軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

レオナルド視点 精霊水晶とカミロの研究資料

残りの『精霊の座』を破壊するからすべて出せ、と要求するティナを宥めてジャスパーを見送る。

ティナが『精霊の座』の破壊を神王に頼まれているらしかったし、俺自身も神王には世話になったと思っているので、神王の願いならば叶えたいとも思う。

思うのだが、だからといって今すぐに『精霊の座』こと精霊水晶を破壊することは、あまり良い手とは言いがたかった。

俺とティナは、現在カミールに洞窟へと匿われている身なのだ。

カミールを困らせると判っていることは、故意に行うべきではないだろう。

少なくとも、カミールの目の前でそれを発言するほどうかつな真似はないし、内心でどう思っていたとしても、ティナの言動は止めた方がいい。

……それに、ようは洞窟を出て行く時に壊せばいいんだからな。

カミールの前で精霊水晶を壊す、壊したいと大騒ぎするよりも、ここはおとなしく匿われておくべきだろう。

静かに過ごしている中で、どうやら小さく刻まれてしまったらしい『精霊の座』の在り処を探すのもいいかもしれない。

とにかく、ここで騒いで洞窟から追い出されては困るし、逆に精霊水晶を隠されてしまっても困るのだ。

ティナには少しおとなしくしていてもらうしかない。

精霊の力を借りた発火は、遺体を骨にするには十分な火力があったようだ。

白い骨になった二人の遺体を小さな骨壷へと詰め替えると、カミールはそれを持って去っていった。

このあとは洞窟のもっと深い場所を流れているという川に向かい、小さな舟に骨壷を乗せて流すようだ。

ズーガリー帝国の地に埋めてやるよりも、川からどこかへ旅立たせてやる方がいいだろう、というカミールの考えらしかった。

……あれはあれで、ジャスパーのことを気に入っていたんだな。

俺の名前は何度でも間違えるが、カミールはジャスパーとアルメルの名を間違えて呼ばない。

遺体を実験に使う、といった少し首を傾げたくなるようなこともあったが、カミールなりに二人の冥福を祈ってはいるようだった。

「『精霊の座』……精霊水晶と呼ばれているものの位置は判るか?」

ティナの言動から、カミールにはすっかり警戒されてしまっている。

そのため、カミールから聞き出すことは難しそうだったが、今の俺には精霊に聞くという方法があった。

俺とティナに宛がわれている部屋へと戻る道すがら道案内の小鬼に話しかけてみると、小鬼はわずかに困ったような顔をして足元の精霊灯を指差し、数歩あるいてまた別の精霊灯を指差す。

そうしている間に他の精霊が通路へと姿を現し、壁の一部や天井を指差し始めた。

「……解った。カミールの言う精霊の力を借りた仕掛けすべてに、小さくされた精霊水晶が使われているんだな?」

――そう。王様の体、いっぱいバラバラ。

見える範囲に現れた精霊は思いおもいの場所を指差している。

その指差す先すべてに精霊水晶が使われていると思えば、洞窟内に設置された『精霊の座』の破壊は容易ではない。

数が多すぎて、とてもではないが一つひとつの破壊が現実的だとは思えなかった。

「最初から気付いていれば、カリーサを探すついでに一つひとつ潰していったんだけどな」

ティナが各部屋へと入り込んでカリーサを探しているため、俺たちがそれぞれの部屋を移動することはそれほど不自然ではない。

精霊水晶を破壊すれば当然カミールは困るだろうが、俺たちが破壊して歩いたとしてもすぐには気がつかないはずだ。

精霊水晶が使われた精霊灯などの仕掛けは、今のところ俺以外には反応をしていない。

もともとカミールのためには反応をしないのだから、こっそり壊しておいてもそうすぐには気がつかないだろう。

……とりあえず、次からは部屋を覗くたびに少しずつ壊しておくか?

