軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

39話 高月まことは竜と出会う

「 竜(ドラゴン) ……」ルーシーのつぶやきが、耳を通り抜けた。

ゴツゴツとした岩のようなウロコ。

全体的には焦げ茶色だが、ところどころがエメラルドのように緑がかっている。

これは地竜だろうか。

巨大な牙を持ったその口は、全てを飲み込みそうだ。

魔物どもの王と言われる、十分な迫力があった。

それを見た時、俺が感じたことは『感動』だった。

「すげぇ……」

ドラゴンがいる。

あのドラゴンだ。

初めて異世界に来た時を上回る衝撃が、身体を走った。

ああ、やっぱり異世界は凄いなぁ……。

多分、見惚れていたのはほんの2~3秒だろうか。

「まこと!」

(しっかりしなさい! まこと!)

ルーシーの悲鳴と女神様の叱責が重なった。

はっ、と正気に戻る。

同じく、我に返った冒険者たちも悲鳴を上げて逃げ出す。

ドラゴンに挑む

ドラゴンから逃げる←

『RPGプレイヤー』スキルが表示する選択肢に、思わず笑みが浮かぶ。

(無茶言うなって)

迷わず俺はルーシーを抱き寄せ、 崖(・) か(・) ら(・) 飛(・) び(・) 降(・) り(・) た(・) 。

「ええええええええええええっ!」

ルーシーの悲鳴を耳元で聞きながら、滝の中に飲み込まれる。

暴力的な水流にもまれながら、衝撃を吸収できるよう水を操る。

(水魔法・水流)

滝壺に飛び込んだ瞬間、ふわりと衝撃を緩和する。

湖の底は深く、地面に叩きつけられることはなかった。

そのまま水の中を進む。

地底湖の水中は、暗く何も見えなかったが、暗視スキルと探知スキルで魔物を探る。

(魔物が多い)

さすが中層だな。

さっと探知スキルを使っただけでかなりの数の魔物がいるのがわかる。

(まずは、湖から出よう)

抱き寄せているルーシーは、もごもご言っているが一旦無視して岸へ進んだ。

俺たちは、陸地に上がり大きな岩の陰に身を隠した。

『隠密』スキルで、魔物には気付かれていない。

「ちょっと! いきなり飛び降りるなんて聞いてないわよ!」

「言ったら、あいつらにばれるだろ? てか、あいつらは大丈夫かな」

「何で殺されかけたのに心配してるのよ……。そもそも、何であんなところにドラゴンが出るのよ」

「ルーカスさんには、下層にはドラゴンがいるから絶対におまえらは行くなよって言われたけど……」

「ドラゴンが上層にいるなんて反則よ」

「だよなぁ」

俺たちはため息をついた。

「どうしようかな、これから」

「上層に戻るんでしょ?」

「ああ、だけど上層に戻る道がわからない」

「え? 滝から戻ればいいじゃない。まことの魔法で」

「さすがに滝登りはできないよ」

滝から落ちる時に、怪我をしないようにするので精一杯だった。

「もしかして、これって絶体絶命?」

「ちょっと、まずい状況かもな。ただ、まずは服を乾かそう」

ルーシーと自分に脱水の魔法をかける。

身体が冷えると、動きが鈍くなるし、体力も失われる。

手持ちの食料は2日分くらいか。

遠征する気はなかったから多くは持って来ていない。

「上へ行ける道を探そうか」

「そうは言っても、ずっと滝が続いてるわよ」

「ところどころ、滝が途切れているところもあるし、魔物を避けながら探索しよう」

しかし、行けども行けども崖と滝しかない。

もう、半日くらいは経っただろうか。

ただ、そんなに絶望的な気分にならないのは。

「ああ、素晴らしい景色だな」

多分、この絶景のおかげだ。

「あのさぁ」

ルーシーが呆れた声をあげる。

「さっきのドラゴンの時も思ったけど、まことってちょっと、感覚おかしいわよ」

「そうかな?」

「うん、危険なものが好きなの?」

む、そんなことは……否定できない気がしてきた。

「なんかダンジョンでも、キョロキョロして楽しそうだし。さっきはドラゴン相手に目を輝かせてたし」

「……さっきは悪かったよ」

「それからまことの世界って、空飛ぶ乗り物とか、たくさんあったんでしょ? ふじやんさんに聞いたわよ。なのに、なんで飛空船であんなにはしゃぐの?」

「それは仕方ないだろ」

わかってないなぁ。

前の世界の飛行機と、こっちの世界の飛空船じゃ、全然違う。

ファンタジーの世界で、空飛ぶ乗り物ってのが重要なんだ。

「わかんないわ」

力説したけど、共感は得られなかった。

まあ、俺は異世界人だからな。

そんな他愛も無いことを話しながら、探索を続けた。

しかし、上層に上がる道は、いっこうに見つからなかった。

ちょっと、疲れたので長めの休憩をとっている時に、彼女と出会った。

「あ、あの……。冒険者のかたですか?」

急に、話しかけられる。

ここは中層の地底湖の滝の裏にある空間で、俺とルーシーは交代で仮眠をとっていた。

そろそろ、移動を再開しようかと思っていた時のことだ。

「あら?」とルーシー。

「……」

続いて俺も振り向く。

話しかけてきたのは、少女だった。

その少女は、肌が白く髪はぼさぼさで。

しかし、とても整った顔をしている。

着ている服はボロボロで、ところどころ破れ、肩が剥き出しになっている。

なにやら、大変な目にあったような様子だった。

「助けてください……。お礼は何でもしますから……」

その少女から、消えそうな声で助けを求められた。