軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

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シル様の腕に、アオ、留まっていたよね? つまり、懐いている……! そんなことができるのは、私の知る限り、クリフォードぐらいだったのに! 獣医師にもさせない。

なお、私の場合は、クリフォードの助けがあるとできる! ズルしてる自覚はある!

「シル様……アオと親しいのですか?」

「あのレヴ鳥、アオ、というんですね。親しいというか……一度遊んでから、たぶん、おれの部屋の前が散歩経路に入ったみたいで、扉を嘴で叩いて来たぞって教えてくれるんです。ただ……その」

シル様が言葉を濁す。だけど私は突っ込んだ。

「その?」

「監視役の人によっては、殿下が保護した鳥だとは聞いていても、部屋にレヴ鳥がいるのを嫌がるので……。あの鳥もそういう気配は察するみたいで攻撃するし……」

確かに! アオ、その嫌いはある! 敵意には敵意。ネイサン味っていうの? 怪我をしても城内を動き回っているところとか、なのに順調に回復中なところもそうかも。

この間も「肩慣らしです」ってネイサンが早歩きしてたのに遭遇したし――部下っぽい騎士に「ネイサン様! もう戻りましょう!」と追いかけられてた。

「それで、廊下にいらしたのですね」

こくりとシル様が頷いた。

でも、これではっきりした。アオは、シル様を気に入っている!

まさかこれも主人公補正……? もしやあの子、私と好みが似てる?

「あ、ですが今日の方たちは、二人とも平気な方です! 廊下で遊んでいたのはたまたまで」

シル様の監視役の騎士も、実は廊下にずっと待機している。私の姿を認めた段階で、静かに頭を垂れる動作をしていた。聞いたところによると、兄と父上で一人ずつ騎士を出しているとか。この騎士は……たぶん、父上の手配した人かな。

「オクタヴィア様は、おれに面会にいらしたんですよね? 話はセリウスから聞いています。中へどうぞ」

お言葉に甘えて、軟禁部屋に、いざ入室。

室内には、もう一人、騎士が控えていた。私へと一礼する。腰に帯びている剣の柄に、金色の飾り房がつけられているから、兄上の護衛の騎士だ。

「兄上はいらっしゃらないようですね」

同席するって言ってたはずだけど……。

「何でも、デレクと話があるとかで。すぐ戻ると言っていました」

デレク、登城してるんだ? 良いことを聞いた!

「これもセリウスが用意したんです」

言われてみれば、来客用とおぼしき茶器が卓上に準備万端で鎮座している。シル様がカップに注いでくれた。完成したのはミルクティー!

「最初は、セリウスを押しのけて、おれが用意しようとしたんですが……。本来ならそうすべきですし」

シル様、悔しげに握りこぶし。でも、え? そうなの? シル様が淹れたお茶、飲んでみたかった! 歓迎の意を示すなら、その通りだけど……。

ん? あれ、シル様、ナチュラルに押しのけてとか言った?

「ただ、デレクにこの間言われたことを思い出して……オクタヴィア様に基準値以下のものを飲ませるわけにはいきませんから!」

シュンとしたかと思ったら、キリッとしてる。

デレク、シル様に一体何を……。――いや、シル様に対しては、デレクは普通ってことなのかな。記憶も、おかしくなってはいない?

……先にシル様に会いたかったのは、デレクのことがあるからなんだよね。

「あなたたちは、廊下で待機なさい。部屋にはわたくしの護衛の騎士が一人残るわ。わたくし、気兼ねなくシル様との会話を楽しみたいの」

というわけで、王女権力発動! シル様の監視役の騎士二人に退出命令を出す。父上の騎士にまで有効かは微妙だったけど――。

二人分の、短い肯定の応答がほぼ同時に返ってきた。成功。あとは――。

「ルスト。あなたもよ。部屋の外を守ってちょうだい」

「――畏まりました」

ルストを護衛の騎士に任命したけど、何もかも聞かれても良いってわけじゃないんだよね。これも、クリフォードとの違いかも。

三人が退室し、部屋に残ったのも三人。ここでようやく、私は椅子に腰掛けた。対面にシル様が座る。クリフォードは、護衛しやすい位置に佇んでいる。

まずは、兄が淹れてくれたというミルクティーをいただく。出されたお茶は飲むのが礼儀。一口も飲まなかったら、関係性にもよるけど、失礼になることが多い。うーん。変わらず、プロ並みの味だった。シル様も私が飲んだのを見てから、注いだ紅茶を飲んだ。こっちは色合いからしてストレートだ。

