軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

381話 高月マコトは、魔王の来襲を知る

「魔界から魔王軍が攻めてくるらしいの!」

さーさんの言葉を聞き、俺たちはすぐにローゼス城へと向かった。

城の二階にある大きな会議室には、すでに大勢の人が集まって会議をしている。

会議の中心にいるのはソフィア王女だ。

俺たちが近づくと、それに気づいたようにぱっとこちらを向いた。

「ソフィア!」

俺は声をかけたあと、すぐに違和感に気づいた。

(…………違う。今のソフィアは)

「あら、やっときたのね、マコくん。おそいぞ☆」

水の女神(エイル) 様が降臨されている。

瞳の色が金色になっていた。

「おそくなりました、エイル様。今はどんな状況でしょう?」

「それがねー、 運命の女神(イラ) ちゃんの予知によると 今(・) 夜(・) 水の国(ローゼズ) に魔界から魔王軍がやってくるらしいの」

「なんでそんな気軽に……」

はた迷惑な。

「困ったわね~」

ほぅ、と色っぽくため息を吐くソフィア王女……に降臨したエイル様。

「ねぇ、マコト! 光の勇者様やフリアエに援軍を頼めないの?」

ルーシーが俺の袖を引っ張って言った。

「うん、高月くんが頼めばみんなきっとすぐ来てくれるよ」

さーさんが俺の腕を掴んで話しかけてきた。

確かに急ではあるが、太陽の国と月の国ならきっと力になってくれるだろう。

というより現在の西の大陸は七国の関係は良好だ。

力を合わせて魔王軍と対抗することは難しくない。

じゃあ、魔法で伝令を送ったほうがいいか、もしくは空間転移で直接迎えに行くか、と考えていると。

「他国への援軍要請は不要よ?」

ソフィア(エイルさま) から反対にあった。

「なぜですか? 水の女神さま」

水の国に魔王がやってくるという危機なのだ。

少しでも対策は増やしたほうがいい、という考えなのだが。

「だって、ここにはマコくんがいるのよ?」

「当たり前でしょ?」

「どういうことですか?」

俺と同じように疑問を持ったのか、ルーシーとさーさんが尋ねる。

「だってさぁ、 水の国(ローゼス) にはノアの眷属入りしたマコくんがいるのよ? 援軍なんて不要にきまってるでしょ」

「いや、でも……」

まだ神族としては 新神(しんじん) のぺーぺーですよ??

「あのねぇ、マコくん。 冥府の王(プルート) 叔父様から聞いたけど、あなた冥府で『異界の神』と戦って勝ったのよね?」

「あー、はい。 塵の怪物(ァチル・ウタス) ですよね? 不死の体質だった」

あれは強かった。

……どうやって倒したっけ?

「異界の神!? マコト、何と戦ってるの!?」

「不死ってなに!? 高月くん」

「勇者マコト!? 冥府でそんなことをしてたのですか!?」

ルーシーとさーさんとソフィア王女から同時に突っ込まれた。

あれ?

その話してなかったっけ?

モモを冥府の王様に人間に生き返らせてもらった話はしたはず。

でも……確かに塵の怪物と戦った話はしてなかったかも。

「いい? マコくんが戦って勝ったのは異界の神。これからやってくるのは魔界の魔王。まぁ、『 世界渡り(ワールドジャンプ) 』ができるくらいだから魔神寄りかもしれないけど、冥府で戦ったヤツよりは弱いはずよ。マコくんなら問題なく勝てるわ」

ソフィア王女に降臨したエイル様がウインクして言った。

「なんだー。よかった」

「安心だね、るーちゃん」

ルーシーとさーさんの会話が聞こえた。

「ちなみに 塵の怪物(ァチル・ウタス) とそこにいるルーシーちゃんや、アヤちゃんが戦うと1秒保たずに殺されるからね~」

「「「え”」」」

エイル様の言葉に俺とルーシーとさーさんがぎょっとした顔になる。

(そ、そんな強かったんだ……)

まぁ、不死の怪物だしな。

「マコトってそんなに強いんだ……」

「高月くんってどうなってるの……」

仲間二人が俺を見る目が変わっている。

……あんまり自覚がなかったんだけど。

水の女神様が言うなら間違いないんだろう。

どうやら、思った以上に神族になるというのは桁違いの存在になることらしい。

「だから、相手の強さなんて問題じゃないの。それよりも……」

エイル様がピンと指を立てる。

「魔界からわざわざ水の国に魔王がやってくる目的よ! 西の大陸でも一番小さい国で、国力も低い。人口も少なければ、水の女神も統治が適当で知られている!」

「……自分で言うんですか?」

周りの水の国の騎士たちがどんよりした目をしてますよ。

が、エイル様は気にしてないようだ。

ゆるい女神様だ。

「ズバリ! おそらく魔王の目的は マ(・) コ(・) く(・) ん(・) ね!」

びし!と俺を指さされた。

「お、おれ……ですか?」

なんで?

