軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

049 対エヴプラクシア戦

「まさか、あなたが残るなんてね」

オレの目の前には小柄な黒髪のエルフ少女がこちらを睨みつけるような鋭い目でオレを見ていた。

オレの次の対戦相手であるエヴプラクシア・マカロヴァだ。

「魔法使い殺しなんて呼ばれていい気になっているのでしょうけど、わたくしは必ずあなたの力のカラクリを暴いて突破してみせるわ」

エヴプラクシアが決意を秘めた瞳でオレを指差して宣戦布告した。

エヴプラクシアは【賢者】のギフトを持つ魔法使いだからな。魔法使い殺しなんて呼ばれているオレが気に入らないのだろう。

だが……。現実ってのはいつだって非情だ。

「残念だけど、お前はオレに勝てないよ」

「なんですって! いいわ。その生意気な態度も矯正してあげる。まったく、姫様もなんでこんな男を……」

エヴプラクシアのセリフの後半がブツブツと呟いて聞こえなかった。

「なんだって?」

「なんでもないわ! 審判、早く始めてちょうだい」

「では、両者とも準備はいいですか?」

「ああ」

「かまわないわ」

「では、始め!」

「消えなさい!」

試合開始の合図と共にエヴプラクシアの魔法がいくつも発動する。

ライトニングスピア、アイスジャベリン、ストーンジャベリンの三種だ。

中級魔法である槍系魔法の三種同時展開。エヴプラクシアの高い魔法能力がわかるね。

まぁ、すべては意味がないけど。

「くっ!?」

収納空間の虚空に消えていった魔法を見て、エヴプラクシアが苦々しげな表情を浮かべる。

このまま距離を詰めて一撃で気絶させることもできるけど……。今回は魔法の収集に力を入れよう。

「これで終わり?」

エヴプラクシアを挑発すると、彼女はオレの言葉を否定するように腕を振った。

「まだよ!」

一瞬、空間が歪んだような気がした。眼前に収納空間を展開すると、なにかが収納できた感覚があった。たぶん、ウィンドカッターの魔法だろう。風系の魔法は目視できないからゲームの時よりもかなり凶悪な性能だな。収納できてラッキーだ。

「これで終わりよ!」

オレの頭上でゴロゴロと轟くような音がする。

まさかッ!?

オレは急いで自分の体を包むように収納空間を展開した。

収納空間に包まれたオレは、音も光も感知できなかった。外の様子が一切わからない。だが、なにかを収納していることはMPの減りでわかる。

オレの勘違いじゃなければ、エヴプラクシアの使った魔法はジャッジメントだ。無数の雷を降らせる全体魔法で、回避を許さない上級魔法だ。

エヴプラクシアの得意魔法の一つだね。ゲームでの事前情報が無ければ、この魔法でやられていたかもしれない。

やがて収納にかかるMP消費がなくなったので収納空間を解除すると、もはや気力だけで立っているようなフラフラのエヴプラクシアの姿があった。

「無傷だなんてね……」

エヴプラクシアは悔しそうにそう呟くと、パタリと倒れた。MP切れによる昏倒だろう。

「しょ、勝者、ジルベール・フォートレル男爵!」

どよめきを含む歓声の中、オレは手を上げて応えると、さっさと円形闘技場を後にした。

「まさか、エヴプラクシア嬢まで撃退するとはね……」

私、エドゥアール・パラディールは感嘆の溜息を吐いた。

あの強者至上主義のムノー侯爵家から追い出された弱者と聞いていたが……。とんでもない。例え物理攻撃に不得手だったとしても、魔法を完全に防げるあの能力はいくらでも使いどころがある。

だが、ムノー侯爵家から追い出されているのは確かだ。なにか致命的な弱点でもあるのか?

いや、仮にそうだとしてもそれを補える者を付けてやればいいだけだ。

そのくらいムノー侯爵もわかるはずだが……。

「わからんな……」

「左様ですね、殿下。私にもあのカラクリは解けませんでした」

私の独り言に、クラスメイト兼、私のお目付け役であるウスターシュが難しい顔をして答えた。

「ウスターシュ、ジルベールのギフトは何だったか?」

「はっ、ムノー侯爵家からの情報では【収納】らしいですが……」

ウスターシュが首をひねりながら言った。

【収納】のギフトか。たしかに聞いたこともないから珍しいギフトなのだろうが、名前を聞いただけではとても戦闘で役立つとは思えんな。

「魔法が消えたのは、収納したからとでもいうのか? そんな非常識なギフトがあってもいいのか?」

「しかし殿下、現に消えていますので……」

「わかっている……。だが……」

【収納】とは何だ? 魔法だけではなく物理攻撃も収納できるのか? そして、収納したものはどうなる? また出すこともできるのか?

疑問ばかりが浮かぶ。

だが――――。

「欲しいな……」

仮に魔法を消すことしかできないとしても、魔法に対する絶対的な防御というのは十分過ぎるほどに魅力的だ。例え欠陥があったとしても、補ってやればいい。

「欲しい……」

私の呟きを聞いたウスターシュが、やれやれまただと言いたげに首を横に振っていた。