軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

08.だいたい100倍

結界を修復したアリスたちが地下を出ると、外はちょっとした騒ぎになっていた。

魔力がある程度以上ある者は、魔法陣が修復された際の波動を感じたらしい。

「急に、ぶわっと何かが横切った気がする!」

「なんかすごかった!」

口々にそんなことを言い合っている。

そして、とっぷりと日も暮れた、その日の夜。

オレンジ色のランプの光に照らされた一室で、会議が行われた。

メンバーは、アリスとテオドールの他、結界のことを知っているビクトリア、オーウェン、フレッド、エマの4人だ。

まず、ビクトリアが深々と頭を下げた。

「アリスさん、まずはお礼を言わせてください。危ないところを助けていただき、本当にありがとうございます」

オーウェンやエマ、フレッドも頭を下げる。

「わたしも楽しかったです」

アリスが満面の笑みを浮かべた。

色々あったが、未知の魔法陣を分析できて、とても楽しかった。

その後、アリスは魔法陣の状況について説明し始めた。

「あの後色々調べましたが、結界は問題なく修復できました。しばらく見守る必要はありますが、たぶんしばらくは大丈夫だと思います」

「そうですか……」

ビクトリアと他3人が、ホッとしたような顔をする。

「ちなみに、結界の効力は、”害意を持つ人間以外の生物と攻撃を弾く”というものだと思います」

フレッドが意外そうな顔をした。

「それって、害意がある人間は入れるってことか?」

「はい、入れます。ここの結界は魔獣を防ぐことに特化しているみたいです」

そして、アリスが思い出したように言った。

「それと、1つ朗報があります」

「朗報?」

5人が不思議そうな顔をする。

アリスが笑顔で言った。

「実は、結界の範囲がかなり広くなったことが分かったんです!」

「え……?」

ビクトリアが目を瞬かせた。

「ええっと、広くなった、とは……?」

「はい、結界で守られる範囲が広がった、ということです」

これは魔法陣を修復したときに分かったことなのだが、

結界は、もともと今よりずっと大きかったらしい。

年月を経て小さくなっていたが、修復されて元の大きさに戻った格好だ。

エマが尋ねた。

「広がった……って、どのくらい広がったの?」

「そうですね……」

アリスが腕を組んで考え込んだ。

「まあ、あの魔力の感じからすると、少なくとも100倍以上にはなったと思います」

「は!? 100倍!?」

フレッドが、思わずといった風にガタンと立ち上がった。

その場の全員が、目を見開いて固まる。

アリスがコクリとうなずいた。

「はい、もともと、それくらいの大きさだったのだと思います。なので、元に戻った、という言い方が正しいのかもしれません」

「そうですか……それにしても、100倍……ですか」

ビクトリアが肝を潰したようにつぶやく。

「……ちなみに、この結界は、どのくらいの期間もつのでしょうか」

アリスが思案した。

「そうですね……とりあえず、3カ月監視して、それで何もなければ、あと100年くらいはもつと思います」

「え、100年?」

「はい、そういう風に作られているので」

場がシンと静まり返った。

『100倍に広がった結界が100年は保たれる』

という予想外過ぎる話に、全員が彫像のように固まっている。

(……まあ、驚くよねえ)

アリスは、うんうん、とうなずいた。

これだけ広範囲をカバーできることもびっくりだが、

100年も魔力供給なしで動く魔法陣なんて、今までの魔法の常識からは考えられない代物だ。

(これに比べたら、わたしが作った『広範囲結界魔法』なんて、おもちゃみたいなもんだよね)

今は亡き義父ビクターの顔を思い出し、見せたかったなあ、と思う。

その後、ようやくアリス以外5人が正気に戻り、今後についての話し合いを始めた。

アリスは、これから3カ月間結界を監視することになり、

他の人々は森に入って、結界が広がった影響を調べることになる。

「もしも大丈夫なら、子どもたちを外で遊ばせられるかもしれないな」

「そうなったらいいわね!」

そんな話で盛り上がる。

そして、話し合いが終わり、

アリスが「じゃあ、わたしは魔法陣の監視へ」と席を立とうとした、そのとき。

「――アリスさん」

ビクトリアが、改まったように口を開いた。

その澄んだ瞳をアリスに向ける。

「お話があるのですが、よろしいでしょうか」