軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

107 第二十五階層

その後もオレの快進撃は続く。現れるモンスターの群れを順調にボコし、階段を見つけて次のステージへ。

王都のダンジョン第二十五階層。そこは今までと同じく草木の青々とした匂い香る長閑な草原だった。上を見上げれば、まだお昼には届かない傾いた太陽が見える。まだまだダンジョンに潜っていられるな。そのことが嬉しい。

「いくかー!」

暖かい気候に両手を上げて背筋を伸ばす。そして、左右の足のアキレス腱を伸ばしてから走り出す。

「はっ、はっ」

自分でも速いと思えるペース。まるで自動車に乗った時のようなスピードで周りの景色が流れていく。おそらく、地球でこの身体能力を持っていたら、余裕でオリンピックでメダルを取れるだろう。

そんなスピードで走っているというのに、オレにはまだまだ余裕があった。

身体レベルが上がって、いよいよ一般人から見たらバケモノみたいな身体能力を獲得しつつあるな。いいことだ。

「ん?」

前方では土煙が上がっていた。なにかあるのだろうか?

そんなことを思っていたら、土煙がどんどんこちらに近づいていることに気が付く。

いったん足を止め、よくよく土煙の方の観察する。

「んー?」

統一感のないバラバラの武装。どうやら冒険者らしき人影が五人、その後ろから大量の多種多様なモンスターが冒険者目がけて走っているのが見えた。

「トレインか?」

モンスタートレイン。モンスターとの戦闘中に逃げ出し、逃げ出している最中にどんどん他のモンスターにも絡まれ、どんどんとモンスターを引き連れて逃げ続ける行為のことだ。その電車のような見た目からモンスタートレインと呼ばれている。

「ッ!」

オレはその様子を見て脱帽した。

「その手があったか! あいつら、まさかトレイン狩りしてるのか!?」

トレイン狩りとは、故意にモンスタートレインを発生させて、大量のモンスターを一か所に集め、高火力範囲攻撃で一気に殲滅する狩りの仕方だ。

トレイン狩りをするには、モンスターとの間に確かな実力差がなければ難しい。だが、ここはまだダンジョンの第二十五階層だ。第二十五階層のモンスターを一撃で倒すのはそんなに難しいことじゃない。

しかも、エミールがバッファローの恵みを作るために市場のバッファローのミルクが高騰している。

そう。今ならば、普段よりも多くの金銭を得ることができるだろう。

なかなか機を見るに敏な冒険者だ。すごいよ。脱帽だ。彼らに栄光あれ。

「助けてくれー!」

「え?」

なにか変な言葉が聞こえたな。何で助けを求めているんだ?

「誰かー! 助けてくれー!」

また聞こえた。

もしかして、トレイン狩りはオレの勘違いで、あいつらはただモンスタートレインを引き起こしてしまった間抜けなのか?

「ふむ……」

まぁ、彼らの自業自得だし、助ける義理もないんだが、見捨てるのもなんだか目覚めが悪い。

それに、あそこまで集まったモンスターの集団というのは実に魅力的だ。貰えるならば貰いたい。

「いくか」

オレは決定を下すと、土煙の方へ走り出した。

「おい、後ろのモンスターは貰ってもいいのか?」

オレは土煙の前を走る五人の冒険者に最終確認を取るつもりで話しかけた。

悲壮感すら感じるほど絶望しながら走っていた五人の冒険者は、オレの姿を見ると一様に驚いた顔を浮かべる。

「あ、あんたは!?」

「その猫耳にドクロの仮面!?」

「その正気か疑いたくなるミスマッチは!?」

「白の死神!」

「どうしてこんな所に!?」

こいつら意外と余裕あるな。

「もう一度訊くぞ? 後ろのモンスターは貰ってもいいのか?」

「はああ!?」

「おめ!? 目は付いてるのかよ!?」

「あの数だぞ!? 勝てるわけがねえ!」

「お前が強いのは知ってる! だが、あの数はそんなレベルじゃねえ!」

「数の暴力だ! 轢き殺されて終わりだぞ!?」

「戦う意思がないのはわかった。じゃあ、貰うぞ?」

「だから――――」

なにか言いかけた冒険者たちを無視して、オレはモンスタートレインと対峙するように立ち止まる。そして、収納空間を最大数である三つ展開した。

「ふぁいあ!」

今まで溜めに溜め込んだ魔法や鉄球を一気に開放する。

その瞬間、始まるのはこの世の終わりのような暴虐だった。

モンスターたちの断末魔さえ聞こえないほどの凄まじい轟音。目の前は散ったモンスターの白い煙で前が見えないほどだ。

「もういいか」

オレは魔法や鉄球を収納空間から放つのをやめる。

開放時間は五秒にも満たなかっただろう。

だが、白い煙が晴れたそこには、たった一体のモンスターさえおらず、一帯はまるで焼け野原になっていた。

今まで機会がなくてやってなかったけど、収納空間三枚でこの範囲、威力か。第二十五階層のモンスター程度には過剰な攻撃力だな。事前に魔法や指弾鉄球を溜めなくてはならないのが面倒だが、これは使える。

「は……?」

「え? え?」

「どう、なって?」

「なん、だと……!?」

「俺は夢でも見てるのか……?」

振り返れば、見事にアホ面をさらした五人の冒険者がいた。