軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

378話 再会

「わー♪ リョウスケくん! こんなところで会えるなんて運命的ね!」

「はは……、そうだね」

クラスメイトが桜井くんに満面の笑みを浮かべて抱きついている。

桜井くんは戸惑いと喜びが半々くらいの表情だ。

井上ルカさん――都立東品川高校1年A組のクラスメイト。

確かテニス部のエースで、同じく運動部でサッカー部エースの桜井くんとはかなり仲が良かった記憶がある。

いっとき、二人は付き合っているという噂があったような……。

(よく覚えてるわね、そんな 昔(・) の(・) 話(・) )

ノア様に突っ込まれる。

確かに前の世界の記憶って俺にとっては千年以上前の記憶だ。

どうも神化して記憶力が人間離れしてるっぽい?

「リョウスケくん! 私に会いに来てくれたの!?」

「あー、いやここにきたのは偶然というか……」

「うれしい! 私も会いたかった!」

井上さんはテンションが上がって、桜井くんの話をあまり聞いてなさそうだ。

まぁ、知り合いの居ない異世界でずっと生活してて、久しぶりの元の世界の知り合いに会って嬉しい気持ちはよくわかる。

さーさんと大迷宮で再会した時を思い出した。

「高月さま……貴方たちは娘の知り合いなのですか……?」

氷の女王(母)がおずおずと尋ねてきた。

「ええ、俺と桜井くんは別の世界からこっちへやってきたんですが、井上さんとは前の世界でクラスメイトでした」

「そうでしたか……娘はあまり前世のことを言わないので把握しておらず。まさか竜王さまとお知り合いだったとは……」

悩ましげに腕組みをする氷の女王さま。

しかし間近で見ると本当に美人で若いな。

雪のように真っ白な髪に透き通るほどの白い肌。

水色のドレスに深青の瞳。

あまりに整った容姿は人形のようにすら見える。

ただこの人かなりの長寿魔王なんだよな?

(氷の女王ちゃんは古竜の王と同じくらいじゃなかったかしら?)

ノア様の念話が聞こえた。

え? アシュタロトと同期?

それじゃあ、10万歳ってことですか?

まじまじと見つめるがどう見ても20代の美人さんだ。

「な、なんでしょうか? 竜王さま? 何か粗相をいたしましたか?」

氷の女王さまが自分の身体を抱きしめながら、一歩下がる。

やば、見つめすぎたかもしれない。

(ねー、ねー、マコくん)

頭の中に声が響く。

この声は水の女神さまかな?

(なんでしょう? エイルさま)

(氷の女王ちゃんに、『 抱(・) か(・) せ(・) ろ(・) 』って言ってみてー。どんな反応するかな? 竜王のマコくんに迫られたらどうなるか興味ない?)

(…………何を言ってるんですか?)

転生後とはいえ、クラスメイトの母親ですよ?

(氷の女王がマコくんと関係性持てたら、水の国と相性良さそうじゃない? まるっと取り込めないかなー)

水の女神さまがさらりと怖いことを言ってる。

それに女神教会に勧誘するならノア様を信仰してもらうに決まっている。

(待てよ……それはありか?)

なんせ北極大陸の支配者であり、部下の数はさっき見た通りだ。

あの数から一定数ノア様を信仰してくれたら一大勢力になりそう。

これは使徒の仕事では?

「氷の女王陛下」

俺が口を開く。

「は、はい。なんでしょうか?」

「信仰している神様はいますか?」

「我々に統一の信仰はありません。一部の部族が 蛇神(ティフォン) 様や 月の女神(ナイア) 様を信仰している程度で…………。その質問の意図は、我々に貴方様が信奉する 古い女神(ノア) 様を信仰するようにというご命令でしょうか?」

おっと理解がはやい。

裏の意図までたどり着かれた。

ただ、信仰を強制されると思っているようだ。

うちの女神様の 方針(ポリシー) は自由なんだけどな……。

(うーむ、どうも竜王の肩書が強すぎるな)

強制はよくない。

信仰は自由であるべきだ。

「いえ、なんでもありません。忘れてください。それより俺と桜井くんの他にも仲間がいるんですが、呼んでもいいですか? 前の世界から一緒のメンバーも多いので、娘さんとも知り合いになります」