血色よし。不安そうな風でもなし。シル様が望んだこととはいえ、顔を見たのはお披露目の日以来だし、ずっと監視生活を送っているから気になっていた。……普通そう?

まあ、シル様、原作ではこう見えて溜め込むタイプだから、一見普通そうに見えても信用ならないんだけどね! でも元気がないときは素直に元気がないという……。

……いや、普通そうっていうの、違うかも。

何か榛色の目がキラキラしてる?

「……シル様?」

名前を呼ぶと、はっとしたようだった。

「すみません……つい、嬉しくて」

「わたくしもシル様に会えて嬉しいですわ」

「それに、オクタヴィア様とアルダートン様が恋人同士なのも嬉しくて。お二人とも、ようやく公表できたんですよね?」

こ、これは……お披露目の時に感じた、推しカプを見る眼差し……?

キラキラが心苦しい……!

「ダンスも素敵でした!」

わ、話題! 話題を変えよう!

シル様に会いにきた目的は二つ。その一つ目をさっそく切り出す。

「――わたくしがクリフォードを恋人として紹介した日の前日のことですが」

シル様が瞬きをした。前日……? と不思議そうにしている。

「シル様は、デレク様とお会いしていますよね?」

「はい。あの日、面会に来てくれました」

本当は、偽の恋人役として紹介されるのは、デレクのはずだった。その最終打ち合わせをお披露目前日にする予定でもあった。ルシンダ様からの贈り物を代理で渡しに来たところまでは、いつものデレクだった。

あの後の足取りを追うと、次にデレクが会ったのはシル様なんだよね。さらにその後に、私と打ち合わせの予定があったのに、別邸に帰ってしまっている。

デレクの行動として、約束があるのに別邸に帰ったっていうのは、異常。

だから、その前に、デレクに何か――記憶がおかしくなってしまうような出来事があったんじゃないかなって。

じゃあ、その異常は、シル様に会う前に起こっていたのか。それとも、後?

シル様にデレクの様子を聞ければ、判断できるかもしれない。

「その日、デレク様の様子はどうでしたか?」

シル様が顎に拳をあてた。考え込んでいる。やがて――眉間に皺が寄った。

この反応、何かあったっ?

「何かおかしなことがあったのですか?」

シル様の眉間の皺が消えた。

「え? いえ、おかしなことは特に……。雑談をしていただけです」

「普段通りでした? 話はどんなことを?」

「おれがお茶を淹れるのが下手だって話をしました。デレクの機嫌が良さそうだったので、何か良いことでもあったのかと聞いて……」

デレクの機嫌が良かった? じゃあ、シル様と会っていたときは異常がなかった、が濃厚かな……。

「それからアレクシス殿下の話に」

「アレクのですか?」

「あ……」

言いにくそうに、シル様が続ける。

「おれが、アレクシス殿下の前では緊張してしまうという話を」

「……そう、なんですね」

意外。

「はい……」

シル様が縮こまってしまった。

私もびっくりしてしまった。恋人だから当然として、兄には物怖じせずだし、私に対しても緊張している様子なんか……。いや、私の場合は何だかんだで打ち解けたからか。シル様、アレクとは接点ないもんなあ。

あと、原作の通りなら、今後敵対する構図になるから、そういうのも関係してる? もちろん、阻止するつもりだけど!

――でも、アレクに避けられまくってるんだよなあ……私。現実が厳しい。

「……アレクの話をして、デレク様は帰ったのですか?」

「いえ……その後に」

シル様が言い淀んでいる。私はじっとシル様を見つめた。……シル様が視線を逸らした。

「たぶん、ですけど、デレクの好きな人の話を……?」

困り切った顔をしてそう言った。