「正確には復活したノアへ会いに来たんじゃないかしら。ただ直接会いに行くわけにもいかないから、眷属であるマコくんのところにきたんでしょ」

「な、なるほど……?」

ノア様絡みだった。

「それなら直接、女神様に会いに行けばいいじゃない!」

「そうだよ! なんでわざわざ水の国にくるの!?」

ルーシーとさーさんの意見はもっともだ。

「それは神獣リヴァイアサンがいて、ノアがいる海底神殿にたどりつけないからよ」

「あれ? でも、ノア様が復活したから海底神殿に挑む『神の試練』はなくなったのではないですか?」

と、以前に 運命の女神(イラ) 様に教えてもらった気がする。

「うーん、そうだったかしら。でも、素通りさせてはくれないんじゃない?」

「確かに真面目な神獣でしたからね」

月の女神様に月を落とされたら一生懸命防いだり。

ふらっと初見で海底神殿に行ったら、弾き飛ばされそうだ。

「そもそも、 自由過ぎる女神(ノア) にアポなしで魔王が会いに行って無事に済むわけ無いでしょ。その場で消滅させられるわよ」

「……ノア様はそんなことしませんよ?」

「……機嫌が悪かったらするのよ。 太陽の女神(アルテナ) 姉様とノアが喧嘩して、何個の星が砕け散ったと思ってるの。一回、銀河系を吹き飛ばしたって聞いたときは笑えなかったわよ。その後復活させたらしいけど」

「「「「「「「「「…………」」」」」」」」」」」

なんか部屋の皆さんの視線が痛いんですが。

邪神みたいな印象もたれてません? ノア様。

(なによー、若気の至りでしょー)

「あ、ノア様。聞かれてたんですね」

「げ」

エイル様が「やば!」という表情になった。

外見はソフィア王女なので、違和感が凄い。

「ノア様にご挨拶したいみたいですよ。魔界からくる魔王のひと。どうします?」

俺が尋ねると。

(マコトに任せるわ)

丸投げされた。

つまりいつも通りだ。

(信者に勧誘してもいいし、マコトがちょいちょいっとひねってやってもいいから。じゃーねー☆)

ノア様の念話が切れた。

「…………」

「…………」

ノア様の声が聞こえていたのは、俺と水の女神様だけのようだ。

ルーシーとさーさんは、独り言を言っている俺に話を聞きたそうにしている。

あとでノア様との会話は説明しよう。

「エイル様」

俺はソフィア王女に降臨している水の女神様の方を向いた。

「どうするの? マコくん」

「とりあえず……会ってみてきめます」

「まぁ……それがよさそうね」

という方針になった。

俺たちはローゼス城で魔王の来襲を待つことになった。

……想像してたのと違った。

その夜。

今日は雲がなく、月がよく見える。

穏やかな風が吹いている。

静かな夜だ。

「今夜、本当に魔王の軍勢がくるのでしょうか?」

エイル様がいなくなったソフィア王女が俺の隣で夜空を眺めている。

「全然、そんな雰囲気じゃないですね」

城の庭園からは鈴のような虫の鳴き声が響く。

「本当に来るのかしらー」

ルーシーはソファでだらーと寝ている。

戦闘が始まるまでは、あえて緊張感を無い状態でいたいらしい。

「ま、気長に待とうよー」

さーさんはルーシーの隣で、自分で淹れたお茶を飲んでいる。

マイペースだ。

さーさんは戦闘中でもテンションが変わらない。

冒険者暦が長いと、待ちが長い依頼もこなしてきたようで二人のベテラン感が頼もしい。

俺はというと、どうにもソワソワしていた。

エイル様は心配いらないというが、やはり魔王の軍勢ということであれば一歩間違うと大災害だ。

しかし、ノア様の客ということなら先手必勝で仕掛けることもできない。

(どんなやつが来るんだろうな……)

そんな想像をしていた時。

(……あれは)

違和感に気づいた。

「あら?」

ソフィア王女も反応する。

「なに?」

ぱっ、とルーシーが飛び起き。

最後にさーさんがやってて呟いた。

「月が…… 2(・) 個(・) あ(・) る(・) ?」

普段よく見る白い月の隣に『赤い月』が浮かんでいた。

(きたみたいね、マコくん)

(よろしくね、マコト)

水の女神様とノア様の声が脳内に響く。

どうやら魔界からの来訪者は、月に乗ってやってきたようだ。