軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

逆転令嬢リリアンヌのもっと楽しい!?義実家訪問〜アーランデ国でも暴れちゃいます〜3

お茶会への招待が私のみだったことに母は憤慨していた。まあ、普通は私とお母様二人に送るものだろう。

なにせ送り主がマクブーレだったのだから。娘世代のお茶会なら私のみはアリだ。しかし、マグブーレが主催ならばこれはない。

なぜ私だけなのか、理解に苦しむ。まあ、理由はわかるけど。

「そんなお茶会には行かなくてもいいんじゃなくて!?」

ご立腹お母様をなだめるのに必死です。

「護衛の騎士にイライジャも付けよう」

今回、私のために女性の騎士を二人、お父様が用意してくれた。子爵令嬢程度なので、普段は騎士なしでも余裕で行動するのだが、今回はさすがにと、陛下にお願いして騎士団の女性騎士をお借りした。

フレデリカお義姉様は家族として来ているので、護衛魔術師としての役目を担うわけにはいかない。

ちなみにこの二人、シュワダー・レフサー信奉者だった。上映場を後援しているのはクロフォード家だというのは周知されていて、クロフォード家の護衛任務はとても光栄なことだと喜んでいるらしい。

作家本人様がすぐ側にいらっしゃいますよ……。

「イライジャが私の護衛になったらフィニアスの護衛はどうなるのですか?」

「私はリリアンヌが帰ってくるまでこの宮から出ないし、他にも護衛はいるからね」

まあ、意図はわかる。

イライジャはフィニアスの護衛だ。それをマクブーレも十分わかっているだろう。イライジャが見ていると言うことはフィニアスが見ているということだ。

「頑張ってきてね、リリアンヌ。怪我をさせなければいいよ」

「リリアンヌ、やられたらやり返しなさい。十倍くらいまでは許可します」

「フィニアスはともかく、クロフォード家、なんでみんなこう、攻撃的なんだろうね」

イライジャが目を閉じて嘆いていた。

会場はマクブーレの宮殿だ。アイリーンのものと同じくらい大きな土地だった。彼女が第五妃なので、他にも三つ同じような宮殿があるのだろうし、第一妃は正妃だ。ここよりさらに豪華なのだろう。

今日も天気が良く、お茶会は庭園で開かれるそうで、使用人に案内される。

「リリアンヌ様はゲストなのでしょう? 迎えもないのですね」

「そこら辺は国が違いますから、私たちとの感覚が違うのではなくて?」

なぜ騎士二人がさえずるのか?

チラリと見やると、にっこり笑顔で返された。

「マクブーレ様は第五妃様ですから、さすがに迎えはしないでしょう。他に準ずる身内の方もいらっしゃらないでしょうから」

第五、と身内の方がいない、にわずかながら力を込めておきました。

イライジャが無表情になった。

一応お母様へ招待状が来なかったことに、私も怒っているのですよ。

そしておわかりか。私に参加者の通達もなかった。なんなら一対一かな? とまで思っていたのだが、そうでないのは道の先から聞こえる女性の楽しそうな話し声。

多対一確定。

お互いの姿が見えて一瞬の静けさが降りる。

「ようこそリリアンヌさん。来てくださって嬉しいわ」

マクブーレが立ち上がるので私は挨拶を述べた。

「素敵なお茶会にお招きいただき光栄です。こちら、先日気に入っていただいたと聞いたので、新作の紅をお持ちしました。マグブーレ様にお似合いだとよいのですが」

「まあ、楽しみだわ」

今回は一種類。無難に似合いそうな色を持ってきた。

「化粧品というと、フォースローグ王国へ、マクブーレ様がわざわざ買い付けに行かせているという?」

人の話に飛び込んで来たのは、マクブーレの隣に座っていた黒髪の女性。年の頃は私と変わらなそうだ。

「ええ、そうよ。あの化粧品店は、こちらのリリアンヌ・クロフォード子爵令嬢のご実家が支援していらっしゃるのよ。今度アーランデにも支店を出してくださるという話よ」

いやいや、まだ決定じゃないからね。まあ、お父様やる気だし、プラスしかないが。

「お話を持ちかけられまして、父が製造元と今後話して決めたいそうです。あくまでうちは出資しているだけなので。ただ、アーランデ国でそれほど需要があるならば、難しい話ではないかもしれませんね」