カミールの前ではティナを止めたが、『精霊の座』の破壊はティナが神王から託された仕事だ。

ティナの代で達成できなければその子ども、その孫に、とも言われているようなので、兄としてはティナの代で終わらせておきたい。

ティナがいつか生む子どももその孫も、俺の家族だ。

家族に重過ぎる仕事など、残したくはない。

「そういえば、ティナは部屋の精霊灯には無反応だったな。なぜ突然精霊水晶を『精霊の座』だ、って叩き潰したんだ?」

「見たら思いました。『精霊の座』だって」

ティナは指を丸く眼鏡の形にして俺へと示す。

見たら判ったということは、逆に考えれば見なければ判らなかったということだろう。

室内にある精霊灯の精霊水晶は、先ほどの仕掛けと同じように覆いの下にはめ込まれているのかもしれない。

覆いの下にあるせいで、今までティナも気がつかなかったのだろう。

精霊に関しては、俺が『精霊の座』だと気付きもせず、これが何かと聞きもしなかったので、精霊の側から言ってこなかっただけだ。

部屋に戻ると、早速手近にある精霊灯を持ち上げ、蓋を開ける。

予想通り蓋の下には光る板がいくつかあり、そこに紛れるように精霊水晶がはめ込まれていた。

……これが『精霊の座』か。

間近く見るのは初めてで、思わずじっくりと観察してしまう。

ティナの言うことには『精霊の座』は巨大な水晶などではなく、その正体は神王の遺骸を納めた棺であるらしい。

光の加減によっては中に納められた遺骸の影が見えることもあるそうなのだが、この小さな欠片には何も含まれていないように見える。

精霊灯ごと角度を変えて覗いているのだが、中に何かが映る様子はない。

……うん?

