軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

脳筋パワータイプか否か

死の大地にある死王アイシスの居城、城の中庭に設置されたベンチにはウルペクラとポラリスの姿があり、なにかを話している様子だった。

「……思うんだが、そろそろ私が脳筋パワータイプだという不名誉な誤解を払拭すべきではないかとね」

「ポラリスはずっと脳筋パワータイプっすよ?」

「いやいや、待ってくれたまえ! そこには先入観による思い込みが作用しているのではないかというのが、私の主張だよ。筆頭殿が私のことをそんな風に言うから、他の皆もそれに釣られてそう思い込んでしまっている。だが実際に考察してみると、思っていたのとは違った……そういう話はよくあるものだろう?」

自身は脳筋パワータイプではないと主張するポラリスを、ウルペクラはなんとも言えない呆れたような表情で見つめる。

ポラリスが主張したいことがなにかは理解できる。要するに己は皆が思ってるほどパワータイプではなく、もっといろいろテクニカルなことができるタイプなので、再考してみて欲しいという感じである。

「ん~まぁ、つまりポラリスの主張としては、長年とまではいかねぇっすけど、いままで死王配下内で固まったイメージのせいで、一種のバイアスがかかってるとかそいうことっすよね?」

「そうだね。特に筆頭殿かな」

「……じゃあ、比較的そういう認識に疎い新し目の配下に意見でも聞いてみれば、なにか分かるかもしれねぇっすね。呼んできますか……ちょっと待っててほしいっす」

ポラリスの主張を理解した上で、ウルペクラは新し目の配下を新たに召喚することを提案した。一対一で、この割と不毛と言える会話に付き合い続けるのが面倒になったので、もう一人ぐらい巻き込もうという考えも大いにあるがいちおうはポラリスの主張を加味した上で筋が通った提案である。

そして、ウルペクラが城の中に入ってポラリスが待つこと数分、ウルペクラは猫耳と三本の尻尾が特徴的なアルシャを連れて戻ってきた。

「というわけで連れてきたっす」

「……なんか、いきなりウル先輩に連れてこられたにゃ」

「ほぅ、アルシャか……なるほど……いちおう、なぜ彼女を選んだのか聞いてもいいかな?」

不思議そうな表情を浮かべるアルシャを見て、ポラリスは軽く頷いたあとでウルペクラに選定の基準を尋ねる。

「まず第一に、配下に加わった時期が割と最近でポラリスの主張する先入観にそれほど染まってないと思うっす」

「ふむふむ、なるほど……」

「次に性格的にあんま忖度せずに、ずけずけとストレートに言うタイプっすから忌憚のない意見を聞けると思ったからっすね。それに加えて、単純にアタシが評価してるってのもあるっす。本人は器用貧乏とか言ってるっすけど、多方面に知識があるっすし洞察力もかなりあると思うっすし、面白いところに目を付けたりもするっすから、なんだかんだかなり優秀なんすよ」

「ウ、ウル先輩……そ、そんなに私のことを……」

「あと最大の理由として、普段から割と雑に扱ってるので急に面倒な話に引っ張ってきても、アタシの良心が欠片も傷まないのがでかいっす」

「おいこら、クソ狐。私の感動を返せにゃ」

アルシャを高く評価していると告げるウルペクラに感動したような表情を浮かべていたアルシャだったが、その後の雑に扱ってもいい相手という認識には、一転してツッコミを入れていた。

そういった切り替えも含めて割と遠慮せずに発言するタイプだからこそ、ウルペクラに気に入られているというのも間違いではないのだが……。

「……で、それはそうと、私はなんの意見のために呼ばれたにゃ?」

「ああ、ポラリスが脳筋パワータイプかどうかって話っすね」

「うにゃ? ん~でも、ポラリス先輩はウィッチ族じゃないかにゃ? だとすると、魔法の方が得意にゃんじゃ……」

「聞いたかい? ウルペクラ、これこそが正しい意見というやつだよ。ほら、出てるだろう、見た目からして魔法が得意そうなオーラが……」

まず前提としてアルシャもポラリスの戦いは見たことがあるが、そもそも男爵級のアルシャと公爵級のポラリスでは実力差があまりにも大きい。

訓練などで相手をしてくれる際には、己に合わせて手加減として徒手空拳で戦ってくれており、本来は魔法の方が得意と思っていても不思議ではない。

そんなアルシャの意見にポラリスは上機嫌になるが、ウルペクラは軽く頷いたあとでアルシャに告げる。

「……じゃあ、アルシャ。ちょっと、ポラリスにタックルしてみるっす」

「にゃ? タックルにゃ? ……いいのかにゃ?」

「うん? ああ、構わないよ。さぁ、私の胸に飛び込んできたまえ」

アルシャがウルペクラの指示に不思議そうに首を傾げつつポラリスに確認すると、ポラリスは問題ないと告げて軽く両手を広げる。

意図がよく分からないまま不思議そうな表情で、とりあえず指示通りにアルシャはポラリスに向けてショルダータックルを行った。

そして、ポラリスの体にタックルが当たった瞬間……アルシャの脳裏によぎったのは、天を突くほどの大樹だった。魔界最大の都市ユグフレシスに中央にある世界樹にも劣らぬほどの巨木、己のタックル程度では葉を揺らす事すらできないほどにどっしりとした圧倒的な安定感。

それを感じ取ったアルシャは、驚愕に目を見開き震える指でポラリスを指出しながら口を開く。

「……き、筋肉の化け物にゃぁ!?」

「失敬だな、君……」

「いやいや、凄かったにゃ! まさにすべてを阻む筋肉の壁……マッスルウォールだったにゃ!」

「変な造語を作らないでくれたまえ」

タックルをしたことでポラリスの圧倒的なパワーというか、あまりにも鍛えに鍛えられた肉体を感じて驚愕するアルシャを見て、ポラリスはなんとも言えない表情で苦笑する。

「ほら、これで分かったっすよね?」

「待ちたまえ、これは作為的な誘導ではないかな? アルシャ、よく思い直してくれ、大げさに言い過ぎただけだろう? 壁とかってほどじゃないはずだ……」

「う、う~ん、確かに程よい柔らかさというか弾力もあったし、いい匂いもしたにゃ」

「そうだろう?」

「ぶっとい木に分厚いゴムを巻き付けたような感じだったにゃ!」

「やっぱり失敬だな君……」

いい表現を思いついたと言わんばかりに告げるアルシャを見て、ポラリスは頬を引きつらせて苦笑した。なるほど、ウルペクラが可愛がるだけあって中々にいい性格をしていると、そんな風に思いながら……。