軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

128 パスカルと動き出すスーパー銭湯プロジェクト

「私でよければ、やらせてください! 必ず、プロジェクトを成功させてみせます! 今度こそ……今度こそ、必ず成功を!」

過去に何かあったのか、涙を滲ませながらオレの手を取り、何度も頷いてみせるパスカル。

よくわからないけど、今のパスカルの目はギラギラ輝き、ものすごいやる気を感じる。

もうパスカルのことを冴えないおじさんなんて呼べないね。

「ありがとう、パスカル。キミが協力してくれるなら心強いよ。まずは、土地の売買を済ませてしまおう。それから、商人ギルドにキミを雇うことを伝えてみるよ」

「そうしましょう。それと、商人ギルドとの手続きはお任せを。私も辞表を出す必要もありますので」

「え!? 商人ギルドの出向は、辞める必要はなかったと思うけど……?」

「やるからには徹底的にした方がよろしいですからね。商人ギルドに未練はありませんし、私もジャック様のプロジェクトに進退を賭けるべきでしょう。分の良い賭けですからね」

そう言って、久しぶりにしたと言わんばかりに不器用にウインクしてみせるパスカル。どうやら彼は本格的にオレのスーパー銭湯建造計画に参加してくれるみたいだ。

「ありがとう、めちゃくちゃ心強いよ。オレもパスカルが路頭に迷うことのないようにがんばらないとね!」

「はい。よろしくお願いします」

「じゃあ、まずは……」

「まずは商人ギルドで土地の売買を成立させ、その後、詳細を詰めましょう。私も辞表の準備をしますので」

「よし! じゃあ、商人ギルドのホールで待ち合わせとしようか」

「はい」

その後、オレたちは商人ギルドに戻り、オレは土地の売買を。パスカルは商人ギルドに辞表を出した。

パスカルの提案で、オレはダンジョンの周りのドーナツ状にある土地をすべて買い取ることにした。なんでも、オレがスーパー銭湯をオープンしたら、確実に地価が上がるため、安い今のうちに押さえておいた方がいいらしい。

さすが商人だと思ったね。オレは必要な土地を買えたらそれでいいかと満足していたと思う。

それに、パスカルに言われて気が付いたけど、後追いをなくすためにも必要な処置らしい。

パスカルが言うには、オレの銭湯というアイディアは画期的だ。それ故に、必ず同じことをして二匹目のドジョウを狙う者が現れるはずだ。

その時、銭湯を作るのに一番向いているダンジョン周りの土地が空いていたら、間違いなくそこに作るはずである。

同じ条件ですでに成功者がいるのだから、自分も成功するはずだという考えだ。

でも、オレたちからしたら当然面白くない。

だって、せっかく銭湯を作ったのに、お隣に銭湯が作られたらお客さんが分散してしまう。

そしてそうなった場合、多くは資金力の勝負になる。儲けが出なくなるほど値下げしたりして、お客さんをどれだけ奪えるかを競うのだ。

こうなると、オレ個人の資産しか持たないオレたちの方が圧倒的に不利である。

でも、パスカルの入れ知恵のおかげでダンジョンの周りの土地はすべてオレのものだ。これで隣に銭湯ができるなんて最悪な事態は防げる。

いやぁ、さっそくパスカルに助けられたよ。やっぱり、オレにはパスカルのような経験を積んだ商人が必要だ。

「はい? え? あの? ……正気ですか?」

まぁ、ダンジョンの周りの土地をすべて買うと言った時の受付嬢の驚いた顔は見ものだったけどね。逆に正気を疑われてしまったほどだ。

そして、受付嬢にはオレたちの考えを見抜かれることなく、土地の売買が成立する。

「お待たせしました」

「いや、左程待ってないよ」

商人ギルドのホールでパスカルと落ち合い、オレたちはお互いの成果を確認し合う。

「土地はすべて買えたよ。たぶん、警戒はされなかったと思う」

「それはよかったです。商人ギルドでも長年扱いに困っていた土地なので、おそらく大丈夫でしょう。私の方も無事に商人ギルドを辞めることができました」

「これからよろしく頼むよ、パスカル。それじゃあ、次は打ち合せかな。どこかいい場所を知ってる?」

「それでしたら、昔私が贔屓にしていたお店がございます。そこでお話を聞かせていただければ、と」

「わかった。案内してくれ」

「はい。こちらです」

パスカルに導かれるように、オレは商人ギルドを出る。そこは王都の大通りだ。それも、平民の中でも富裕層向けの店が立ち並ぶ一角である。道も清潔だし、道行く人々もどこかおしゃれだ。

「少し歩きます。こちらになります」

「ああ」

オレとしては歩きながら自分の考えをパスカルにぶつけてみたいのだけど、パスカルからそれは固く禁じられている。

画期的な商売のタネだからね。それを外に漏らすようなマネは絶対にしてはいけないらしい。

慎重過ぎると思わなくもないけど、パスカルが必要だというのだから従おう。もうそれくらいにはオレはパスカルを信じているんだ。

パスカルの目を見ればわかる。パスカルの流した涙に嘘はなかった。