ティナがしたように軽く小突いてみたのだが、触れた瞬間に指先へチクリとした針に刺されたような痛みが走る。

指でも切ったかと見てみるのだが、特に血は出ていない。

では気のせいだったのか、と慎重に精霊水晶へと触れたのだが、今度は何の痛みもなかった。

指先には冷たい石の感触があるだけだ。

「意外に……堅いな?」

ティナが簡単に壊していたので、と試しに力を込めてみるのだが、精霊水晶にはひび一つ入らない。

持ち方が悪くて力が入らないのか、と精霊灯から精霊水晶を取り外し、改めて力を込めてみるのだが、やはり破壊できなかった。

「貸してください」

「結構堅いぞ?」

「もろいですよ?」

ほら、と手のひらに精霊水晶を乗せてやると、ティナは視線を落として「あれ?」と首を傾げる。

疑問が湧いたのは、一瞬だけだったようだ。

すぐに気を取り直したように軽く精霊水晶を握り締め、粉々に砕いてしまった。

割れた水晶が手に刺さって危ないのでは、と心配にもなったが、これは杞憂に終わる。

粉々に割れた精霊水晶は一度その身を白く染めると、次の瞬間には光の粒になって消えてしまった。

……本当に、普通の石とは違うものなんだな。

ティナに壊せて、俺に壊せないというのはおかしい。

腕力的な意味では、俺の拳は熊の顎すら砕く。

その俺でも砕けないものを、ティナが軽く握っただけで壊してしまうというのも、おかしな話だ。

『精霊の座』と呼ばれる水晶は、本当に精霊が関係する水晶なのだろう。

人間の腕力では計れない、なにかがあるようだ。

「他のも壊しましょう。レオ、カバーを外してください」

「それは構わないが……もうしばらくこの部屋には住む予定だからな。明かりがなくなるのは困るだろう」

「電気の照明がありますよ。廊下とかもそうでした」

精霊灯が明かりとして正常に点灯しているのは、俺のいるこの部屋だけだ。

あとは俺が通路を移動する時に先導するかのように精霊灯がつくだけで、他の部屋や廊下はカミールとティナいわく『デンキ』で部屋を明るくしている。

この部屋にも設備自体はあるようなので、精霊灯の中にある精霊水晶を壊してしまっても困ることはなかった。

どう思う? とティナではなく部屋の中にいる精霊へと視線を向ける。

視線を受けた精霊たちは、我先にと部屋中にある精霊水晶の場所を指差し始めた。

どうやら精霊たちは、精霊水晶の破壊には全面的に賛成のようだ。

……それにしても、本当に数が多いな。

一部屋にこれだけあるなんて、と少し途方にくれてみる。

これらの精霊水晶をすべて破壊しなければならないとなると、いったい洞窟の中に何個の精霊水晶があるのかと見当もつかなかった。

……一度に破壊できる方法があればいいんだが。

それでなくとも、一応は洞窟へと匿われている身だ。

あまり堂々と施設内を破壊して回るというのは気が引ける。

理想としては、出て行くその日にこっそりとすべてを破壊したい。

……せめて、全部で何個あるかが判るだけでも気分が違うと思うんだが。

洞窟内にカリーサの姿を探しつつ、精霊の助けを借りて地図へと各部屋に何個の精霊水晶が隠されているかを書き込んでいく。

精霊水晶の破壊については精霊も望むことらしく、見返りとして俺の名前を要求してくることはなかった。

新しい部屋へ入るたびにせっせと精霊水晶がはめ込まれている場所を教えてくれる。

精霊水晶を 一目(ひとめ) 見て『精霊の座』であると気がついたティナは、意外におとなしかった。

見つけたすべての精霊水晶を壊したがるかと思っていたのだが、不思議なことに所在を確認しただけで満足している。

……いや、触った瞬間にピリッと来る俺の顔が面白いらしいんだけどな。

