軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

031 婚約指輪

「アリス、ちょっといいかな?」

アリスのアトリエを訪ねると、むあっとした熱気と、濃い草の臭いが充満していた。

そんな中、アリスはまるで魔女が怪しい薬を作っているかのように大釜をかき混ぜていた。

「ジル様、おはようございます」

「ああ。おはよう、アリス。ところで何を作っているの?」

「中級ポーションです」

早いな。もうアリスは中級ポーションまで作れるようになったのか。さすが【錬金術師】のギフト持ちだ。

アリスが踏み台を降りて、大釜の前からオレの前にトコトコとやってきた。そして、幼い子がだっこをせがむようにオレに向けて手を伸ばす。

「えへへ……」

オレはアリスを緩く抱きしめると、アリスは笑みを零した。

「もういいの? 手が離せないようなら出直すけど?」

「大丈夫ですよ。もう完成しました」

「ならいいけど」

アリスの体温をじんわりと感じる。なんでこんなに愛おしいんだろう。オレはアリスと想いが通じた奇跡を神に感謝する。

「あ、そうだ」

「どうかしましたか?」

「実はアリスに渡したいものがあって……」

ゴソゴソとジャケットの左のポケットから取り出したのは、小さな箱だ。

「これをわたくしに?」

「ああ」

オレはその場にひざまずくと、アリスに向かって箱を開ける。

「ッ!?」

アリスが口に手を当てて驚いている。アリスからは、箱の中に小さなシルバーの指輪が見えているはずだ。

「ほら、オレたちの場合、婚約式もなにもなかっただろ? だから、指輪の交換もなにもしていなかったから、せめて婚約指輪だけでもと思って……。よかったら受け取ってくれないか?」

アリスは頬を紅潮させて何度も頷いた。

「ジル、ありがとうございます……!」

「じゃあ、アリス。左手を出して」

「はい……」

オレは小さな箱の中から指輪を取り出すと、アリスの小さな左手を取った。そして、折れてしまいそうなほど細いアリスの左手の薬指へと指輪を填めていく。

事前の調査通りに、指輪はピッタリとアリスの薬指へと填まった。

なんだか、アリスが自分だけのものになったような、そんないけない感動すら覚えてしまった。

アリスは自分の左手に填まった指輪を撫でながら、オレに今にも泣きそうな笑顔を向ける。

「ありがとうございます、ジル……」

オレは立ち上がると、アリスの耳元に口を近づけた。

「本番は大人になってからね」

「ッ!?」

アリスの顔がもっと赤くなったのを確認して、オレは心の中でガッツポーズを取る。オレも耳が弱点だけど、アリスも耳が弱いのだ。

「で、でも、わたくしばかり貰っては……。本当は指輪の交換ですのに……」

アリスがしゅんとしてしまった。そんな顔もかわいらしい。ヤバいな。オレ、どんどんアリスのことが好きになってる。

「心配しないで、アリス」

オレは今度はジャケットの右のポケットからまた小さい箱を取り出した。

「実は自分の分も準備してたんだ」

「ジル……。わたくし、なんの準備もしてなくて……。ごめんなさい……」

「いいんだよ、アリス。アリスじゃ用意するのは難しいのはわかってたから」

アリスは今、ムノー侯爵家に居候している身だ。当然、自由にできるお金なんてないことは知っている。

「アリスが填めてくれる?」

「はい……!」

アリスはオレから小箱を受け取ると、中の指輪を取り出した。

「その、失礼します……」

そう言って、アリスはオレの左手の薬指に指輪を填めてくれた。

「アリス、これでオレたちは誰に恥じるでもない婚約者同士だ。アリスは後悔してない?」

「してません! わたくしは、ジルの婚約者です! ジルはどうですか?」

「後悔なんてあるわけないよ。アリスはオレの、オレだけのお姫様だ」

「ジル!」

「アリス……」

オレたちはまたお互いに抱きしめ合っていた。なんだか最近アリスと抱き合ってばっかりだな。本当は一緒になりたいけど、それはさすがにまだ早いよね。

「ねえ、ジル……」

「ん?」

アリスが顔を赤らめてオレを見上げていた。そして、その空色の瞳を閉じる。アリスがなにを求めているのか、オレにはすぐにわかった。

「アリス……。愛しているよ」

「ん……」

いやぁー。あのあともアリスといちゃらぶしてしまった。

アリスって耳を触るとかわいい反応するんだ。「ひゃんっ」とか言って顔を赤くするんだよ? かわいすぎるだろ。

でも、あんまり触ると、アリスもオレの耳を触ってくるからなぁ。注意が必要だ。

他にも、アリスはスキンシップが大好きなことがわかった。アリスの頬を触ると、まるで子猫のようにオレの手に頬を擦りつけてくるんだ。それがもうかわいいのなんの……! アリスは魔性の少女だね! まいっちゃうよ。

あとは、アリスは実はえっちな子なのかもしれない。

「ジル様が触りたいなら……どうぞ……」

そう言って、自分の胸を触らせようとするんだ。さすがにまだ早いよね。オレだって本当は触りたいよ? でも、鋼の意思で我慢した。

ふぅ……。アリス、恐ろしい子だ……!