軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

144話 ラプラス・2

「……さて」

そうして、王都中心部。

灰髪の男ラプラスが、凪いだ瞳で王都の惨状を見下ろすべく移動していた。

彼が向かう先は、王都上空。

そう、上空。本来ならば風系統或いは専用の血統魔法を使わなければ到達できないその場所。

けれど、ラプラスならばできる。

彼の血統魔法、 悪神の篝幕(ゴエティア) の応用だ。『任意の場所に結界を生み出す』という効果、それに加えてこの魔法の固有効果である『拒絶』を応用すれば、 空中に(・・・) ある(・・) 結界を(・・・) 足場に(・・・) する(・・) 形で空中移動が可能。

流石にかの空の魔女の『 無縫の大鷲(フレースヴェルグ) 』ほど自在な機動力を得ることはできないが、軽い移動程度なら問題なくこなせるのである。

ラプラスにとっては、この程度児戯に等しい。血統魔法で色々と試していたある日『こんなことができるんじゃないか』となんとなく思ってやってみたらできた、その程度のものでしかない。

……が、どうやら他の人間にとってはそうでなかったらしい。

組織に所属する他の人間は、たとえ血統魔法使いであってもラプラスを化け物を見るような目で見た。

ボスであるクロノでさえも『その魔法についてはよく知っているけれど、空中移動ができるなんて話は聞いたことがない』と驚いた様子で。

その辺りで、悟ったのだ。

自惚れではなくただの事実として──どうやら、自分は天才というやつであるらしいと。

その事実を、踏まえた上で。

改めて──ラプラスがその時思ったことを、ぽつりと告げる。

「……だからなんだ、って話だよなぁ」

受け継いだ優れた魔法も、規格外の才能も。

それを向ける先、その魔法と才能を使ってやりたいことが無ければ、何の意味もない。それこそが魔法の力を最大限発揮するとも、持ち前の才能で理解していたがゆえに尚更。

だから、ずっと探していて。自分の全てを懸けられる何かを追い求めていて、けれど何をやっても見つからなくて。

その果てに──あの、父親を自らの手でかけた瞬間に、もうずっと見つからずに死ぬんだろうと思ったその直後。

ようやく、見つけたのだ。

このためなら、人生を懸けても良い。そう思える、『想い』を。

だから。

「それが、どれほど世界に受け入れられない想いであろうと。善悪で言えば間違いなく悪に分類される願いであろうと」

遂に成就した、数十年をかけたその計画。

それの根幹を成す想い──彼が協力すると決めたその願いについて、ラプラスは語る。

「否定はしない、俺がさせない。たとえ世界の全てに弾かれてしまったとしても」

きっとそれが、自分の『想い』なのだろうと確信を込めて。

「──俺だけは、絶対に。それだけは、拒絶してたまるか」

そう再確認しているうちに、自分のいる場所の上空──王都全てを、再度見渡せる場所に来た。

クロノの第六創世魔法、その補助を受けたユルゲンの『 救世の冥界(ソテイラ・トリウィア) 』が発動。王都を過去の怨霊が覆い尽くしてから、既に結構な時間が経っている。

だから、今頃王都の地獄絵図は最高潮だろう。

生まれ持った魔法に驕り、向き合うべき想いと向き合わず。

ただ過去の正の遺産に保証された怠惰を貪ってきた連中が、無視してきた過去の負の遺産に逆に食い殺される。

そんな、極めて合理的で胸の空くような、最高の皮肉に満ちた破滅。

自分のボスが心から見たいと願い、ラプラスもそれを見ることができたら楽しいだろうと思えたその光景。

それが広がっていることを確信し、いよいよラプラスは王都に到達し──

「…………、は?」

あり得ないものを、見た。