精霊水晶のはめ込まれている蓋を開けると、ティナはそれを確認して俺に触れと言うようになった。

ピリッと来るのは気のせいでもなんでもなかったようで、新しい精霊水晶に触れるたびにチクリとした痛みがある。

理由を精霊に聞いてみたところ、精霊たちは一斉に口を両手で塞いだ。

どうやら答えられないらしい。

では指示を出しているティナなら判るか、と聞いてみれば、首を傾げながらも「 空(から) になる?」となんとも自信のなさそうな回答が返って来た。

チクリと来るのは最初のひと撫でだけで、あとは何度触れても冷たい石の感触しかしなくなるのも、不思議といえば不思議だ。

洞窟内を散策しつつ精霊水晶の数を調べるという生活を続けていると、ある日珍しくもカミールが部屋へとやって来た。

さすがに部屋の精霊灯を壊したことがばれるかと内心で冷や汗を流したが、カミールは点灯していない精霊灯には目もくれず、ティナへと一冊の古ぼけた本を差し出す。

これを読めばアルメルがニホン語を読むことを拒んだ理由が解るだろう、と。

……つまり、これが転生者カミロの残した研究資料か。

聖人ユウタ・ヒラガの研究資料のような原本だと思うのだが、扱いは比べようもなく雑だ。

カミールが素手で何気なく持ち運び、ティナへとひょいっと差し出している。

これがイヴィジア王国に残された聖人ユウタ・ヒラガの研究資料であれば、資料自体に護衛が何人も付けられているところだ。

……本当にニホン語だな。

カミールが帰った後、ティナは早速俺を椅子にして研究資料を読み始める。

元のティナとは違和感のある今のティナだったが、内向的であまり活発な性格ではないというところは変わらない。

外で遊ぶよりも、部屋で本を読んで過ごすことの方が好きなのだろう。

俺の膝に座って研究資料を読むティナのおかげで、俺からも研究資料がよく見えた。

……さっぱりわからん。

五十文字あるという『平仮名』ぐらいは覚えたが、『カタカナ』は半分ぐらい、『漢字』にいたってはまったく判らない。

それがどういった意味の単語か、ぐらいは少し覚えたものもあるが、これを読めと言われても俺には読めないだろう。

文法がエラース語とも英語とも違ううえに、漢字の組み合わせがほぼ無限にも思えた。

これらの複雑な文字を普通に使いこなしていたというのだから、ニホン人は本当にすごい。

「ティナは本当に書いてあることが読めるのか?」

こんな複雑怪奇な文章をティナは本当に読めているのか、とふと気になって聞いてみる。

ティナは俺の問いに研究資料から顔をあげると、体の力を抜いて体重を俺の胸へと預けてきた。

べったりと甘えたい気分になったらしい。

「レオが気になるんなら、しかたがないので読んであげますよ」

少しだけ得意げな顔をしたティナが懐かしかった。

以前にも、年相応な子どもらしい仕草として、ティナが見せたことのある顔だ。

「……うん。じゃあ、気になるので中身を読んでください」

「おまかせあれー」

絶賛子ども返り中のティナは、本当に子どもと同じだ。

扱いが精霊とも似ている。

おだてに弱く、ある意味では扱いが簡単だった。

……まあ、その分変に頑固で、一度拗ねると手に負えないところもあるんだが。

俺に体重を預けながらティナが読み上げる研究資料の内容は、俺でも理解できるものから、まったく理解できない仕掛けについてを纏めたものだった。

てっきり銃のような武器の作り方ばかりが研究されていたのかと思っていたのだが、蒸気を使った動力や、鉱山での掘削作業を助けてくれる道具など、生活の役に立ちそうなものも多い。

転生者カミロと聞いただけで悪名を思いだすのは、どうやら間違った認識だったようだ。

……この研究資料にあるようなものを残せば、悪名で名前が残るんじゃなくて、偉人扱いだったんじゃないか?