「まあ、さすがですわ、マクブーレ様」

ん? 謎の受け答え。まあいいか。

「新作なのですね。わたくしもぜひ試してみたいわ」

今度は別のご令嬢。またもや私と同じくらいの年齢の、栗色の髪の女性。

というか、マクブーレと同年代は他にはおらず、全部で五人の私以外のゲストは、皆同じくらいの年齢に見える。

黒髪二人、金髪一人、栗毛二人。そろそろ紹介が欲しいなぁ。

栗毛の質問に私は微笑むに留める。返事はしない。だって名前すら知らないんだもん。

返答がないのに苛立った栗毛は、むっとした表情で続けた。

「試供品などはないのかしら。試してみたかったのですが」

それでも私は微笑むのみ。周りのご令嬢がまあ、などと囁く。

「リリアンヌさん、彼女たちに渡せる物はないかしら」

マクブーレからの言葉に私は困った表情を作り、小首を傾げる。

「わたくし、今日はマクブーレ様とのお茶会だと思っていたので、お土産はマクブーレ様にしかお持ちしておりませんの。皆様のお名前も存じ上げなくて、申し訳ございません」

一応ね、主要な人物の姿形等はフィニアスから聞き取り調査はしている。お母様とお義姉様、そして私で囲んで、肌の色味や髪色、瞳の色を事細かく聞き出しているのだ。何せそれで持って行く化粧品の色が変わってくるのだから。

「招待状には参加者が書かれていなかったので……。こちらのしきたりの認識不足でした。不勉強で申し訳ございません」

参加メンバーは書いておくものなのだが、アーランデ国では違うのね。勉強不足だったわと言いはしたが、アーランデのことを勉強していないわけがないのですよ! フィニアスが大使になるっていうから、色々なマナーの本なんかは取り寄せて学んでる。城の図書館にもあるので、ラングウェル公爵経由で陛下にお願いして借りて勉強、たくさんした!

「ああ、そうよね。ごめんなさい。リリアンヌさんに招待状をお送りして、今日急に彼女たちが時間が空いているというので、同年代のお嬢さんたちがいる方が話が弾むかと思って……紹介させていただくわ」

そしてようやく席に着くことができた。

化粧品はうやむやにしてやる。

「こちらのお茶はアーランデのエフェソで採れる貴重なお茶ですのよ」

「確か西の方でしたよね。アーランデ国では有名な産地だとか。爽やかな香りですばらしいですね」

「茶菓子に使われているナッツはかなり貴重な物ですね。香りが他の物と違います」

「セネット嬢のご実家が送って来てくれたものを使いました。毎年感謝しておりますのよ」

「フカスのナッツは有名ですものね」

「ヴァクラというお菓子ですね。フィニアスが好きなものだと言っておりました」

ヴァクラ美味しい。層になってて、生地が厚く、ナッツ類の香ばしさが良かった。

「ヴァクラはジュマーナ様のお好きなお茶菓子でもありますね」

突然の爆弾投下。えーと、トゥリエ嬢。この中では一番年下で、私より二つ下。お茶会慣れしてないのかな? ここは私がスルーするしかないか。しないけど。

「ええ、ご本人からも以前聞きました」

どうせ今日は私の糾弾会だろう。たぶんだが、マクブーレ本人が私が責め立てるわけにはいかないので、彼女たちにやらせるつもりだ。

だらだらと前置きの話をしていてもらちがあかないので、こちらから切り込む。

「彼女にはフィニアスの小さい頃の話など、知らないことをたくさん聞かせていただいて、とても感謝しているのです。小さくて可愛い頃のフィニアスの話なんて、なかなか聞く機会がありませんもの」

本当に嬉しそうに言ってみると、途端に彼女たちは不快感をあらわにする。

ふっ……この程度でまだまだですわね。

「そうでしょうね、フィニアスの小さな頃の話は、リリアンヌさんにはなかなか得られない情報よね」

「ええ。昔話大歓迎ですわ」

ふふふふ、おほほほとマクブーレと笑い合う。

そこからは、フィニアスの幼少期からの優秀さと、一緒に過ごしていたジュマーナの話が延々と続いた。

ジュマーナに関してはもう、倒した相手でしかないので何を聞いても問題なしだ。

うぬぼれてるのは重々承知だが、フィニアス、私のこと大好きだからね!!

