軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

107.収納の魔本

禁書庫での出来事から、半月ほどが経過した。

ある日のこと、俺の執務室には、商人のラルクが仕入れにやってきていた。

「お久しぶりですジークさん」

「久しぶりだな。調子はどうだ」

「もう絶好調です! ジークさんのところから買い付けた品物はどこで出しても大人気なんですよ!」

「そりゃよかった。こっちもおまえのおかげで、前よりよそから人が来るようになったよ。ありがとな」

「そんなそんな! ジークさんからもらっているものと比べたら、たいした恩返しになってないです。いつもすみません。これ、ツマラナイ物ですが……」

テーブルの上に木箱を置く。

中には黄色く四角い何かが入っていた。

「お菓子か?」

「はい。東の方で流行っている【カステラ】ってお菓子です」

「ありがとな。美味そうだ。お茶にでもするか」

と、そのときだった。

『はいはいはーい! お茶をお持ちしました~~~~~~~~~!』

バンッ! と扉が開くと、小柄な少女が入ってきた。

「わっ! なんですか、この妖精……?」

『わたしは妖精リリン! ジーク様の忠実なるシモベでございますっ!』

リリンの手にはお盆と、そしてティーカップ。

彼女は素早い動きでお茶を2人分用意してくれた。

「よ、妖精まで仲間にするなんて……いつもながら、さすがですねジークさん」

「そんな気はなかったんだが、どうにも禁書庫から帰ってきたあとから、ずっとこの調子なんだよ」

ちなみに司書の仕事もちゃんとこなしているらしい。

リリンは【偏在】という魔法が使える。

ようするに分身のことらしく、魔王国と禁書庫、別々の場所に、同時に存在することができるそうだ。

「へ、偏在を使える妖精って、割とレアだったと思いますよ……」

「そうなのか?」

「はい。たしか妖精族の王族でしか無理とうかがっていたのですが……」

「ないない。だってこいつ長い間地下で暮らしてたんだぞ」

「ああ、そうなんですね。じゃあ変か。さすがに王族が長い年月行方不明だったら、もっと問題になっているでしょうし」

俺はカステラを食べながら、ラルクと会話する。

『ジークさまぁ! なにかすることはありますか? 何でも申しつけてくださいましぃ! ぱしりでも何でもしますっ!』

俺の前でペコペコと頭を下げるリリンに、俺は戸惑う。

「おまえなんでそんな態度変わったわけ?」

『いえいえまさか! わたしは出会ったときからジーク陛下を心よりお慕いしておりましたよ!』

「調子のいいやつめ」

賢帝に認められたことで、彼女の中で俺に対する評価もまた変化したのだろう。

「ところでジークさん、見せたい物があるとうかがっていたのですが」

「おお、そうだった。これ見てくれ。リリン、あれを持ってきてくれ」

『かぁしこまりましたぁああああああ!』

一瞬でリリンの姿が消えて、戻ってくる。

その手の上にはお盆が載っている。

ふたつの全く同じ結晶が乗っている。

「魔力結晶ですね、どちらも。迷宮で発掘してきたのですか?」

「片方はな。もう片方は人工の物だ」

「は……………………?」

ラルクは天然と、人工の魔力結晶とを見比べて、愕然とした表情になる。

「う、うそ……まったく、見分けがつきません……」

商人のラルクから見ても、人工の魔力結晶は、天然のものと引けを取らないらしかった。

「まさか……これ、作ったの……ですか」

「そう。ほら、前に禁書庫へ行ったっていったろ。そこに魔力結晶についてのレポートがあったんだ。色々改良して、こうして完成した」

「す、す、すごすぎますよこれ……! 魔力の保有量も半端じゃない! これが魔物を倒さずに作れるなら……か、革命だ!」

『さすがジーク様! いつだって世界に革命をもたらすまさに時代のパイオニアでございますっっっっ!』

どうやら結構うまくいったようだ。

「まだちょっと制作にコストかかるから、完成はまだかかりそうだがな」

「いやもう十分すごいですってこれ! ぜひ買わせていただきます!」

「おう。じゃあとりあえず今ある分渡すよ」

俺はそう言って、ポケットから手のひらサイズの本を取り出す。

本を開くと同時に、ページが自動でめくれて、大量の魔力結晶が召喚される。

「こんなもんでいいか?」

「いやちょっと!? ジークさん!? ちょっとお待ちください!!!!」

「え、どうした?」

わなわなと口を震わせながら、ラルクが俺の手元を指さす。

「な、なんですか……その本?」

「これ? 禁書庫の本を参考にして作った、物を収納・出し入れできる【収納の魔本】だけど……」

呆然とするラルクに、俺は戸惑う。

「どうした? 俺、なにかしたか?」

「いや……いやいやいや! ジークさん! これの方がヤバいですって!」

「どれのこと?」

「その本! だってそれ、アイテムボックススキルや空間収納魔法と一緒ですよね!?」

「まあな」

「まあなって……それがあれば大量のアイテムを、誰でも簡便に持ち運べるじゃないですか!」

「まあそうだな。それが?」

「ああもう! ジークさんはこの発明品の素晴らしさをわかっていない! 商人にとってそれがどれだけすごい物なのかを……!」

「よくわからんが、欲しいならやるぞ。いっぱいあるし」

「いやいやいや! そんな国宝級のアイテムもらえませんって!」

「いいってこんなの、適当に思いついたアイディアを元に、適当に作ったもんだし」

ぺたんとその場でへたり込み、ラルクが頭を抱える。

「片手間で世界の常識を変えるレベルの発明をするなんて! ジークさん! あなた規格外にすごすぎますよぉおおおお!」