軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

46話 ローマに着いたらストーカーが増えた

冬は完全に過ぎ去り、季節はすっかりと春な4月。

建国記念日(パリリア) が迫るローマに着き、早いもので2週間。

ようやく落ち着いてきたルシウスでございます皆さんおはこんばんちわ。

ローマについた時点でゲームCLEARですのでゴール地点は2週間前の3月下旬。

記憶を取り戻したのが秋、10月のはじめだったので、タイムは――――5か月と26日っ!!

完走した感想ですがね、やはり高度の柔軟性を維持しつつ、臨機応変に対処するって重要ですね。

柔軟性を持たないと対処できなかったこと結構多かった気がする。

特に大プリニウス、通称プッさんのPOP。

予想外過ぎるわ。

どっから湧いてきた。

はいそこガバチャーとか言わない!

ガバチャーだろうがCLEARできればいいんだよ!

とにかく驚異的なタイムだったからヨシ! 反論は受け付けません!!

いやマジ早かったわ。世界ランク1位を自称してもバチは当たらないはず。

あ、やっぱり世界ランク1位とかいらないから俺のほかにも転生者いて欲しい。

俺の代わりにチート背負って苦労してくれ! 俺は田舎のヴィラで悠々自適に暮らすから!

脳内で叫びながら天井を見る。

よくわかんないけど、なんか下半身が馬のおっさんが全裸の少年にねっとりと手を回している絵が描かれた天井が見える。

……あんまり天井見るのやめようか。

「……さて」

本来であれば石膏像ルートから外れたことの安堵から、1日48時間くらい自分語りをしたいところだが、現実はそうもいっていられない。

世知辛いね。

そんなことを考えながら、俺は 自(・) 身(・) の(・) 執(・) 務(・) 室(・) の椅子にもたれかかりながら、今の状況の整理を行う。

まず今俺がいるところ。

大帝国ローマの首都――ローマ。

「……世界都市っつーか、魔都だなここ」

初めて見るローマの印象を一言で言えば『デカい、汚い、うるさい』の三拍子。

ポンペイが『小奇麗な海辺の観光地』だとしたら、ローマは『表面だけ金メッキしたゴミ溜め』だ。

大通りや神殿、 公共広場(フォロ) こそ大理石やまじもんの金の輝きで目が眩むほどだが、いわゆる下町であるスブッラ地区の最深にでも入ってみろ。

(倫理観が)トぶぞ?

五階建て、六階建てのボロ 集合住宅(インスラ) がひしめき、その窓からはおまるの中身が降ってくる。

表通りから一歩奥に入ると犬のうんこみたいな気軽さで死体があったりする。

かと思えばその隣の路地では子供たちが路上で教育を受けている。

解放奴隷の成金が貧民向けに配給を行っている横では、低級奴隷が工房の荒っぽい親方に足蹴にされている。

オールドデリースラムとロスのビバリーヒルズをミキサーで混ぜて放り投げたようなカオスな街。

それがローマだった。

そして、そんな世紀末都市において今俺が何処に居を構えているかというと……。

超絶高級住宅街のクソデカ 邸宅(ドムス) に住んでいる。

「マジわけわからんよな。生活水準2か月で変わりすぎて頭バグるわ」

机に置いた小壺からデーツを取り出して頬張りつつ、とりあえず呟いてみる。

そう。今俺がいるのは、ローマ七丘の一つ、エスクイリーヌスの丘に建つ馬鹿でかい 邸宅(ドムス) の 執務室(タブリヌム) だ。

この家、アホみたいにデカい。

今まで住んでいたルクレティウス様の邸宅はもとより、なんなら前にリバーシの件で訪問したウンブリキウス邸並みにでかい。

執務室(タブリヌム) にできそうな部屋が談話室として複数あるし、何なら風呂や食堂も複数ある。

え? なんでそんなヒカ〇ンが住んでそうな豪邸に住んでるかって?

