軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

085 アリスと訓練

学園のグラウンド。

「せあっ!」

オレは相手の虚を突くように縮地で距離を詰め、右の拳を撃ち出す。

しかし、相手の少年は読んでいたとばかりにオレの拳を紙一重で避けた。そして、反撃がくる。

「ちっ!」

少年の拳を左腕で受けて、その勢いを利用してバックステップを踏んだ。

しかし、少年が今こそ好機とばかりにオレに突っ込んでくる。

オレはそれを待っていた。

「はっ!」

地面に着いたばかりの左足を軸にしたハイキック!

少年は両手をクロスさせてオレのハイキックを受け止める。少年の視界が自らの腕で閉ざされた今こそが好機だ!

オレはそのまま前に倒れ込むようにして前進する。ハイキックした右足が地面に着くと同時に繰り出されるのは、必殺の意志を持った右ストレートだ。

「ぐほっ!?」

オレ渾身の右ストレートは、少年の鳩尾にクリーンヒットし、少年がよろよろと下がって膝を付いた。

「そこまで!」

教師の言葉が太陽の照り付けるグラウンドに響き、試合が終了する。

今は授業中。学園の拳闘士たちで試合をしている真っ最中だ。

試合では、スキルの使用を禁じられている。たぶん、格闘センスを磨くためだろう。基本が大事ってやつだね。なんだかマチューとの訓練を思い出した。

マチュー、元気にしてるかな?

「いてて、ジルベールくんは強いな。さすが新人戦の優勝者だ」

「オレも気が抜けませんでした。先輩の圧に負けないように必死でしたよ」

試合後に試合相手だった少年と握手して別れる。

ダンジョンに潜って肉体レベルが上がっているからか、先輩相手でも負けることはない。だけど、格闘術の技術レベルでは負けている。今はまだ高性能の肉体でゴリ押して勝利している感じだ。技の勝利じゃない。

どこかでみっちり格闘術を鍛えたいなぁ。オレもダンジョンに潜った時、スキルを使って技術レベルを育ててはいるけど、基本の練習もしないとな。

またマチューに教わった通り、型稽古でもしてみるか?

そうしよう。

その日の放課後。オレは一人で型稽古でもしようと思ったのだが、なぜかアリスが付いてきた。

「お邪魔ですか?」

「いや、そうじゃないけど、見ていてもつまらないと思うよ?」

「そんなことありませんよ」

「そう?」

「はい!」

というわけで、オレはアリスに見守られながら型稽古をしたのだが……。

「せいっ! せいっ!」

なにが面白いのか、アリスはニコニコしながら型稽古をするオレを見ていた。

なんだかオレだけ見られているのは恥ずかしいな。

そうだ!

「アリス、アリスも一緒に棒術の訓練しよう」

「棒術ですか?」

アリスがコテンと首をかしげる。アリスかわいいよアリス。

アリスは後衛の錬金術師だけど、敵に接近された時のために棒術を習っている。なにもオレだけ訓練する必要は無い。アリスも訓練すればいいんだ。その方が有意義な時間の使い方と言えるだろう。

その後、杖を持ってきたアリスと一緒に模擬戦をした。

模擬戦と言っても、超スローでやる演武みたいな感じだ。お互いゆっくり動きながら、オレはアリスを攻撃して、アリスはオレの攻撃をさばいていく。

ゆっくり動くから筋力の差も無視できるし、なにより次の動きを考えながら動けるので、今まで習ったことを実践して使うのに丁度いい。

まぁ、傍から見たら間抜けかもしれないが、これが意外と練習になるんだ。

ゆっくりとした動きでも、真剣にやるとじんわり汗ばんでくる。

汗の玉が浮いたアリスは、それはそれはいつもとは違う魅力に溢れていた。

「今日はこのあたりにしとこうか」

「はい!」

夕暮れももう終わりという時間までアリスと訓練した。もうすぐ夕食の時間だから、今日はここまでだ。少し冷たくなった風が火照った体に気持ちがいい。

「暑い……」

胸元をパタパタと扇ぐアリス。その顔は少しだけ上気していた。そんなアリスもかわいらしい。実技の授業はアリスと別々だから、貴重なアリスの姿だ。スクショしたい!

そういえば、最近はアリスと二人っきりの時間が少なかったな。

今思えば、それでアリスがオレの訓練に付いて来たのかもしれない。

まぁ、その、なんだ? オレとアリスは婚約者同士なわけだし、少しくらいイチャイチャしてもいいよね?

「アリス……」

「ッ!?」

アリスに近づこうとしたら、まるでオレを避けるようにアリスが飛び退いた。

「……ぇ?」

ななななななななんで!? オレ、アリスに嫌われちゃった!?

「あ、アリス……?」

自分でも信じられないくらい情けない声が漏れた。

アリスに嫌われたら、オレはもう生きていけない!?

「ぁ……。その、違います! 汗! 今、汗をかいているから!」

汗の匂いを気にしてるのかな?

「オレは気にしないよ? いい匂いだと思う」

「ひゃー! ななななんてこと言うんですか! 汗の臭いなんて嗅がないでください!」

「よいではないかー、よいではないかー」

「ひゃー!」

突如始まったじゃれるような追いかけっこの中、オレはアリスに嫌われたわけではないという幸運を噛み締めていた。

その後?

もちろんアリスを捕まえてクンクンしたよ?