軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

01.アリス、カスレ村移住者輸送作戦を開始する

アリスが、ビクトリアから

“カスレ村からの移住者輸送方法の考案”を依頼された、2日後。

夏らしい青空が広がるお昼過ぎ。

古城内の会議室に、5人の人物が集まっていた。

この会議の主催者である、魔法研究者のアリス。

経験豊かな鍛冶師のオヤジ、ガンツ。

木工職人であり建築士でもある、眼鏡の中年男性フィンロイ。

地図や地形のスペシャリスト、リット。

そして、身体強化が使える騎士テオドール。

ガンツ、フィンロイ、リットの3人が、

どこかワクワクした表情を浮かべている。

そんな中、アリスが珍しく真面目な顔で口を開いた。

「それでは、これから“移住者輸送作戦”を始めます」

2日前に、ビクトリアから

「それで……できれば安全性の高い方法がいいと思っているの。ほら、小さい子が多いから、迫力がない方がいいわね」

「できれば秋まで、目立たない方法で」

といった依頼を受け、アリスは色々と考えた。

ビクトリアが条件として出した

・安全性が高い

・目立たない

・秋まで終わらせる

という3つの条件に合う輸送方法と言えば……

(やっぱり転移魔法だよね!)

ワクワクしながら実現に向けて考えてみる。

しかし。

(うーん、ちょっと時間かかるかも……)

まだ分析しきれていないし、

作れたとしても、人を転移させて問題がないか、検証もしなければならない。

秋までに間に合わない可能性もある。

(……となると、やっぱり例の野菜箱か)

例の野菜箱とは、浮遊の魔法で野菜箱を浮かせて移動する方法だ。

カスレ村からロッテを無事に(?)運んできた実績がある。

(実績がある分、アレを使うのが一番確実で早いよね)

渋々転移魔法を諦めて、野菜箱を使うことにする。

しかし、現在の“飛ぶ野菜箱”は、

浮かぶミスリル鞄に野菜箱を縛りつけただけのものだ。

積載量が少ないので、移住には使えない。

(つまり、アレを移住向けに改造しないとダメってことだよね)

――という訳で、“例の野菜箱”を改造するべく、古城内の有識者を集めた、という次第だ。

アリスの会議開始を宣言した後、

フィンロイが、興奮が隠し切れないように、眼鏡がくいっと上げた。

「いやいや、話を聞いた時は、胸が高鳴りましたよ。空飛ぶ乗り物なんて、生きているうちに見れるとは夢にも思いませんでしたからね!」

「おうよ! 人間ってのは長く生きてりゃいいことがあるもんだな!」

「ホントです! 世紀の大発明に自分が関われるなんて!」

ガンツとリットが笑顔で同意する。

どうやら、みんなものすごくやる気らしい。

(こういう時って、いい物できるんだよね!)

アリスはワクワクしながらコホンと咳払いをすると、計画の説明を始めた。

「カスレ村からの移住者は、若者や家族連れを中心に、15人から30人くらいだそうです」

ガンツが、なるほどと腕を組んだ。

「てことは、少なくとも4,5人は運べるようにする必要があるんだな」

「はい」

アリスはうなずいた。

「それと、ビクトリアさんからは『安全性を重視して欲しい』と言われています」

「確かに、乗り物は安全じゃないとダメよね」

リットが、納得したようにうなずく。

――その後、まずは実物を見た方が良いということで、5人は裏庭の倉庫へ向かった。

アリスが雑然とした倉庫の中に入ると、隅に野菜箱が置いてあるのが目に入った。

箱の下には大きめの革鞄がくくりつけられている。

(こうやって改めて見ると、ちょっと不思議な外見だね)

そう思いながら、アリスが「これです」と指を差すと、

リットが首をかしげた。

「これ……本当に浮くんですか?」

(確かに、見ただけじゃ飛ぶなんて信じられないか)

「じゃあ、実際乗って飛んでみましょう」

アリスの言葉に、3人がバッと振り向いた。

目を輝かせて口を開く。

「それはいい! 賛成だ!」

「さっそく試そう!」

どうやら3人とも乗りたくてウズウズしていたらしい。

テオドールが、身体強化を使って野菜箱をひょいと持ち上げると、

5人は城壁の外にある空き地へ向かった。

テオドールが、誰もいない空き地の真ん中にズシンと降ろす。

「じゃあ、最初に誰が乗りますか?」

アリスの言葉に、3人が熱心に話し合い始めた。

じゃんけんにより、まずはフィンロイが乗ることになる。

「いやはや、楽しみだね」

フィンロイがワクワクした様子で野菜箱の中央に座った。

続いて、前方にアリス、後方にテオドールが立ち乗りをする。

この光景を見て、リットが微妙な顔をした。

「……こうして見ると、不思議な光景ですね」

「まあ、冷静に考えたら、大の大人が3人箱に乗ってる訳だからな」

ガンツが、ガハハとおかしそうに笑う。

「じゃあ、いきますよ」

アリスは、床のミスリルに手を置いて魔力を流した。

箱の底のカバンがぼうっと光り、野菜箱がふわりと浮かび上がる。

「……っ!」

フィンロイ、ガンツ、リットが大きく目を見張った。

野菜箱は1メートルくらいのところまで浮くと、ふよふよと停止する。

「す、すごい!」

リットが思わずと言った風に叫んだ。

フィンロイは感動で目を潤ませている。

ガンツが驚愕しながらも、箱の下を覗き込んだ。

「飛んでいる……とは、少し違いそうだな」

「魔力でできた柔らかい地面がある感じですね」

「これって、これ以上高くは飛ばないんですか?」

ワクワクしたようなリットに問われ、アリスは考え込んだ。

「できなくはないけど、バランスが難しいんだよね。このくらいの高さがちょうどいい感じ」

その後、実際に進んでみようという話になり、

アリスがポケットから紙を取り出した。

静かにつぶやく。

【 起動(カンターレ) ・ そよ風:魔法陣(アウラ) 】

紙が輝きを帯び、背後から風が吹いてきた。

同時に、まるで氷の上を滑るように、野菜箱がすうっと前に進み始める。

「おお!!」

フィンロイが喜びの声を上げた。

リットとガンツが目を輝かせながら追い掛けてくる。

アリスは密かにドヤ顔をした。

ここまで素直に驚かれると、なんだかすごいことをしている気持ちになる。