……プッさんがくれた。

うん、くれたんだ。

正確にはタダで貸してくれている。

奴隷身分の俺に直接貸すわけにはいかないので、書記の方がいい感じにマルクス様に貸した体にして、マルクス様がデキムスさんに又貸しし、デキムスさんが俺に好きに使わせるというめんどくさい構図ではあるのだが、実質的には俺のもの兼デキムス商会のローマ本店的な状態になっている。

いやーしかし、こういう現物出されるとプッさんが本当に皇帝の側近なんだっていう実感がわくね。

俺ですらドン引きしたのだからローマについた時のデキムスさんの反応は言うまでもない。

この屋敷に着いたとき、デキムスさんは『あ、ちょうちょ』と呟いたまま白目を剥いて卒倒していた。

デキムスさんの奥さんもさすがに笑顔がひきつっていた。

一方、デキムスさんの娘……俺の婚約者(仮)としてついてきたルシアは『わぁー、広い!すごい!今日からここに住めるって本当!?貴族のお嬢様になったみたい!』と瞳をキラキラさせていた。

胆力よ。

ちなみにプッさん。もちろん善意100%でこのクソデカ邸宅をくれたわけではない。

どっちかというと私利私欲に基づいて俺にこの邸宅を押し付けた。が近い。

何故か?

それはね……。

ドタドタドタドタ!!!!

広間(アトリウム) から大きな足音が聞こえたかと思うと確認も何も一切なく俺の 執務室(タブリーヌム) に乱入してくる人影。

「友ルシウスよ!!!昨日は途中までしか聞けなかった、水銀温度計とやらの仕組みを教えてくれ!!!」

「プリニウス様。すでにパピルスに理屈上の作り方含めて纏めたんで、それそのまま持って帰って工房に依頼してもらっていいですか?実物で説明した方が早いので」

「何!?さすが我が友!話が早い!では実物ができたらまた来る!ではな!!!」

ドカドカドカドカ!!!

「書記!さっそくガラス工房に向かえ!」

正面玄関からプッさんの激が聞こえる。

嵐のように部屋に乱入し、30秒もしない時間で立ち去っていくプッさん。

そのプッさんを追うように、プッさんの甥で、俺より6歳年上らしい小プリニウスさんが、こちらにお辞儀をして立ち去っていく。

ガンギマリの叔父の養子になると大変そうだね……。

そう、この家、事故物件。

時折プッさんの 悪霊(あくりょう) (本物)が現れるのだ。

なんてたって、プッさんの家から徒歩3分。

週ごとどころか、ひどい時には1日4回くらい襲来してくる。

飯の回数より多いとかどういうことよ。

非常に鬱陶しいが、対価として差し出されたもの(=クソデカ 邸宅(ドムス) )の価値も莫大なので文句も言えない。

ちなみに、プッさんは俺たちがローマに発ったその日にミセヌム艦隊長官を辞任してローマに追っかけてきた。

そして軍艦を使い俺より早くローマ入りし、この 邸宅(ドムス) を押し付けてきた。

やりたい放題過ぎる。

実質的なローマ海軍のトップをバックレで辞めるって斬新すぎない?

一応指揮権は事前に委譲してきたらしいが、そういう問題ではないのでは?

大学生がバイト辞めるみたいな気軽さで 顕職(けんしょく) 辞めるじゃん。

よく皇帝に怒られないねプッさん。

そう思って「大丈夫なんです?」と聞いてみたところ、なんでも最優先で行うべき使命があるとのことだった。

どうせ俺から知識を絞ることでしょ?

せめて週一、いや隔日にしてくれませんかね。

そんな感じでプッさんという粘着ストーカーが増えたわけだが、実は今はここ1~2週間はそんなに忙しくはない。

むしろ2月から3月。

このローマに来る直前までがデスマで死にかけていた。

理由はもちろん『ちみつな事業計画で最速奴隷解放RTA』の下準備でだ。