軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

050 アリスVSエグランティーヌ

「ジル様、おめでとうございます! すごかったです!」

「おつかれさん。やるじゃねえか!」

選手控室に戻る途中、アリスとコレットがオレの勝利を祝ってくれた。

入場口からオレの試合を見てくれていたようだ。

「ありがとう、二人とも。次はアリスだね。応援しているよ」

「はい!」

「次、アリス・エロー。入場してください」

「いってきますね」

「ああ。がんばれ」

「おう! がんばれよー」

アリスがオレたちに背を向けて歩き出す。アリスの相手はエグランティーヌだ。きっと厳しい戦いになるだろう。

それでもオレはアリスの勝利を願っていた。

ジル様、コレットと別れて、わたくし、アリス・エローは闘技場の上に上がります。

わたくしのお相手はエグランティーヌ様。この国のお姫様にして、ジル様の元婚約者で、今はあのアンベール様の婚約者です。

ジル様と婚約していたという部分にモヤモヤするのを感じますけど、今はわたくしがジル様の婚約者ですもの。気持ちで負けてはいけませんよ、アリス。

大きな歓声が沸き上がって、わたくしの前方からエグランティーヌ様が姿を現しました。盾と剣を持ったエグランティーヌ様のお姿は、とても凛々しいものでした。

それだけじゃありません。だんだんとエグランティーヌ様のお姿がだんだんと近づいてくると、そのハッとするような美しさに気が付きます。

お綺麗な方……。

「あなたがアリス・エローさんね?」

女のわたくしでも見惚れてしまうような美しさに見惚れていると、エグランティーヌ様に声をかけられました。

「はい……」

気持ちでは負けないつもりでしたけど、やっぱりその美しさと王族の威光に頭を垂れてしまいそうになります。

「わたくしはあなたが羨ましい……」

「え……っ!?」

お姫様であるエグランティーヌ様が、ただの男爵家の娘であるわたくしのことが羨ましい?

冗談かと思いましたけど、エグランティーヌ様は今にも泣きそうな、悲しそうな笑みを浮かべていました。

「そ、それってどういう……?」

「さあ。審判の方、始めてください」

「はっ! 両者準備はよろしいですか?」

エグランティーヌ様は、わたくしの質問には答えてくださいませんでした。

ですが、女の勘とでもいうべきものが、わたくしに一つの答えを知らせます。

木っ端貴族の娘であるわたくしにあって、エグランティーヌ様にないもの。それはジル様に他なりません。

まさか、エグランティーヌ様はまだジル様のことを想って……!?

で、ですが、これもわたくしの動揺を狙ったエグランティーヌ様の話術という可能性も……。しかし、先ほど見た泣きそうな笑みを浮かべたエグランティーヌ様はどう見ても嘘には思えませんでした。

「うーん……」

闘技場の上では、アリスの首筋に剣を当てたエグランティーヌの姿があった。アリスの負けだ。

元々、攻撃力よりも魔法や状態異常に高い耐性を誇る【聖騎士】のエグランティーヌの相手は難しいとは思っていたが、今回のアリスはいつになく精彩を欠いて、まるでいいところがなく負けてしまった。

やっぱりお姫様の相手はアリスには荷が重かったかな。緊張しちゃうよね。

でも、【錬金術師】という直接的な攻撃能力を持たないギフトで新人戦ベスト8だ。これは誇ってもいいことだろう。

「すみません……。負けてしまいました……」

エグランティーヌへの歓声に沸く中、トボトボと帰ってきたアリス。そんなに悔しかったのか、彼女は泣きそうな顔を浮かべていた。

「アリス、よくがんばったね。新人戦ベスト8だよ。これはすごいことだ」

「そうそう。クヨクヨすんなよ、アリス。負けを認めない限り、それは負けじゃねえ。勝ちの途中だ!」

「二人とも、ありがとう……」

アリスが笑顔を見せるが、その笑みはとても儚く、今にも消えてしまいそうだった。

「アリス、なにかあったのか?」

「いいえ、なんでもないんです……。ただちょっと、疲れてしまったのかもしれません……」

「そうか? 念のため、救護室でも行くか?」

「そこまでは……。ただ少しだけ、こうさせてください」

アリスがオレの胸の中へと倒れ込んできた。

「大丈夫か?」

「はい……」

それからしばらくして、アリスはオレから離れるといつもの笑みを浮かべてみせた。もう大丈夫なんだろうか?

「次、コレット。入場してください」

「おう! それじゃあ行ってくるわ!」

「相手は弓使いだ。気を付けろよ」

「コレット、がんばってね」

「おう!」

コレットが意気揚々と闘技場に出ていく。歓声に両手を振って応えているあたり、緊張とかはしていないのだろうが……。大丈夫だろうか?

「ジル様、コレットは大丈夫でしょうか?」

アリスも同じことを思ったのか、オレを見上げてきた。

「うーん……。今回は条件が悪いからなぁ……」

「条件、ですか?」

「ああ。今回は制服での戦闘だろ? いついかなる時も戦いの備えをって教えらしいけど、防具が着けられない中で、弓の攻撃力は脅威だ……。避けられればいいんだけど、コレットはイノシシだからなぁ……」

オレの予想は的中し、相手に突撃したコレットは、たった一矢を受けて気絶して負けになってしまった。

しかも、転び方が悪かったのか、白いパンツが観衆に丸見えだ。

見ているこっちが恥ずかしいことこの上ない……。