「やはり、昔から素敵な方だったんですね、フィニアス様」

笑顔で応えると、彼女たちの殺気が増したように思える。少し離れた位置にいるはずの、イライジャのため息が聞こえた気がした。

そしてとうとう我慢できなくなったのは、マクブーレの隣に座る、最初に話に入ってきた黒髪の令嬢、ベルナだ。

「ジュマーナ様とフィニアス様は本当にお似合いでしたのよ!」

「ベルナ」

マクブーレが声を掛けるが彼女は止まらない。

「ですがマクブーレ様! わたくし本当に悔しくて。あんなに愛し合ってた二人が――」

「そこは訂正させていただきます。フィニアスは、彼女のことはまったく眼中になかったそうです。昔もあのときもこれからも」

はっきりと宣言した私の言葉に、ベルナは瞳に怒りをたぎらせる。

もしかしたら、王家の血を引いているのかもしれない。魔力の揺らぎが見えた。

そして、手元にあったティーカップを掴むと、私に向かってその中身を放つ。

「リリアンヌ様!」

「ベルナっ!」

だが、私はまったく無傷。その代わり周囲が悲鳴を上げる。

「え、何」

一番被害を被ったのは私に向かってお茶をかけたベルナだった。

お茶は、私にはかかることなく、反対にその周囲に向かった。

「何が……」

隣にいたマクブーレもその被害に遭ってる。わざわざその前にお茶を追加しておいて一口も飲まずに放置していたもんなぁ。つまり、お茶がたっぷり入っていた。すっかり冷めきっていただけまし。

「以前、腐毒の入った飲み物を浴びたことがあってから、その、不意に水気の物がかかるのが怖くて……魔導具を常に付けているのです。それが作用して反射されました」

怖くないですけど、スカーレット様が、アーランデ国に行くならまた腐毒にやられたら大変だ、絶対に対策をしないとだめだと、猛烈に主張した。そして、ないなら作るとメイナードを巻き込んで大急ぎで作ってくれたのだ。途中失敗して吹っ飛んだりしたけれど。

スカーレット様感謝です。本当にありがとうございます。

私は目を伏せて口元を隠す。

「少し気分が悪くて……申し訳ございませんが、今日はこれで失礼いたします。礼を欠くことをお詫びします」

するとイライジャが椅子を引いてエスコートしてくれた。女性騎士二人に挟まれれる。

「本日のこと、主人より抗議があると思いますのでよろしく」

イライジャがベルナに向かって言っていて、何やらわめいているが、しーらないっ!!

婚約式を前に叩いておいてよかった。婚約式でかけられて、周りの人の高価なドレスにびしゃーっとやってしまうよりずっとよかったと思う。

「最高の立地だったわ」

隣がマクブーレだったのナイス。

「リリアンヌ嬢、すごい、煽るよね……ひやひやする」

「お茶会であんな失礼なことをされるなんて、普通ないですよ! だから、煽ることなんて本来する必要ないし。フィニアスの小さい頃の話聞けて楽しかったのは事実ですね」

「フィニアスの小さい頃の可愛い話なら俺もいっぱい話してあげるから……」

「イライジャと話してるとフィニアスが止めるし、二人で話してたらフィニアスが怒るから」

なかなか聞けないのだ。

「俺はこの後報告でフィニアスから怒られるのか……」

「さすがにそれはないのでは? イライジャが介入できることなんてなかったし」

「本来は、招待されていない人物がいたら怒って帰ってもいいレベルなんだよ。だけど、リリアンヌ嬢めちゃくちゃ楽しそうだったから、帰ろうとも言いだしづらかった」

まあ、婚約式を前にちょっと叩いておかないと、でしょう?