軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

13.ビクトリアの事情

ビクトリアが躊躇うように黙った。

横に座ったオーウェンと視線を合わせると、決心したように口を開く。

「助けていただくのに隠し事をするのは失礼にあたりますので、ご迷惑にならない範囲で、我々の話をさせてください」

ビクトリアによると、ここにいる人々は、元々ガイゼン王国の王都で暮らしていたらしい。

「でも、8年前、事件が起きました」

その結果、彼らは急遽、魔の森の中にあるこの古城に来なければならなくなったという。

「”冒険者バッツが、ヴァルモア領の森の中で、療養に相応しい城を発見した。そこで1年間療養せよ”という命令が下ったのです」

この話を聞いて、アリスは思った。

なんだか自分の時と似ている気がする。

その後、ビクトリアは王都を離れてヴァルモア領に向かった。

城の運営に必要な料理人や使用人なども同行しており、全員でそのまま森の中に入ったという。

ビクトリアはため息をついた。

「森に入ってからは、思い出したくないほどの苦難の連続でした」

「逃げることはできなかったのですか?」

「ええ、ほとんどの者が人質を取られていましたから」

そして、もうダメだというギリギリの状態で、この古城を発見したという。

「とりあえず安全だと分かり、我々はここで生活を始めました。予定では、ここで何とか命令通り1年過ごして王都に戻ろうと思っていました」

しかし、いざ帰ろうとすると、問題が起こった。

ここに来るまでの行程があまりにも過酷だったため、森がトラウマになってしまった者が多くいたのだ。

また、ドラゴンの出没周期も分かっていなかったことから、旅に出るのが危険だと思われた。

「そして、気が付けば8年経っていた、という次第です」

ビクトリアが話し終わり、部屋が静まり返った。

当時のことを思い出しているのか、オーウェンの表情もどこか険しい。

(……なるほど、そういうことだったのね)

アリスは驚くと同時に納得した。

魔の森の真ん中にある不思議な集落に、超一流の鍛冶師ガンツ。

素晴らしい腕前を持つ料理人に、魔剣を所持するやたら強い騎士っぽい人々。

ずっと不思議だと思っていたが、今の話を聞けば合点がいく。

テオドールも同じように思っているようで、納得したような顔をしている。

そんな2人に、ビクトリアが微笑んだ。

「簡単ではありますが、私たちの事情はこんな感じです」

そして、彼女は遠慮がちに口を開いた。

「……もしも差し支えなければ、お2人の事情もお話しいただけないでしょうか」

手練れの鍛冶師ガンツが舌を巻く凄腕の魔法研究者アリスと、

おかしいほど強い魔剣持ちのテオドール。

謎の組み合わせの2人が、なぜ魔の森にいるのか不思議だったらしい。

アリスはチラリとテオドールを見た。

軽くうなずかれて、しゃべっていいんだなと解釈する。

「ええっと、実は、魔法の開発をしたら、褒美にヴァルモア領をやるから治めろ、って放り出されたんです」

ビクトリアが目を瞬かせた。

「……ということは、アリスさんはヴァルモア領の領主でいらっしゃるのですか?」

「はい」とアリスはうなずいた。

「一応そうみたいです。あと、テオドールは完全にもらい事故です」

「もらい事故……?」

ビクトリアとオーウェンが不思議そうな顔をする。

アリスの視界の端で、テオドールが苦笑いした。