軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

49話 佐々木あやは仇敵と再会する

- ハーピーの巣から -

(外に何かいる)

(見張りは何をしてたんだ)

ハーピーは、魔物ではあるが知能が高く、集団での行動や、身を守る術に長けている。

巣の入り口付近にいたハーピーは、すぐに異変に気づき外を見て。

驚愕した。

朝が来たのかと思うほどの光が、我々の巣を攻撃しようとする魔法の光だと気づいた次の瞬間には、全てが飲み込まれた。

巣が、無残に崩れ落ちる。

魔法に焼かれ、崩れる天井に潰される仲間たち。

しかし、難を逃れ飛び立つものもいる。

空中にさえ逃げれば、ダンジョンで我々に攻撃できるものはいない!

((((え!?))))

空中を飛んでいた私たちハーピーの群れが、いきなり水に飲み込まれた。

ハーピーは泳ぎが苦手だ。

普段泳ぐことなんてないのだから。

((((何が起きてる!?))))

冷静な判断がつかないまま落下していき。

ハーピーたちは、地底湖に叩きつけられた。

- 佐々木あや視点 -

「佐々木様!」

「うん、高月くんたちが成功したんだ!」

私たちは地底湖の滝の裏に潜んでいたが、轟音とともに天井が崩れ落ちてきたので外へ飛び出した。

憎いハーピーの巣の残骸とともに、ハーピーが降ってきた。

大量の水に巻き込まれながら。

「ルーシー様の『火土混合魔法・流星群』に、高月様の『超級魔法・水龍』。えげつないコンボですネ」

「地底湖には、 大海蛇(シーサペント) や大王鰐がいる。彼らはハーピーをエサと思うはず」

「さっそく襲われてますネ」

ばしゃばしゃとハーピーが逃れようとするが、水生の魔物のほうに分があるようだ。

「えいっ!」「ホイ!」

たまに逃げ出すハーピーを私とニナさんで、再び水面に叩き落とした。

ハーピーたちは、悲鳴を上げながら水の中に引き込まれていく。

家族のカタキ!

一匹も逃がすもんか!

「はぁ……はぁ……、もう他にいないかしら」

「あとは、女王がどこにいるカ……」

やつを探すが、見当たらない。

逃げられてしまったのだろうか?

「おーい、さーさん、ニナさん」

しばらくして高月くんとルーシーさんが、 降(・) り(・) て(・) き(・) た(・) 。

手には、小さな傘のようなアイテムを持っている。

なんでも『落下傘』というアイテムらしい。

広げると、高いところから落ちてもふわふわと降りられる魔道具だそうだ。

藤原くんは、便利な道具もってるなぁ。

「どう? ハーピー女王は倒した?」

「まだですネ。落ちてきた中にいたのかどうか」

「まこと、敵探知はどう?」

「数が多すぎて、特定は無理かなー」

どこだ。

敵の親玉は、どこにいる?

騒がしかった、ダンジョン内が徐々に静かになる。

ハーピーはあらかた、倒したようだ。

「あっけなかったわね。帰って祝杯を上げるわよ」

「おい、ルーシー。そういうのはフラグなんだよ」

「ルーシー様、油断はいけませんヨ」

早くも勝利モードのルーシーさんを、高月くんとニナさんがたしなめる。

かくいう私も、少し勝利に酔っていた。

あれほど、手が出せなかったハーピー族を一網打尽にできた!

その時、歌声が聞こえた。

聞き逃しそうな、かすかな歌声。

なんだろう、心地よい音楽のような。

ダンジョンには、似つかわしくない。

「あれ? 何か聞こえない?」

「何でしょう……。 たしかに何か聞こえますネ」

「たしかに何か聞こえるような……」

私たちは、辺りを見渡した。

「やってくれたわね」

そしてそいつは、現われた。

私たちは一斉に振り向く。

整った顔立ちに、美しいライトブラウンの羽根。

ハーピー 女王(クイーン) が、そこに居た。

ハーピー女王は、しゃべりながらも歌を歌っている。

器用なやつ。

「まさか! セイレーンの歌!?」

ニナさんが、焦ったように叫ぶ。

「え、ハーピー女王じゃないの?」

「進化してセイレーンの能力を手に入れたんでしょう! こいつの声は男性を魅了します。高月様、やつの歌声を聞いてはいけません!」

高月くんは、すこしきょとんとした顔でハーピー女王を見ている。

関係ない!

やられる前に、殺す!

