軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

15.アリス、依頼される(釘を刺される)

部屋に運び込まれてからすぐ、ロッテは無事に目を覚ました。

最初は自分がどこにいるの分からず混乱していたようだったが、ビクトリアの介抱ですっかり元気になった。

アリスが見に行くと、ロッテが夢中で肉と野菜のシチューを食べていた。

どうやら肉入りのシチューなんて久々に食べたらしい。

借りた服を着ており、前よりもかなりあか抜けて見える。

ビクトリアから服を譲ってもらえると聞いて、狂喜したらしい。

他にも、古城にいる者たちの年齢や性別を詳しく聞いたらしく

自分と同じくらいの年齢の若者も多いと聞いて、「仲良くなれそう!」と、とても喜んだらしい。

ロッテが感謝の目でアリスを見た。

「ありがとうございます! わたし、ここ好きになれそうです!」

「それは良かったです」

アリスは、ホッとしながら口角を上げた。

気絶した時はどうしようかと思ったが、気に入ってもらったようで良かった。

もう少し休んでいるようにと勧められたものの、本人の強い希望もあり、

彼女は早速古城で働くことになった。

料理が得意だということで、厨房で料理人リンダと一緒に働くことになった。

その後、アリスはロッテを厨房でよく見かけるようになった。

料理の腕も良く、笑顔でよく働くため、リンダにも可愛がられているらしい。

仕事をしている者や、鍛錬をしている騎士たちにお手製の果実水を持っていくなど優しい一面もあり、1週間もすると古城にすっかり馴染んだ。

もともと移住者の受け入れについて身構えていた者たちもいたが、

ロッテの明るさに触れて、笑顔を見せるようになった。

彼女が積極的にコミュニケーションを取ってくれたお陰で、移住が具体的に動き出した格好だ。

そしてロッテが来てから約10日後。

天気の良い午後、研究室にて。

アリスが執務机の上に腰かけながら、熱心に本を読んでいた。

カスレ村から持ってきた本が案外面白く、ここ数日読みふけっている。

「やっぱり魔法書はいいねえ、心が落ち着く」

落ち着いたら、王立図書館にでも行って魔法書に埋もれたいなあ、と思う。

そこへ

コンコンコン

ノックの音が聞こえてきた。

「どうぞ」と言うと、ドアが開いてビクトリアが入ってきた。

雑然とした研究室を見て、思わずといった風に一歩下がる。

アリスは首をかしげた。

ここにビクトリアが来るなんて初めてだ。

「どうぞお入りください」

「お、お邪魔します」

ビクトリアは中に入るとドアを閉めた。

床の書類や本を踏まないように慎重に歩いてくる。

アリスは机から降りた。

本をパタンと閉じて横に置くと尋ねる。

「どうしたんですか?」

「相談があるのです」

ビクトリアによると、移住を本格的に始めたいと考えているらしい。

「ロッテさんがとても気に入ってくれて、この場所なら若い人は絶対に来たがるって言ってくれたの。古城側(こちら側)もロッテさんみたいな人がいる村の人が来るなら、って言う人も多くて」

ビクトリアが、ホッしたように言うと、アリスを感謝の目で見た。

「アリスさんが、村の人に誰かに試しに来るように提案してくれたって聞いたわ。本当にありがとうございます」

ビクトリアに深々と頭を下げられ、アリスは頭を掻いた。

気恥しいが、胸がぽかぽかする。

ちなみに、ロッテによると、カスレ村からは10から15人くらい、

近隣の村も含めると、30人くらいは来るのではないか、ということらしい。

「30人って結構多いですね」

「ええ、独身の若い方か、子どもが小さい若い夫婦が来るんじゃないかっていう話だったわ」

アリスは、なるほどとうなずいた。

「それで、引っ越しの方法を考える必要があるんですね」

「ええ、そうなの」

ビクトリアは微笑むと、控えめに言った。

「それで……できれば安全性の高い方法がいいと思っているの。ほら、小さい子が多いから、迫力がない方がいいわね。あとは――」

ビクトリアが一旦言葉を切ると、真面目な顔になった。

「あとは、目立たないような方法でお願いしたいと思っているわ」

「目立たない?」

アリスが首をかしげると、ビクトリアが声をひそめた。

「ロッテちゃんから聞いたんだけど、1か月くらい前に、王宮から役人が2人来たらしいの」

男性2人で、アリスとテオドールを探していると言っていたらしい。

アリスは眉間にしわを寄せた。

そういえば、泊った家に使った形跡があったことを思い出す。

(そういえば、魔獣が村を襲い始めたのも1か月前って言ってた気がする)

ビクトリアが続けた。

「ロッテちゃんによると、2人は1か月前に帰っていったという話だし、冬前にもう一度来るから、その時には酒を用意しておけと言っていたらしいの。すぐには来ないとは思うけど、慎重にした方がいいと思って」

ビクトリア的には、秋になる前には

移住を終わらせたいと思っているらしい。

「なるほど、なるべく早く、目立たないように、ということですね」

「ええ、あと安全性も忘れないでもらえると嬉しいわ」

ビクトリアがにっこり笑う。

アリスは考え込んだ。

これらの注文を全て叶えなら、一瞬で引っ越しが終わる転移魔法陣を使うのが一番いいと思う。

(急いで分析しないとな)

そんなことを思いながら、アリスはうなずいた。

「はい、わかりました。ちょっと考えてみます」

「お願いするわね。他に何か必要だったら遠慮なく言ってちょうだい。みんなにはその旨伝えてあるから」

ビクトリアが丁寧に礼をして出て行った。

パタンとドアが閉まる。

「さて、どうするか……」

そうつぶやくと、アリスは考えを巡らせ始めた。