軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

02.アリス、とても良い解決策を思いつく

ビクトリアが笑顔で言った。

「それでは、会議をはじめましょう」

リットが、中央の石の台の上に、細かく書き込まれた地図を置いた。

「皆さんに協力してもらって測ったところ、結界は直径1.5kmほどの楕円形でした。王都のムーン地区より少し大きいくらいです」

(へえ、そんなに広いんだ)

アリスが感心した。

ムーン地区といえば、図書館や劇場、広い敷地を誇る王立学園などがある場所だ。

フレッドが感嘆の声を上げた。

「へえ! 予想以上の大きさだな」

「はい、ちょっとした街ならすっぽり入る大きさです」

次に、オーウェンが結界内の状況を説明し始めた。

元庭師に調べてもらったところ、土が肥沃で農業に非常に適しているということが分かったらしい。

木の種類も豊富で、建築に適している木も多く見つかったとのことだった。

話を聞きながら、アリスは空を見上げた。

遠くの方に夕焼け色に染まった山々が見える。

(景色はいいし、食べ物は美味しいし、面白い魔法陣もあるし。本当にいい所だよね、ここ)

昔ここに住んでいた人は、どうしてこの地を去ったんだろうなあ、と思う。

その後、会議はどんどん進んだ。

途中でランプを灯し、また話し合いを再開する。

ビクトリアがため息をついた。

「それにしても、圧倒的に人不足ですわね」

「……人不足?」

首をかしげるアリスに、ビクトリアがうなずいた。

「ええ、物は足りているのですが、人が足りないのです」

どうやら、アリスの“木を乾かす魔法”で、生産効率が飛躍的に向上した半面、

加工する人が不足してしまっている状態らしい。

なるほど、とアリスは腕を組んだ。

開拓というのは、色々とバランスが難しいらしい。

そんなアリスの横で、ビクトリアたちが話し合いを再開させた。

開拓のスピードを遅らせる相談を始める。

(せっかく木がたくさん手に入ってるのに、スピードを遅らせるなんてもったいないよねえ)

アリスは思案に暮れた。

何か良い方法はないかと考える。

そして、

(そうだ!)

彼女はひらめいた。

ものすごくいい方法があるじゃないか!

彼女は深刻な顔で話し合うメンバーに、笑顔で言った。

「それなら、人を増やせばいいんじゃないですか」

「………………え?」

全員が、目をぱちくりさせてアリスを見た。

よく分からない、といった表情で動きを止める。

エマが、つぶやくように尋ねた。

「……ええっと、人を増やすって……どうやって?」

「カスレ村とかから来てもらうんです」

「……カスレ村?」

アリスが「はい」と元気よくうなずいた。

たまに村のことを思い出して、気になってはいたのだ。

村のみんな貧しそうだったし、土地が痩せて作物が育たなくて困っている話をしていた。

ここに来た方が、豊かな暮らしができるに違いない。

そんなアリスの説明を聞いて、その場が沈黙に包まれた。

ビクトリアたちが複雑な顔で考え込む。

(あれ……? いい考えだと思うんだけどな)

アリスが首をひねっていると、

黙って考え込んでいたテオドールが口を開いた。

「カスレ村の人々にとっては、そこまで悪い話ではないと思います。ここに来れば食べるには困らないでしょうし、この国において、貧困地域からの移住は実質不可能ですから」

彼の話では、ほかの領地へ移り住むには、多額の現金を用意しなければならないらしい。

貧困地域でその金額を稼ぐのはほとんど不可能で、

貧しい村人たちは豊かな土地へ移ることができないのだという。

ビクトリアが、息を吐いた。

「ええ、確かにそうですね。ここは豊かな土地ですから」

フレッドが苦笑した。

「でもここ、魔の森の真ん中だぞ?」

エマとリットもうなずいた。

「そうね。戦えない村人が、ここまで来られるとは思えないわ」

「それは絶対にそうだと思います」

アリスは「ふむ」と腕を組んで、片手を顎に添えた。

確かに、魔の森を突っ切ってここまで来るのは大変だった。

(でも……たぶん、何とかなる気がする)

ここで学んだ古代魔法を応用すれば、いくらでも何とかなる気がする。

彼女は口を開いた。

「移動については、わたしの方で何とかします」

「え? 何とかする……?」

「はい、魔法でどうにかできると思います」

アリスの言葉に、ビクトリア他4人が呆気にとられた顔をした。

再びその場が静かになる。

テオドールがアリスに囁いた。

「……もしかして、転移を使おうと思ってます?」

「うん、それもあるけど、他にも何とかする方法がある気がしてる」

ややあって、ビクトリアが我に返ったように息を吐いた。

「……本当に、何とかなると思うのですか?」

「はい、できると思います」

アリスがうなずくと、ビクトリアが黙り込んだ。

ゆっくりと口を開く。

「……わかりました。考えてみたいと思います。いいわよね?」

ビクトリアに視線を向けられ、オーウェンたちが静かにうなずく。

その後、テオドールが、満月後にカスレ村に魔法インクを取りに行くことを伝えた。

ビクトリアが「わかりました、お気をつけてください」と、これを快諾する。

そして、こまごまとした確認を済ませた後、会議は終了となった。

アリスとテオドール、リットの3人が城壁を降りて行ったあと、

ビクトリア、オーウェン、フレッド、エマの4人は、黙って椅子に座った。

空には、星が瞬き始めている。

しばらくして、ビクトリアがため息をついた。

「どうやら、転換期が来ているようね」

「そのようですね」

オーウェンが落ち着いた声で言う。

ビクトリアたちは、8年前にガイゼン王国の王妃によってこの地に追放された。

しばらくは、生きていくのに必死だった。

庭師は懸命に前庭に畑を作り、ガンツやフィンロイは生活のために道具を作り、騎士たちは狩をした。

4年ほど経った頃、ようやく生活が安定した。

食べ物が余るようになり、子どもが増え、結婚する者もあらわれた。

8年目の今は非常に安定しているが、

今後10年、20年先のことを考えると、このままでは難しくなるのは目に見えている。

フレッドが口を開いた。

「移住の件、俺はいいと思いますよ」

エマとオーウェンも同意した。

「そうですね、そういう時期に来ているんだと思います」

「我々の存在が外に漏れる可能性をどう考えるかという問題はありますが、良い切っ掛けなのではないでしょうか」

ビクトリアがため息をつきながら、うなずいた。

「……そうね、私もそう思うわ」

そして、微笑んだ。

「なんだかんだ言って、いい領主様ね。アリスさんって」

「……確かに」

全員がどこか納得したようにうなずく。

その後、4人は住人たちに意見を聞くことを決めると、静かにその場を離れた。