作品タイトル不明
380話 急報
「うぅ……みんな、もう行っちゃうの」
井上ルカさん、改め『新』氷の女王は桜井くんや横山さんと別れを惜しんでいる。
「また、会いに来るよ」
「うん、手紙書くね」
「また、会いに来るよ! ルカちゃん!」
桜井くん、横山さんやさーさんも含め、異世界転生組は盛り上がっている。
一方……。
「竜王マコト様。何か指示はございますか?」
「いえ、しばらくは女王の交代とかでバタバタしているでしょうし、落ち着いたらでいいですよ」
俺は氷の女王様(先代)と話していた。
井上さんとはあんまり接点がないからな……。
「そうですか……? せっかく勇者の称号を拝命しましたのに」
残念そうな顔をされた。
この 魔王(ひと) 、結構真面目な性格なんだな。
千年前のカインの勧誘の件も覚えていたみたいだし。
この感じだと、配下の魔族たちにもしっかり布教してくれそうだ。
「また、落ち着いた頃に伺いますね。うちの巫女もつれてきます」
とモモの顔を思い浮かべながら言った。
ノア様には事前相談したけど、モモには完全な事後報告になってしまった。
あとで連絡に行かなかきゃなー、と思っていたらノア様がモモに伝えてくれたらしい。
俺が魔王を勇者に勧誘したことを呆れていたらしい。
まぁ、そりゃそうか。
「では、竜王さま。お待ちしておりますね」
手をぎゅっと握られた。
冷たいのかと思ったら、思ったより温かかった。
「……マコト?」
後ろのルーシーが白い目をしてこっちを見ている。
ちらっと横を見ると、さーさんもこっちを見ていた。
よくない。
「そ、それじゃあ、また今度に」
俺は氷の女王様に挨拶をして、北極大陸を去った。
◇
それからはなんか色々政治の話になったらしい。
北極大陸の 魔物暴走(スタンピード) は発生しないことがわかった。
そのかわり幻の魔王と呼ばれ、はっきりと存在が確認できていなかった『氷の女王』の存在が証明されたこと。
そして新・氷の女王が異世界転生人だったこと。
西の大陸の七国会議では、北極大陸の氷の女王の治める国と国交を結ぶ方針になったらしい。
定期的に外交官を送り、情報交換をすることが決まったようだ。
大使館を建てるかは未定。
北極に住みたい人がいなかったらしい。
そもそも住める環境ではない。
あとは……先代の氷の女王が 女神(ノア) 様の勇者になったという情報は、一部の人間を除いて情報が伏せられた。
ノエル女王とソフィア王女は、この情報をどう扱っていいか頭を抱えていたとか。
そんなに困らせることだったのだろうか?
(ずるいわよー! マコくん! 信者の数がノアに負けちゃったじゃない!)
水の女神(エイル) 様からは文句を言われた。
確かにちょっと、ずるい気はする。
とはいえ、北極大陸の調査は無事に終わった。
俺は水魔法の修行や、時魔法の修行をしつつ、モモに北極大陸に連れて行ってもらったりしてのんびりと過ごしていた。
大きな事件もない。
強いていうなら、最近はルーシーとさーさんからも結婚式を挙げたいというオーダーをもらっていて、
じゃあどうやろうかとふじやんに相談をしているのだが……。
「エルフ族と人族の結婚式は、文化が大きく異なるので同時に開催は難しいと思いますぞ」
「そうなんだけど、ルーシーとさーさんは一緒がいいらしくて」
「うーむ、別々で行ったほうが良いと思いますが……。しかし、お二人の希望とあれば拙者のほうで調べてみましょう!」
「助かるよ、ふじやん」
ということで親友にお願いをしている。
悩みといえばそれくらいの平和な日々だった。
◇
「マコト!」
「高月くん!」
ある日、俺が水の国の王都の外にあるシメイ湖の畔で魔法の修行をしていると、血相を変えたルーシーとさーさんが空間転移で現れた。
「何かあった?」
二人の様子が尋常じゃない。
「さっき、ソフィアに降臨した水の女神様からの神託で!」
「魔界から魔王軍が攻めてくるらしいの!」
ルーシーとさーさんが大きな声で内容を告げた。
「…………は?」
つかの間の平穏だったらしい。