軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

120 『守り人』

スタタタタッと草原を駆けていると、コソコソと逃げるように移動する冒険者パーティを発見した。

いつもは他の冒険者と交流はあんまりしないんだが、妙に気になったので事情を訊いてみようと近づいてみる。

「どうしたんだ? そんなへっぴり腰で?」

一番最後尾をのっそりと歩いていた全身鎧の冒険者に問いかけると、相手はヘルムでくぐもった驚きの声をあげる。

「お!?」

全身鎧の冒険者はガチャガチャと音を立てて大袈裟に驚くと、パーティメンバーの視線が一斉にオレに集まる。

「お前は!?」

「「「白の死神!」」」

冒険者って普段から連携を意識しているからか、妙なところまで連携が行き届いているなぁ。

「いつの間に来たんだよ! 心臓に悪いな」

「普通に走ってきただけなんだが……」

見渡せば、高低差はあるが遠くまで見渡せる草原が広がっている。オレの存在に気が付かないとか、冒険者には致命的なまでに節穴アイをお持ちなのでは?

そう思ったが、もちろん本人には言わないよ。オレは気遣いのできる貴公子を目指しているんだ。

「あ……」

そういえば、白虎装備の効果にカモフラージュ的な効果があった気がする。もしかしたら、そのせいか?

白虎装備は、こんな見た目だが最終装備候補に数えられるほどの装備だし、この階層を攻略中の冒険者が見破られなくてもそれは自然なのかもしれない。

ごめんな。節穴アイなんて思って。キミは立派な冒険者だ。がんばれ!

「どうしたんだ?」

「いや……。それよりも訊きたいことがあるんだ。どうしてそんなにコソコソしてるんだ? 何かあったのか? 怪我人がいるなら、ポーションならあるが……」

「意外と優しいんだな。もっと怖い人かと勝手に思っていた。まぁ、これだけ離れれば大丈夫だろう。実はヒツジの大きな群れに遭遇してな。見つかる前に逃げてきたんだ」

「ヒツジ……」

たぶんメリーのことだろう。この階層でヒツジ型モンスターといえばメリーしかいない。

メリーといえば、先ほどお世話になったばかりだ。

これはあれか? おかわりしろってやつか?

まぁ、今日は修行に費やすのもいいかもしれない。商会の設立とか小難しいことを考えて頭が疲れているし、ストレス発散の意味も込めてヒツジ狩りといこう。

「そのヒツジの群れはどこにいるんだ?」

「ああ。あっちだ」

オレは全身鎧の冒険者が指した方向を見る。

ここからだと見えないが、この方向にいるのだろう。

「教えてくれてありがとう」

「ヒツジは厄介だからな。助け合いも冒険者の道だろ?」

「そうだな。情報料というわけじゃないが、受け取ってくれ」

オレは銀貨を三枚取り出すと、全身鎧の冒険者の手を取って手のひらに乗せた。

「そんなつもりじゃなかったんだが、ありがたく貰っておくよ」

「そうしてくれ」

助け合いが冒険者の道か。久しぶりに気持ちのいい冒険者に会った気がする。ああいう奴には生きて幸せになってほしいところだ。

そう思いながら、オレは教えてくれた方向に駆けて行く。

「おい! そっちは――――」

後ろから何か聞こえた気がするが、まぁ、いいか。

まっすぐに俺の示した方向に駆けて行く白い猫姿の冒険者。ご丁寧に尻尾まで付いている。ふりふり尻尾が動いてかわいらしいが、そのスピードは速い。あっと言う間に見えなくなってしまった。

「ジョス、どうする? 行っちまったが……」

「あっちはヒツジのいる方向ってちゃんと教えたよな? どうしてそっちに走って行くんだ?」

「間違えたとか……?」

「どうすんだよ、ジョス?」

「うーむ……」

パーティの仲間たちが俺に問いかけるように視線を投げて寄越す。

俺は瞬時に答えが出せず、悩むように唸ってしまった。

ようするに、助けに行くかどうかだ。

ヒツジの数は遠目に見ただけだが、百を軽く超えていただろう。その数を相手に単騎はバカを通り越してもう遠回りな自殺だ。そんな奴に構ってこっちにも被害出たら最悪だ。見捨てるのが正しい選択肢だろう。

それに、幸いなことにヒツジの群れはこの草原ではかなり目立つ。遠くから見て白の死神が引き返せば最悪な事態は避けられる。

でも……。

俺の握られた拳の中には三枚の銀貨があった。先ほど白い死神がくれたものだ。

「俺は、助けたい。助け合うのが冒険者の道だ。そうだろ?」

私情でパーティの仲間を危険にさらようなことを言う俺はリーダー失格だろう。

「俺がリーダー失格なのはわかってる。でも――――」

「それ以上の言葉はいらねえよ。だからジョスは俺たちのリーダーなんだからな!」

「そうそう。ここで見捨てるなんて『守り人』の名が廃るぜ!」

「そうだ! 俺たちの冒険者道に傷を付けるわけにはいかんよな!」

「ここは俺たちの出番だろ!」

「みんな……」

見渡せば、みんないい笑顔で笑いながら俺も見ていた。そこに迷いも後悔もない。

「ありがとう、みんな! じゃあ、行くぞ! 白の死神を救うんだ!」

「白の死神を救ったなんて末代までの語り草になるぜ!」

「やってやらあ!」

俺たちは覚悟を決めると、白の死神を追いかけて駆け出した。