の日々の見回りが抑止力になるのだ」

「へぇ……」

志(こころざし) は、立派だな。

性格は、ちょっとアレだけど。

「シメイ湖に、おかしな魔法使いがいるという連絡があって来たが……貴様だったのか。あまり、都民を驚かせるな」

おっと、俺が通報されちゃったのか。

マッカレンと同じ感覚で、魔法を使ってた。

目立つ魔法は、気をつけよう。

元・守護騎士の男はくるりと振り返ると去っていく間際。

「 水の国(ローゼス) の魔物討伐は、冒険者に頼っているところが大きい。王都に来て、ゴブリン退治に出向いてくれることは感謝する」

「はぁ……」

急に、なんだ?

「色々とすまなかったな」

小声で、詫びられた。

え、デレたの?

おっさんのツンデレという(あまり嬉しくない)レアなものを見て、宿に帰った。

ルーシーとさーさんは、今日は一日ショッピングをしていたそうだ。

「お二人は、いつも仲良しですネー」とニナさんが微笑んでいた。

俺も、そっちに混ざればよかったかなー。