軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

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バタバタと兵士が走り回っている。

巡回で私たちと遭遇したガイとエレイルは管轄が違うということで、この作業には加わっていない。ただ、二人のおかげでこうなるまですごくスムーズに進んだ。

護衛の騎士と兵士としてだけど、ルストとエレイルの兄弟が直接言葉を交わしている姿を見れたのも少し新鮮だった。

あとガイとエレイルの息が合っていたのもよくわかった。……やっぱり、視察での一件のせいなのかな?

襲撃犯たちから武器が取り上げられ、次々と連行されていく。

その直前、

「あ、歯に仕込んである毒で自害しようとする者もいるかもしれないので、気絶している間に取ったほうが良いかもしれません。生かしておくのなら」

とヤールシュ王子が物騒なことを言って、私が兵士たちに指示を出すという一幕もあった。――実際、その通りだった。奥歯に被せものがしてあって、それは小さな密閉容器を包むためのもの。いざというとき、容器を砕くと毒が口内に溢れる、という仕組みらしい。

現場発見者として、私も一通りの作業が完了するまで残ることにした。

作業する兵士たちからは、少し離れた場所――具体的には、開いた隠し扉付近。

何せ、エドガー様以外は、諸侯会議中だもんね。ちょうどこの場に居合わせている私が権力発動をしたほうが色々簡単、というのもある。

まあ、とりあえず、ヤールシュ王子への暗殺未遂? は防がれた。兵士たちにもヤールシュ王子の身分を明かしている。ただ、私たちが居合わせなくとも、どうにかなっていたのではないかと思われる。

というのも、クリフォードとルストの両方にこっそり訊いてみたんだよね。

ヤールシュ王子だけで六人の襲撃者に勝てていたかどうか。

二人の答えは一致していた。「問題ない」とのことだった。違いがあるとすれば、制圧時間? 全員倒すまでにどれくらいかかったかだけ。

そして、私はちょっとした事情聴取をヤールシュ王子に行うことにした。

「ここにいたのは、何らかの呼び出しを受けたためですか?」

シル様閉じ込め事件と同じ手口?

「いいえ。単に探索していただけですね。……断っておきますが、イーノック陛下の許可は得ていますよ」

「探索……」

「ええ。やはり歴史のある国は良い。文化の違いにも興味が惹かれます。エスフィア王城のそこかしこ、一つ一つが遺物のようなものです。ウス王時代の仕掛けも素晴らしい。もうすぐ、『神の欠片』が公開されるそうですが、拝見する資格がない我が身が惜しいほどです」

突如、ヤールシュ王子の様子が変化した。言葉に力がこもっている。これは……私にも身に覚えのあるオタクトーク! 分野は違えど性質は同じ!

「お詳しいのですね」

エスフィア人なら常識……とまでは行かなくとも、それに近い感じではあるのかな。

――『神の欠片』。前世でいう、エクスカリバーとか、ゲイボルグとか、エリクサーとか、賢者の石とか。ああいう伝説系のアイテム。

王室の正統性を象徴する由来ありの宝物。エスフィアの王族は天空神の祝福を受けていると言われている。その証拠みたいな?

ウス王の時代に、天空神が降臨した。神は祝福としてエスフィア王家に宝物を授けた。

――それが、『神の欠片』。

あくまで伝説で、目にしたのは、ウス王ただ一人と言われている。

エスフィア王城の一室に保管されていて、ウス王の残した言葉により、その部屋の扉は硬く閉ざされている。『約束された日に開く』というのが通説。

実に数百年ぶりのこと。

ウス王以後の王族で、『神の欠片』を一目見ようと、保管されている部屋の扉を開けようと試みた者もいたものの、誰一人として成功せず。ウス王お得意の仕掛けが施され、以後これまで一度も開いたことがない。正真正銘の『開かずの扉』だとも言える。歳月を経れば経るほど、その場所そのものが神聖視されるようになった。開けようと試みるなんてとんでもない! そんな感じ。

だからウス王が残した言葉の通り、約束された日に扉が開くのだろう、と言われている。

ただ、そのウス王が残した言葉というのが曲者で、まるで暗号文。

解読の結果、その日は導き出されている。ちょうど、今回の諸侯会議期間中に訪れるはずなんだよね。というか、約束された日にあわせて、父上はイレギュラーな諸侯会議を開くことにしたのかも?

もちろん、その扉の前へ行けるのは王族のみ。

でも、エスフィア国内では知れ渡っていて、扉が開いた結果は――きっと発表されるに違いない! て直接見ることはできなくても、興味を持っている人はたくさんいるはず。

それぐらいレア中もレアなイベント。

――ところが、『高潔の王』ではこの事にまったく触れられていない。

何を隠そう、王族でありながら、私も以前は眉唾だと思っていた。

いまでも、お話としてはあまり信じていない。

まず、天空神そのものが、『あの青年』が作った仕組みのようなものなんじゃないかって私が考えてるから。なのに、降臨して宝物を授けるって、違和感がある。

ただし、原作とは関係なしに、確認すべき出来事ではある。……ウス王が関わっていることだから。現在に伝わっている話以上の何かが、あるのかもしれない。たとえ、原作に描写がなくても。

「おや。『神の欠片』には、二人も興味があるようだ。同士かな?」

ヤールシュ王子が、クリフォードとルストに声を掛けた。

この二人が、『神の欠片』の話題に反応したってこと? ……ものすごく意外だった。無関心なぐらいが合っていそうって、これは私が勝手に思ったことだけど。

「エスフィア人なら、興味を抱くのが普通でしょう」

ルストが答え、

「……………」

肯定も否定もせず、黙ってクリフォードが目礼した。

「…………」

何となく、クリフォードを見つめてしまう。

いつも通り、に見えるのに、どことなく……?

「――そういえば、ターヘンについてお話しする約束をしていましたね。アレクシス殿下はいらっしゃいませんが、この機会にいかがですか?」