軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

084 やきもちと遊戯

学園。教室の中。やっと授業が終わり、生徒たちがガヤガヤと騒ぎ出していた。

「ったく、ダリーな……」

隣の席に突っ伏したコレットが不意に零す。綺麗な赤い髪のポニーテールも元気なさそうにうなだれていた。

コレットは地頭はいいんだけど、座学に対して苦手意識を持っているのか、いつもダルそうにしている。

「ジルもそう思うだろ?」

コレットが突っ伏したままオレに顔を向けてきた。その顔はなんだか眠そうだ。

「まぁ、否定はしない」

「これなら学園休んでダンジョンでも――――」

その瞬間、オレはコレットの脳天に手刀を振り下ろした。

「いって!?」

不満そうにオレを見るコレット。オレは周囲の人間に聞こえないようにコレットの耳に顔を寄せて囁く。

「コレット、ダンジョンに潜ってるのは内緒だって言っただろ?」

「ふにゅ!? わかった! わかったから息を吹きかけるな!」

コレットがガバッと体を起こして、耳を隠すように手で覆っていた。

ひょっとして、コレットも耳が弱い民か?

なんとなくコレットに親近感が湧いた。

「ジル様……」

その時、背中をツンツンとつつかれたのを感じた。

「ん?」

振り返ると、思いのほか近くにアリスの顔があった。ちょっと眉を吊り上げて、アリスには珍しく怒ったような表情だ。そんな表情もかわいらしいからズルい。スクショしたい。ぷんぷんアリスってフォルダーを作って、何百枚と保存したい!

「仲がいいのはよろしいですけど、ジル様とコレットは近すぎます」

「そうかな?」

「はい。絶対に近いです」

もしかして、アリスがやきもち焼いてる?

アリスにやきもちを焼いてもらえるなんて、オレもまだまだ捨てたもんじゃないな。まだまだがんばれそうだ。

「べ、べつに近くねーし!」

「コレットは黙っててください」

コレットが反論するがピシャリと切り捨てられてしまった。

「アリス、ごめんよ。オレの婚約者はアリスだけだ。もうアリスを不安にさせるようなことはしないよ」

「……本当ですか?」

「本当さ」

「なら、許してあげます」

ちょっと顔を赤らめてたアリスがコクリと頷いた。

そうだよな。オレの婚約者はアリスなんだ。アリスをないがしろにするような行為は慎もう。オレの一番大切な人はアリスなのだから。

「ジル様、ごきげんよう」

「じゃあなー」

「ああ、また明日」

アリスとコレットが、連れ立って教室を出ていく。今日はこれからプチお茶会があるらしい。

プチお茶会とは、放課後から集まって開催される小規模なお茶会のことみたいだ。なんだか女の子はお茶会ばかりでたいへんだね。まぁ、最近はアリスもコレットもお茶会には慣れてきたみたいだけどさ。

アリスもコレットも社交をがんばっているし、オレもたまには遊戯室に顔を出すかな。

この世界の貴族は、女はお茶会、男はボードゲームをしながら親交を深める。オレはあまり頭を使うボードゲームは得意じゃないけど、そうも言っていられないからな。

「よお、コルネリウス。よかったら一緒に遊戯室に行かないか?」

「ジル? ジルが遊戯室に行くなんて珍しいね」

「まあな」

「いいよ。じゃあ、一緒に行こうか」

オレはコルネリウスと一緒に遊戯室へと向かう。

遊戯室には、一年生から三年生までの男子生徒がボードゲームに興じていた。

遊戯室と言っても、そこは貴族の学園だからね。まるで高級なホテルの一室のような落ち着いた雰囲気の大きな部屋だ。バーも備え付けられており、お酒を含むドリンクや、軽食なども用意されている。

もうなんていうか、いたせりつくせりだね。サービスが行き届いているよ。

「ゲームの前に少し食べてもいいかな? お腹へっちゃって」

少し恥ずかしそうにお腹を押さえて言うヒゲ面の大男、コルネリウス。なんだか少しかわいらしい。

「いいよ。それじゃあ少し食べようか」

「うん!」

コルネリウスと一緒にバーカウンターに行くと、品のいい老執事が注文を聞いてくれる。

「オレはレモネードと、この卵のサンドイッチを頼む」

「ワシは……エールとフライドチキン、あとポテトとそれからエビフライも。あとは……」

どこが少しだと思わなくもないが、コルネリウスは体が大きいからね。たくさん食べるのだ。ドワーフは筋肉モリモリのマッチョマンなので、代謝がすごいのだろう。

その後、軽食と呼ぶにはかなりの量を食べたコルネリウスと一緒にボードゲームに参加し、同級生や先輩たちと交流を持った。

やっぱりボードゲームという共通の話題があると、話が進むね。

最初はゲームしながら社交? と不思議に思ったものだけど、やってみるとその合理性がわかる。

「また負けた……」

「ジルベールは顔に出やすいからな。そんなことでは腹芸はできないぞ?」

今日知り合った先輩に笑われながら、オレは何人もの貴族と交流を持ったのだった。

幸いにも、新人戦を優勝したオレの名は売れている。黙っていてもゲームに誘われるほど人気なのだ。