軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

06.浮上した課題

会議の翌日から、さっそく遺跡の調査が行われた。

フィンロイとリットがあちこち調べて回った結果、

植物の浸食などでどうにもならない場所もあったが、

その他の場所は、そう悪くない状態で残っていることが分かった。

一部では地下によく分からない空洞も見つかったものの、

区画分けや下水インフラなど、再利用可能な部分もあるという結論に至る。

そして、再び会議が行われ、古代の街をベースに新しい街を作ることが正式に決まった。

「やった!」

アリスは大喜びした。

地下の壁画に描かれている街並みを思い出し、期待に胸を膨らませる。

――そして、約2週間後。

アリスたちが作った「野菜箱」が、魔の森の中を猛スピードで疾走していた。

先頭にはゴーグルをつけたアリス。

一番後ろには同じくゴーグル姿のテオドール。

真ん中には、移住者である男の子2人とその両親が座っている。

線のように流れる景色をながめながら、子どもたちが大興奮で叫んだ。

「早い! 早いよ!」

「行けー! 行けー!」

楽しそうな子どもたちの横で、両親は石像のように固まっている。

(子どもって、早い乗り物好きだよね)

アリスがそんなことを思っていると、男の子が元気いっぱい声を掛けてきた。

「お姉ちゃん! もっとスピード出ないの!?」

「……っ! しいっ! あんた馬鹿なこと言うんじゃないの!」

母親が必死に制止する声が聞こえてくる。

――そして、走ること1時間ほど。

野菜箱は古城の発着場にゆっくりと到着した。

騎士たちなどたくさんの人々が集まっており、

「ようこそ!」と家族を拍手で迎える。

「すげー! お城だ!」

「でっけえ!」

子どもたちが興奮したように野菜箱から降りると走り出した。

後から親たちがヨロヨロと降りると、そこにいる人々と挨拶を交わす。

アリスは野菜箱から降りると、ぐぐーっと伸びをした。

カスレ村との往復もずいぶん慣れたな、と思う。

そこへ、紙を持ったリットが走り寄ってきた。

「この人たちで最後ですよね」

「うん、人は全部運んだ」

「お疲れ様です。あとは荷物ですか?」

「そうだね……」

リットの質問に答えながら、アリスは考え込んだ。

(問題は、荷物だよね)

実際に移住を始めてから気が付いたのだが、結構大きな荷物が多い。

特に問題なのは、馬や牛などの家畜だ。

大切な資産なのでぜひ持っていきたいと言う村人が多かったのだが、野菜箱で運ぶことは難しい。

(さて、どうするか……)

アリスはリットと別れると、考えながら歩き始めた。

一番良い方法は、『転移魔法陣』で村と古城をつなぐことだ。

あれなら家畜も荷物もすべて運べる。

(でも、場所の指定方法が分かってないんだよね)

魔法陣は対になっており、お互いの“番地”を指定し合っている。

アリスたちが転移した地下遺跡がどこにあるか分からないため、“番地”の指定ができないのだ。

(あの地下遺跡、一体どこにあるんだろう……)

アリスは思案に暮れながら古城に入ると、雑然とした研究室に戻った。

椅子に座り、机に頬杖をつくと、転移陣を完成させる方法について頭を悩ませる。

しばらくして――、

コンコンコン

ノックの音がして、小さな袋を持ったテオドールが入ってきた。

「どうしたんですか、アリスさん。深刻な顔をして」

「うん……ちょっと考えごとしてて」

「どうしたんですか?」

アリスが頬杖をついたまま口を開いた。

「転移陣を作りたいんだけど、転移先の場所が分からないと作れなくてさ」

大体の事情を話すと、テオドールが腕を組んで考え込んだ。

しばらくして、ふと思い付いたように顔を上げる。

「アリスさん、古代地図ありますか?」

「うん、あるけど」

アリスが机の引き出しから古代地図を出すと、テオドールがそれを眺めた。

地図の端、山脈の近くにある四角い箱のような区画を指さす。

「このあたりとか、怪しくないですか?」

「え!」

アリスは目を見張った。

「なんでそう思うの?」

「あの地下、魔の森の気配がしたんですよね」

「……なるほど」

アリスは考え込んだ。

確かに、言われてみれば魔の森の魔力を感じたような気がする。

「それと、上から足音がしたのを覚えていますか?」

「うん、ドラゴンっぽい、ズシンズシンってやつだよね」

「このあたり、よく飛んでますよね、ドラゴン」

なるほど、とアリスは思った。

確かに、ありえる。

アリスが尋ねた。

「ここってさ、行くのにどのくらい時間がかかると思う?」

「そうですね……、強力な魔獣が出ることを考えると、片道3日、というところでしょうか」

アリスは、むう、となった。

近くまで行けば魔力探知が使えると思ったのだが、そう簡単に行ける場所ではなさそうだ。

アリスはテオドールに感謝の目を向けた。

「ありがとう、もう少し考えてみるよ」

「はい、もしも行きたいのならば、声を掛けてください。――それと」

テオドールが思い出したように持っていた袋を差し出した。

「これ、リットさんからです。アリスさんに渡してくれと言われました」

「うん、ありがとう」

テオドールが出て行ったあと、アリスは再び思考の海に沈んだ。

あれやこれやと考えてみるものの、良い考えが浮かばない。

――そして、外がすっかり暗くなったころ。

「はああ」

アリスは盛大なため息をついた。

「駄目だ、何も思いつかない」

アリスは顎を机の上に乗せると、口を尖らせた。

「こういう時に、ビクター所長がいればなあ……」

思想が違う研究者に相談すれば、違う視点が出てくるのになあ、と思う。

そして、顔を上げて椅子の背もたれにもたれかり、彼女の目に机の端に置いてある袋が写った。

テオドールがリットに頼まれて持ってきた袋だ。

アリスは何の気なしにその袋を取り上げた。

中に入っていたのは、リットが前に貸してくれると言っていた女性向けの小説だった。

(へえ、こういう本、初めて見る)

そして、ぺらぺらと本をめくりながら、彼女は、ふと思った。

この本を参考に、考えてみるのはどうだろうか。

この本を書いた作者は、きっとアリスと脳みその構造が違う。

その発想を取り入れれば、新しい何かが生まれるかもしれない。

(……よし、やってみるか)

彼女は椅子に座り直すと、真剣な顔で小説を読み始めた。