作品タイトル不明
132 デートに行こうか!
パスカルを雇ってスーパー銭湯事業が一気に本格的に始動し始めた。
今はパスカルが僕の描いた完成図を基に施設建設のための資材を集めているところだ。工事もそろそろ始まる予定である。
パスカルはすごい。仕事がめちゃくちゃできるんだ。オレが完成予想図を用意したら、すぐに設計図を用意して、必要な資材や職人の数を計算、すぐにそれらを揃えてくれた。やっぱりパスカルは信用できるね!
そして、オレは空いた時間を使って、今日はアリスとのデートである。
朝。
オレは持っている中で一番いい服に着替えると、髪を整えて部屋を出る。
「いってらっしゃいませ」
「ああ、行ってくる」
『優しい止まり木』の店主に手をあげて応えると、オレは宿を飛び出した。
「焼き立てのパンはいかがかねー!」
「じっくりコトコト煮込んだポトフだぜ! 味が染み込んで最高だぞ!」
「王都名物、ソーセージマルメターノを食ってきな!」
「新鮮なサラダはいかがかしらー? 今日採れたてよー!」
「乾パン! 乾パンはどうだ? 冒険のお供にはこいつで決まりだ!」
「それだったら干し肉よ! こいつがなけりゃ旅は始まらねえ!」
途端に聞こえてくるのは、屋台の店主たちの客を呼び込む声だ。威勢のいい声が道端に響いている。
「ソーセージマルメターノをくれ」
「あいよ!」
オレは屋台で適当に食事を買うと、軽く朝食を済ませる。早くアリスに会いたいからね。
でも、あんまり早く行っても迷惑だろうし……。いや、馬車の手配などもあるし、早めに行くか。
ルンルン気分で肩で風を切って歩いていく。もうスキップしてしまいそうな勢いだ。
オレが常宿にしている『優しい止まり木』は、ちょうど学院とダンジョンの中間地点に存在する。どちらにもアクセスが容易というのが利点だ。
王都の大通りを歩いていると、なにやら物騒な連中とすれ違った。一見、冒険者のような一団だが、冒険者パーティとしては人数が多い。二十人くらいいるだろうか。しかも、みんな今にも道行く人々を襲いそうなほど殺気立っている。王都の人々も怖がって彼らを避けているみたいだ。
「こっちで合ってるんだろうな?」
「へい。こっちでさあ」
「ったく、ボスはいい機会と言っていたが、素直に応じてくれるかねえ」
「この人数だ。嫌でも頷くしかねえさ」
「ちげえねえ!」
一団とすれ違う時、そんな会話が聞こえてきた。もしかして、どこかの誰かを脅そうとしているのだろうか?
「あんな連中に目を付けられるなんて……。運のない奴もいたものだ」
絶対にまともじゃない奴らだからなぁ。くわばらくわばら。
まぁ、そんなことより今はアリスだ! アリスのことを考えよう!
「あぁ……早く会いたいよ……!」
最近、スーパー銭湯のことばかりで、まともにアリスに会えなかったからね。アリスニウムの深刻な不足状態が続いている。早く補給しなければ!
意気揚々と歩いていると、学院の門が見えてくる。学院の門には、衛兵の詰め所があり、警備も万全だ。安心だね。
僕は衛兵の一人に声をかける。
「お疲れ様です」
取り出すのは、エグランティーヌから貰った護衛騎士見習いのバッジだ。
「お勤め、お疲れ様です!」
話しかけた衛兵が、ビシッと奇麗な敬礼を披露する。さすが、学院の守護を任されている衛兵だ。教育が行き届いてるね。
「馬車と御者を用意してくれないか? 学院の所有する普通の馬車で構わないよ」
馬車にもいろいろ種類がある。学院の紋章が入っているか、いないか。王族用か、伯爵以上の上級貴族用か、子爵以下の下級貴族用かなどなど。噂では、装甲付きの戦車みたいな馬車もあるとかなんとか。
「かしこまりました!」
衛兵が元気に返事をして、すぐに馬車を手配してくれる。
あとはアリスを待つだけかな。
すごく待ち遠しくてもどかしい思いをしながら待つことおよそ四十分くらい。ついにアリスが姿を現す。
今日のアリスは黒のシックな服を着ているようだ。日本ならゴスロリチックな恰好といえばいいのかな? でも、この世界なら普通の女性の服装である。黒い服はひらひらで、アリスの白い肌や銀色の髪がとても映えて見える。
つまり何が言いたいかといえば、アリスはとてもかわいらしく、美しいということだ。
あんなかわいい子がオレの婚約者なんだぜ? いいだろ!
アリスはオレの存在に気が付くと、輝かんばかりの笑顔を浮かべて小走りで向かってくる。そのアリスの姿があまりに眩しくて、オレは気が付けば目を細めて笑顔を浮かべていた。
「ジル様! おはようございます! お待たせしてしまい申し訳ありません」
「おはよう、アリス。オレも今来たところだから気にしないでよ。さあ、行こうか。忘れ物はないかい?」
「はい!」
オレはアリスの手を取って、衛兵が準備してくれた馬車に向かう。今日のデートプランは一応考えてきたけど、アリスも喜んでくれるといいなぁ。