軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

367話 結婚式 その4

「私が来た!!!」

仮○ライダーのようなポーズを決める我が親愛なる 女神(ノア) サマ。

ぶわっ! と大きな風が吹き上がった。

同時に大量の花びらが宙を舞う。

「えっ!?」

「わー、綺麗!」

ルーシーとさーさんから感嘆の声が上がる。

結婚式会場が一面の花畑となっていた。

その周囲を舞う色とりどりの四大精霊たち。

この世のものとは思えない光景になっている。

――あぁ……

――何と言う美しさ……

――女神さま……

周囲からノア様に魅了された人々の声が聞こえる。

(これ、大丈夫か……?)

と心配になったが、隣のソフィアや近くにいるルーシー、さーさんを見るとぼーっとはしているが、一応普通の表情のままだ。

ノア様が本気で魅了をかけたら、誰も正気ではいられないのできっと身体に無害な魅了…………のはず、と信じよう。

「はろー、来たわよ。マコト」

「っ!?」

十数メートル先に居たはずのノア様が、眼の前に出現した。

星色に輝く長い銀髪がふわりとほほにあたる。

藍玉のような瞳に見つめられ、一瞬息ができなくなった。

「わ、わざわざ地上までの御足労をありがとうございます、ノア様」

「ふふふ、いいのよ。可愛い私の 使徒(マコト) の結婚式だもの。それと……」

ノア様の視線が隣のソフィアのほうへと向く。

「の、ノア様! この度は……」

「堅苦しい挨拶はなしよ☆ 水の女神(エイル) の巫女ちゃん、結婚おめでとう」

「は、はい……ありがとうございます……」

ノア様にウインクされ、頬を染めてぽーっとするソフィア。

いつも 冷静(クール) なソフィアですら、ノア様の美貌にやられている。

「おいおい、人の花嫁を魅了しちゃダメだろう。ノアくん」

横から口を挟んできたのは、 月の巫女(フリアエ) さん……に降臨した 月の女神(ナイア) 様。

「あら、ニャルじゃない。いたのね」

「知ってたくせにしらじらしいね……よっと」

ぴょんと、ジャンプするようにして 月の女神(ナイア) 様がフリアエさんの身体から 飛(・) び(・) 出(・) し(・) た(・) 。

「「「えっ!?」」」

俺とソフィアが王女とフリアエさんが驚きの声を上げる。

「貴女も地上に出てきたの?」

「ノアくんが好き勝手してるのに、ボクだけ真面目にルールを守るなんてアホらしいからね」

「あ、あの……ノア様。ナイア様……。お二方ほどの神格が御神体のまま地上へ降りてしまいますと、この星の生態系に多大な影響を及ぼしてしまうのですが……」

天使のライラさんが腰の低い態度でノア様とナイア様に話しかけている。

「大丈夫、大丈夫。ちょっとの間だけだから」

「何か問題が起きたら、全部ノアくんのせいにしてボクは逃げるから」

「あら、私が逃がすと思う?」

「ふふん、ボクの逃げ足を見くびるなよ。光の精霊より速く飛んで行くからね」

二柱の女神様は呑気な会話をしている。

天使のライラさんは、こっちをちらちらみてくる。

これは……困っているようだし助け船を出さないと。

「ノア様。何か問題が起きれば、元に戻してくださりますよね?」

「ん? まぁ、そうね。マコトがそういうなら仕方ないわね」

ちらっとライラさんを見ると、ほっと胸をなでおろしている。

ここで二柱の女神様を立たせたままであったことに気づく。

「ノア様、ナイア様。お席を用意しますね」

どちらの女神様も参加予定ではなかったので席を準備していない。

というか女神様の席ってどんなふうにすればいいんだろう。

人と一緒ではダメな気が……。

「大丈夫よ、マコト。こっちで用意するから」

パチンとノア様が指を鳴らすと、地面から数々の蔦や花が生えてきて巨大な椅子を形作った。

いや、椅子というより台座に近い。

たくさんの花が咲き誇る台座にちょこんと座る美しい 女神(ノア) 様は、それだけで絵になった。

「いいねー、ボクもお邪魔するよ」

月の女神様もノア様と一緒に花の台座に座る。

「ちょっとーニャル、狭いでしょ。あんたは自分で用意しなさいよ」

「細かいことはいいじゃないか、ノアくん。こんなお酒を用意しているからさ」

とナイア様が輝く酒瓶を取り出した。

「へぇ~、黄金の蜂蜜酒。気が利くわね」

「ノアくんが好きな酒だろ」

二柱の女神様は勝手に酒宴を始めている。

ただ、その姿ですらその場にいる者たちにとっては見惚れてしまうほどの美しい光景らしい。

(まぁ、お 二柱(ふたり) とも本来は地上に居るはずがない女神様だからなぁ)