そう思い、近づこうとして。

「魔法使いの男が死んでもいいのかしら?」

ニヤリと、ハーピー女王は笑った。

「魔法使いの男! 短剣を自分の首筋に当てなさい」

その声に指示されるがままに、高月くんは短剣を首元に持っていった。

「しまった!」ニナさんが叫ぶ。

「ま、まこと」ルーシーさんが杖を両手に抱えて、あわあわしている。

「ふふ、私の声は人間の男に特別よく効くのよ。仲間に男が居たのが運の尽きだったわね」

「セイレーンの歌声は、男性を魅了します。佐々木様の仲間を襲った人間というのも、こいつに操られたのでショウ」

ニナさんが、悔しそうに言う。

そういうことだったのか……。

「誰かと思えば、あの時殺したはずのラミアの子か……。生きていたとはね」

憎々しげに私を睨んできた。

私も、殺気を含んだ目で睨み返す。

「あんたの家族はみんな死んだわよ。ざまぁないわね」

「ハーピー族は、女王の私が生きていれば何度でも蘇るわ。残念だったわね」

バカにしてくるように、言ってくる。

くそっ! たしかにその通りだ。

私たちラミア族は、大母様を殺されたからもう終わりなのだ。

「動いては駄目よ。人間の男は私のほうへゆっくり来なさい。お前の仲間の女が私に攻撃してきたら、自分の首を切り裂いて自殺するのよ」

高月くんは、その声に従うように、こくんと頷いた。

「そ、そんな……」ルーシーさんが悲痛な声を上げる。

「……」ニナさんは、機会を伺っているようだが動けない。

(どうすれば……)

高月くんを人質に取られては、うかつに動けない。

私はハーピー女王と高月くんを交互に見て。

気づいた。

(高月くん?)

『セイレーンの歌声』とやらで、魅了されているはずの彼は。

こっちをじっと見つめていた。

その目は澄んでいて、魅了されているようには見えない。

(操られてない?)

高月くんはこちらを見つめながら、ゆっくりハーピー女王に近づいている。

その目は、何かを訴えかけてるような。

(よし)

私は、右手に力を集中させる。

以前は、無意識でやっていた『アクションゲームプレイヤー・溜め攻撃』スキルというやつだ。

もちろん、今のまま攻撃に行っても、通用はしないだろうが……。

「女どもは、ここに残ってなさい。運がよかったわね。子供たちがいれば、エサにしてやるのに。人間の男は貰っていくよ」

私は、高月くんを信じて力を溜め続ける。

大丈夫だ、きっと。

「人間の男どもは本当にバカだね。私の歌声を聴くと、私が女神に見えるらしいよ。会った瞬間に、ひざまずくやつまでいるからね」

勝ち誇った顔に、腹が立つ。

「ほら、私の足でも舐めるかい。女神様の足だよ」

調子に乗っているのか、ハーピー女王は足を高月くんの前に突き出す。

忌々しいが、男性を魅了するというのに納得できるような美しさだ。

「ま、まことに足を舐めさせるなんて……。うらやまし……なんて酷いことをっ!」

「あの~、ルーシー様?」

ニナさんが、つっこむ。

ルーシーさんの発言は、あとで問いただそう。

高月くんは、ハーピー女王の足に顔を近づけるようにゆっくりと屈み。

「そんな薄汚れた足が、女神様の足なわけないだろ」

「え?」

ハーピー女王の足首が切り落とされた!

「ぎゃぁぁああああ!」

悲鳴を上げるハーピー女王の目には、氷柱のようなものが刺さっている。

短剣で切りつけると同時に、魔法を使ったのだろうか?

いつの間に発動したの!?

「さーさん! 今だ!」

高月くんが叫ぶ。

そうだ、今しかない。

私は、『ダッシュ』の能力で、一気に距離を詰め。

その勢いを殺さないまま、力を『溜めた』右拳を、敵の胴体に叩き込んだ。

「がはっ!」

ハーピー女王の腹に大穴が開く。

私の拳は、敵の身体を貫通した。

「く、くそ……、貴様っ!」

ふざけたことにまだ息があるようだ。

ハーピー女王の爪が私を切り裂こうと迫る。

――すぱん

高月くんの短剣が、ハーピー女王の首を切り落とした。

ころんと、その首が転がる。

その短剣の切れ味、凄すぎない?

「あ、ありがとう、高月くん」

「カタキが討てたね、さーさん」

私は、張り詰めていた緊張が解けて、ふらっと高月くんのほうに倒れこんだ。

(あ、私返り血で汚れてる)

はっとして離れようとする私を気にせず、高月くんは受け止め、抱きしめてくれた。

「お疲れさま」

「……うん」

(カタキはとったよ、大母様、姉様たち、キョウダイのみんな……)

私は、高月くんの肩に頭を乗せて目を閉じた。