聞いただけでは何のための仕掛けかわからないものも、ティナの知識にあればどんな道具なのかと解説してくれた。

蒸気などただの気体でしかないと思うのだが、それを動力として鉄の馬車を動かし、一度に何百人という人間を馬より早く、遠くまで運べるらしい。

異世界の道具についてはホラ話としか思えないようなものがいくつも残っているが、実現可能な域にまで達した資料はなかった。

おそらくは、転生者カミロの残したこの研究資料だけであろう。

聖人ユウタ・ヒラガの研究資料と同じように、この世界にあるもので実現可能なところまで落とし込まれていた。

……でも、カミロはこれらの役立ちそうな研究は広めず、武器を広めたんだよな。

それはなぜかと考えて、すぐに答えへと辿りつく。

カミールと同じだ。

時の権力者の援助を得ようと近づき、その結果として武器だけを作らされたのだろう。

近づいた権力者がクリストフのような性質の人間であればよかったのだが、一代でズーガリー帝国を築くような戦好きの君主だった。

カミロは、頼る相手を間違えたのだ。

聖人として名を残すユウタ・ヒラガは、権力者個人ではなくセドヴァラ教会という集団にくみし、そこで己の地位を築いてもいた。

カミールの言う「カミロはやり方を間違えた」というのは、このあたりのことも含んでいたのだろう。

「――が見つかったことから、この世界でも……の実現は可能。……が、作れれば……地上……戦争……が、そんなことは間違い……」

「……ティナ?」

途中までは得意げな顔をしてスラスラと読み上げていたのだが、ティナの表情が微妙に曇る。

難しそうな顔をして眉間に皺を寄せたかと思えば、ついには黙ってしまった。

「……読めません!」

パタン、と少々乱暴な仕草で本を閉じ、ティナがふいっと横を向く。

あきらかに様子のおかしいティナの仕草に、顔を覗き込むとティナは判りやすく俺から目を逸らした。

おまけに、吹けもしない口笛を吹く真似までしている。

「読めませんよ。難しい漢字がいっぱいだなー。読めないなー」

清々しいまでの棒読みで「読めない」と繰り返すティナに、周囲の精霊へと視線を向けた。

どういう仕組みか、精霊には人間の嘘を見抜くことができるようなのだ。

発言の真偽を問うのに、これほど楽な相手はいない。

「……ティナは読めないと言っているんだが?」

どう思う? と猫ぐらいの大きさをしたヒヨコにしか見えない精霊へと声をかける。

ヒヨコの精霊は俺に話しかけられて一度頭をこちらへと向けたのだが、すぐに頭の向きを直して枕元で丸くなる。

この反応を見るに、精霊も答えたくはない内容らしい。

「精霊に聞いたらダメですよ」

「いてっ」

精霊に聞くなんてずるい、と言ってティナがペチンと俺の膝を叩く。

読めないものは読めないのだから、気にするなということらしい。

「……読めないから、カミールおじいちゃんに返してきます」

膝を叩かれて眉を顰めた俺に満足し、ティナが俺の膝から降りる。

そのまま一人で本を抱えてテクテクと扉まで歩き、すぐに戻ってきた。

どうやら俺を忘れていったことを思いだしたようだ。

行きますよ、とぐいぐいと引っ張ってくるティナの小さな力に、俺もつられて腰をあげた。

「カミールおじいちゃん、本を返しに来ましたよ」

小鬼の案内に任せて進んだ部屋に、やはりカミールはいた。

見つけ出そうとして見つけることは難しいらしいのだが、精霊の道案内はすごい。

洞窟内のあちこちに精霊が潜んでいるので、カミールがどの部屋にいるかは彼らの間で情報交換がされているのだろう。

「全然読めませんでした!」

どや、と胸を張って嘘の報告をするティナに、本を受け取りながらカミールがうんうんと頷く。

やはり読めたのか、と。

「読めませんでした、って言っています」

「読めたからの『読めませんでした』という報告だろう?」

「むぅ……」

読めなかったと言っているのに、とティナが頬を膨らませて怒る。

俺でも判るティナの嘘に、騙される人間はいないだろう。

それほどに、今のティナの嘘は判りやすい。

「……読めたらどうするの?」

「読めたら……困るな。あれらの研究は、あまりよろしくない結果と傷跡を残すことになるだろう」

だから『読めなかった』という感想は正しいのだ、とカミールは言う。

それから、だからこそアルメルも研究資料を読むことを拒んだのだ、と。

……そうか。今の少し様子がおかしいティナでも『読めなかった』と判断するようなものだ。アルメルが同じ判断をしたとしても不思議はない。

アルメルと実際に話したことはないが、引き取った当初のティナを想定してみれば、見た年齢どおりの性格だったとは考え難い。

子どもの体に大人の意識が宿り、その大人の判断として『研究資料を読んではいけない』と判断したのだろう。

ある程度の理性が宿っていれば『読めなかった』と判断するものが、あの研究資料には書かれているのだ。

「……カミールおじいちゃんは、あれを作っているのではないの?」

「その勘違いは嫌だな。僕はあんなものよりもっと素晴らしいものを作りたいと思ってるのに」

完璧に制御できない欠陥品になど興味はない、とカミールは続けた。

制御を含めて研究を完成させるまではしてみたい気もするが、実物を作り、この世界に残すつもりはないのだ、と。

形として作ってしまえば、後に残る。

後に残ってしまえば、後世の人間が好き勝手に触り始め、自分が作った最初の形とはまるで違うものに改悪されてしまうことにも繋がる、と。

この研究については、自分の手を離れさせるわけにはいかないのだ、とも続いた。

「僕はね。自分の作ったもので、多くの人間が死ぬのはもう嫌なんだ。それが自分の手を離れて、どんどんとより凶悪なものに作り変えられていくのも怖い。……その怖さを知っている」

だから外へ出すものは選別しているし、武器へと転用可能なものは極力洞窟の外へは出さないようにしているらしい。

今度こそ、誰かを傷つけない、誰かの助けになるものを生み出したいのだ、と。

転生者カミロが犯した過ちは繰り返さない、と言うカミールに、ティナはその結果が魔法の研究なのか、と聞いていた。

……あのジャスパーたちの遺体を焼いた仕掛けは、武器にもなると思うんだが?

あれがカミールの残したいものか、と聞くティナに、カミールは少し困ったような顔をする。

どうにも説明が難しいようだ。

魔法は研究しているものの副産物であって、本体ではないらしい。

では何を作ろうとしているのか、と聞くティナに、カミールは少し考えたあと、こう答えた。

「僕は『システム』を作りたいんだ」