さて、どう収拾をつけようかと思っていると、ちょんちょんと腕をつつかれた。

(マコト様マコト様。私は人々を冷静にする結界魔法を張ります。ですから結婚式の進行を再開してくださいませ)

耳元で囁くのは小柄な天使のライラさんだ。

(ありがとうございます、ライラさん)

俺は感謝の言葉を述べた。

(しかし変ですねー。ノア様が地上に降臨されるような事態なら、 水の女神(エイル) 様が監視で同行されるはずですのに……)

(そうですよね。いつもならだいたい、エイル様が現れるんですが)

俺とライラさんはそろって首を傾げた。

しかし、考えていても何もはじまらない。

最上位神格であるノア様やナイア様のお考えは、下々の民にはわからない。

俺は天使さんの助言通り、結婚式の続きの進行を再開させた。

――その間にも。

「ほら、ノアくん。ボクの酒が飲めないっていうのかい?」

「あんた~、私を酔わせてどうする気?」

二柱の女神様の声が聞こえてくる。

「ちまちま飲んでるんじゃないわよ。一気にボトルで飲みなさいよー」

「ちょっ! ノアくん、ボクはこういう品のない飲み方は好きじゃ無……」

実に楽しそうだ。

「ねーねー、次は命の実から作った 神酒(ソーマ) ね。海底神殿で暇だったから作ったのー」

「へぇ~、ノアくんの手作りとは興味あるね。…………ん? ちょっと、濃くないかい?」

「ほら、イッキ☆ イッキ☆」

「無理だって! これを一気飲みは」

……もしかして、ノア様って酒癖悪い?

いつも余裕のナイア様がたじたじになっている。

「よーし! 飲みきったから、次はノアくんの番だぞ!」

「えー、私はそんなに飲めないしー……って、無理やり飲ませないでよ、ニャル!」

「ふふん、散々好き勝手してくれたからね。今日は百万年ぶりにノアを潰してあげるよ☆」

「あら、面白いわね。受けて立つわよ☆」

ノア様とナイア様の勝負が始まった。

その周囲では、空中でフォークダンスを踊っているたくさんの精霊たちや、外なる宇宙の人外たち。

さらに周囲には、謎の花吹雪がいつまでも降り注いでいる。

なんとも幻想的な光景だ。

その中央で行われているのは、酔っぱらい女神様二人のうざ絡み合いであるが。

それを見ていた 天使(ライラ) さんが、また俺の耳元で囁いた。

「マコト様。ノア様とナイア様は酔っ払うと周囲の人にお酒を勧めだすのですが、お二人が飲んでいる『 神酒(ソーマ) 』は地上の民にとって猛毒です。間違っても飲まないようにご注意ください。私も注意しますが、お二人を止められるのはこの場ではマコト様だけですので」

さらりと怖いことを言われた。

「お酒が猛毒って……、飲むと死んじゃうですか?」

「逆です。地上の民が『 神酒(ソーマ) 』を飲むと 死(・) ね(・) な(・) く(・) な(・) り(・) ま(・) す(・) 」

「……え?」

「神酒を薄めたものを地上では不死の霊薬などと呼んでいるそうです。とにかく、神酒を飲むと人ではなくなってしまいます。本来は神界規定で地上に持ち込んではいけないのですが……。あっ! さっきノア様が神酒をこぼしましたよ。地面が光って、そこから植物が生えてきたでしょう? あの植物は千年は枯れなくなりましたよ」

「……うわ」

本当に生態系が変わってる。

ライラさんの懸念した通りだった。

うーん、ノア様とナイア様は楽しそうだし腰を折りたくはないけど。

ちょっと、大人しく飲むように注意したほうがいいかなーと、思っていた時。

ぞわりと、背中に冷たいものが走った。

天使(ライラ) さんも同じようで、表情が消えている。

一体何が……と思うより先に、威厳のある、しかし怒りに満ちた声が響いた。

「おい、 ノ(・) ア(・) と(・) ナ(・) イ(・) ア(・) …………お前たちはいったい、何をしている?」

稲光が走った。

その場にいる全員が黙る。

誰が発言したのかは、考えるまでもない。

世界広しと言えど、ノア様とナイア様を呼び捨てにできる御方など限られている。

太陽のように輝く長い金髪に、燃え盛る炎のようなオレンジの瞳。

純白の軽鎧と長い槍は、直視できないほどの光を放っている。

この世のどんな彫刻や絵画よりも整ったその美顔が、今は怒りで少しだけ歪んでいる。

全宇宙の支配者――太陽の女神アルテナ様が降臨された。