「えっ!? そーなの! 誰だれ?」

俺と氷の女王様の会話を聞いていたのか、井上さんが反応する。

「さーさ……佐々木アヤさんとか藤原ミチヲくんとか」

「わー! アヤちゃん! なつかしいー! 会いたい会いたい! ねぇ、お母様! 城に招待してもよいでしょう?」

「今からですか!? ……竜王様のお連れであれば断るわけには」

「出直してくるのでもいいですよ。時期を改めましょうか?」

北極大陸中の魔族、魔物たちが新女王の祝いにきている 行事(イベント) 中だ。

「いえ! それにはおよびません! 誰か! もてなしの準備を!」

氷の女王様が指示を出す。

白いメイドっぽい衣装に身を包んだ青白い肌の女性たちが、いそいそと動いていく。

うーん、ちょっと申し訳ないけど準備まではじめてくれたのでお言葉に甘えよう。

「では、私はそろそろ去りましょうか。高月マコト様、お会いできて光栄でした」

それまで静かに佇んでいた極北の古竜フォカロルさんが人型から竜の姿に戻った。

出会った時のように嵐を纏ってはいない。

ON/OFFできるようだ。

「フォカロルさん、色々とお世話になりました」

「とんでもない。私は北極大陸の端にある 氷河の頂(グラシアルピーク) にある隠れ里に一族と住んでおります。ご興味があればいつでも案内いたしますよ。それでは」

極北の古竜(フォカロル) さんは大きな翼を優雅に羽ばたかせ、空の向こうへ去っていった。

俺は後姿が見えなくなるまで見送った。

「じゃあ、仲間たちを呼んできますね」

と言って俺は、飛空船へと戻った。

桜井くんは井上さんにがっちり捕まってたので、その場に残した。

「ルカちゃん!」

「アヤちゃん!」

さーさんと井上さんが再会を喜んで抱き合っている。

さーさんは仲良い友達が多いなー。

場所は白水晶城の大きな客室。

氷の部屋だったらどうしよう、と心配したが普通の部屋だった。

「藤原くんも久しぶりだね!」

「井上殿、お久しぶりですぞ! まさか氷の女王陛下の御息女に転生されているとは」

「そうなのー。北極大陸って情報が入ってこないから、知り合いに全然出会えてなくて。今日はみんなに会えて嬉しい☆」

井上さんは明るいな。

陽キャだ。

「ひさしぶりね、ルカ」

「あっ! サキも久しぶりー!」

横山さんと井上さんが挨拶をしている。

クラスメイトだから当然顔見知りだし、一見普通の挨拶なのだが……。

(桜井くんが困った顔してる)

なんせ未だに井上さんに腕をがっしりと組まれて、捕まっている。

一瞬、さーさんと抱き合っている時に離れたけどまた桜井くんの隣をキープしてる。

桜井くんへの好意をまったく隠していない。

が、現在は横山さんが桜井くんの奥さんだ。

そして、太陽の国には他にもたくさんの奥さんがいる。

(桜井くん、その辺の説明をしてないな……)

井上さんは西の大陸の文化や、そもそもこっちの世界の文化に疎そうだからどこから説明するのかが難しそうだよなー。

聞かれてもないのに、奥さんがたくさんいるとか言えないだろうし。

さて、どんな対応をするのかと桜井くん、横山さん夫妻を見ていたら。

「ところでリョウスケも今日はここに泊まるの? 急に押しかけてよかったのかしら」

と言いながら唇に指を当てる横山さん。

その薬指には大きな魔石のついた指輪が光っている。

「あら? サキの指輪って……」

案の定、井上さんの目に留まった。

話題の持って行き方が上手い。

横山さんは柔らかい笑みを浮かべて言った。

「あ、これ? リョウスケとの婚約指輪」

「……………………え”?」

案の定、井上さんが固まった。

ギギギ……と首を横に動かし、桜井くんに視線を向ける

「リョウスケくんってサキと婚約してるの?」

「えっと、それは……」

「桜井くんはねー、 太陽の国(ハイランド) って国の女王様の旦那様なんだよー。桜井くんはお嫁さんがたくさんいて、サキちゃんもその一人なんだー」

さーさんがささっと割り込んで説明をする。

桜井くんと横山さんが説明しづらそうなことを、端的に伝えていた。

流石にコミュ力が高い。

「……………………へ? え? お嫁さんが……たくさん?」

当然、井上さんは話についていけてない。

目がぐるぐるして混乱している。

「驚かれるのも無理はない話ですが、こちらの世界の文化や事情も色々ありますので。長い話になりそうですから、まずは西の大陸の文化や我々のこれまでの経緯を井上殿に説明しませぬか? せっかく、場所まで用意してもらったことですし」

ふじやんが『読心』スキルを使ったのだろう。

うまくフォローしている。

その間にも、氷の女王様の部下たちが飲み物や食べ物を運んでくる。

全部冷たい料理かと思ったら、スープや焼き物など熱々の料理もあった。

お酒は寒い国によくある度数の高いものが多かった。

「では、井上殿との再会を祝って」

ふじやんが音頭を取る。

「「「「「乾杯!!」」」」」

色々と異世界知識が遅れている井上さんにレクチャーする再会を祝う食事会が始まった。

「はぁー、井上さんも大変だな」

さーさんやふじやん、桜井くんと横山さんから西の大陸に転生してからの話を受けてかなりショックを受けていた。

特にさーさんの大迷宮での話を聞いて涙ぐんでいたあたり、性格がいい人なんだろう。

最初は桜井くんの奥さん多数の話に引いていたようだけど、救世主の生まれ変わりとして担ぎ上げられた話や何度も命の危険にさらされた話を聞いて真剣な表情になっていた。

話を聞いて桜井くんと横山さんの婚約を心から祝っているみたいだったし、修羅場にはならなかった。

今も客間では井上さんを中心に、異世界転生組が大いに盛り上がっている。

ルーシーやニナさん、ジャネさんたち現地組は少しヒマそうだ。

ただ、今回の遠征の目的は北極大陸の調査なので、氷の女王の娘である井上ルカさんと仲良くなっておくのは大事だろう。

で、俺はというとコミュ力が高い人たちが井上さんの相手をしているので、ヒマになって部屋から脱出した。

井上さんと俺は高校時代も大きな接点はないし、思い出話もない。

というわけで、せっかくやってきた北極大陸の幻の魔王城を探索しようと思っていたら。

「高月マコト様」

名前を呼ばれた。

するりと現れたのはこの城の主――氷の女王陛下。

(城を探索しようとしたのがバレた?)

流石に勝手に部屋を物色したりはするつもりないですが、やっぱだめだったかー。

「えっと、どうしましたか?」

ちょっと気まずい笑みを浮かべて返事をした。

氷の女王様の深青の瞳がまっすぐこちらに突き刺さる。

「…………」

返事がない。

何かを言いたそうな表情ではある。

あれ?

何か怒られるようなことしたっけ?

「何かありましたか?」

俺が尋ねると、意を決したかのように氷の女王様は告げた。

「我ら北極大陸に住まう魔族一同は、 自由と美の女神(ノア) 様の 信(・) 者(・) と(・) な(・) り(・) ま(・) す(・) 」

信者がめっちゃ増えた。