軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

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ルードリア王国からドワーフの国への道は険しかったが、……フォードル帝国への道は更に険しい。

特に魔物の多く出現する火山地帯は、ドワーフ達ですら迂回する位に。

「ほら、エルフのエイサーさんよ。見てみぃ、あれがこの辺りで最も険しい山、竜峰山ってやつよ。竜が棲むって伝説のある山でな。まぁ、儂も爺さんもそのまた爺さんも、竜なんざ見たためしはないけれどな」

交易品を運ぶドワーフの一人が豪快に笑って、遥か彼方の火山を指さす。

そう言われてそちらに目をやれば、成る程、確かにその火山の威容は、竜が棲んでると言われれば素直に信じてしまう程だった。

しかし……、竜か。

ふと僕はずっとずっと以前に、……多分百歳にもならなかった頃、ハイエルフの長老衆から聞いた歌を、思い出す。

えっと、確か……、

『この世界に、真に不滅なる者は五つあり。

一つは精霊。世界を支える我らの友。

一つは真なる竜。深く眠りて終わりの時を待つ。

一つは真なる巨人。雲の上よりこの世界を見下ろす。

一つは不死なる鳥。死すれば即座に雛として生まれ、輪廻の円環を象徴する。

最後に我ら、真なるエルフ。何れは精霊と成りて、永遠に在る』

みたいな内容だった。

まぁ要するに、ハイエルフは凄いんだと自分達を称える詩なのだろう。

以前は御伽噺の類だと思っていたのだけれど、ドワーフの国でミスリルを加工する炉、ドワーフの秘宝の話を聞いて、僕も今では少し考え方が変わった。

似た様な御伽噺である、ドワーフが全き自然から火の欠片を盗み出して炉に閉じ込めたという話は、全てが真実ではないにしても、話の根拠となる秘宝が存在したのだ。

すると真なる竜、真なる巨人、不死なる鳥とやらも、何らかの形で存在しているのかも知れない。

少なくとも精霊とハイエルフは、ちゃんと存在するのだし。

実はこの五種は、人間の世界に伝わる神話の中にも、神より先に創造主に生み出された種族として名前が出て来る。

要するに御伽噺の中の存在とされてた。

……でもハイエルフに伝わる詩には、まだ確か続きがあって、

『真に不滅ならざる身で、不滅に手を伸ばした者、三つあり』

から始まった様な気がするのだけれど、正直もう、うろ覚えである。

一つが魔族だった事は覚えているが、長老衆の話は煩わしいと、当時は話半分に聞き流していたし。

でも少なくとも、仮に今ここで竜に襲われたとしても、役に立つ話ではなかった筈だから、……うん、別に良いかな。

「竜、ね。遠くから見る分には、見てみたいと思うけど、こんな山道で襲われるのは困るね」

僕がそんな風に言葉を溢せば、尤もだとばかりにドワーフが頷く。

竜という存在には非常に浪漫を感じるけれど、滑落の危険があるこんな場所で、無駄なリスクは背負いたくない。

ドワーフの国からフォードル帝国へは、およそ三週間の道程だった。

火山地帯を迂回する分、ルードリア王国へ行くよりも多少の時間が掛かるらしい。

交易を担うドワーフ達は、年に何度もこの距離を往復するらしく、慣れた様子で大荷物を担いだままに崖だって登る。

帰りなんて自分の身体よりも大きな酒樽を背負っての山越えだ。

僕もそれなりに旅慣れてる方だとは思うけれども、彼等の真似はとてもじゃないが出来ないだろう。

しかしそんな頼もしいドワーフ達とも、フォードル帝国の領内に入った所で一旦別れる予定だ。

エルフとドワーフが一緒に行動しているなんて、流石にあまりに目立ち過ぎるから。

フードで顔を隠して人間のフリをしたとしても、やはり怪しい物は怪しい。

滞在場所は聞いているから、町に忍び込んだ後は合流をする予定ではあるけれど、接触は慎重に秘かに行う。

何故ならドワーフは武器という武力に結び付く品を扱う関係で、本来はルードリア王国にもフォードル帝国にも加担しない中立だから。

……今回は僕を半ば身内扱いで肩入れしてくれてるし、ドワーフとて本当に両国の戦争が始まれば交易どころじゃなくなるから、情報は欲してる。

だからその協力には甘えるけれど、それでも彼等が疑われる事は可能な限り避けなければならなかった。

僕の目的は、まずは調査。

フォードル帝国がルードリア王国に攻め込もうとしてるとの情報の真偽を調べ、それが真実であるならば、……次はその手段を調べる。

そして仮に、万一その手段を用いれば奇襲が成功しそうな場合や、或いはエルフが関わっていたなら、何らかの対処が必要だ。

全てが単なる勘違いや杞憂であるなら、僕の行動が全くの無駄足であったなら、本当はそれが一番良い。

特別な手段なんて何にもなくて、単に大勢の兵士を動員して山間の道を整備する等だったら、わざわざ僕が関わらずともアイレナに一報を入れるだけで事足りる。

その時はウィンや、アズヴァルドやその家族に土産でも調達して、すぐに帰ろう。

けれども僕は、フォードル帝国が近付くにつれて、何やら妙な胸騒ぎを感じ出していた。

この手の予感は、悪い時ばかりよく当たる。

……恐らくフォードル帝国で僕を待ち受けてるのは、きっと一筋縄ではいかない厄介事だ。

故に余計に、僕はそれを避けては通れない。

「おぉぅぃ、エルフのエイサーさんよ。岩トカゲが狩れたから、少し早いが飯にするぞ。儂等が解体して処理するから、アンタは火を出してくれ」

ふと、考え事をしていたらドワーフ達に呼ばれる。

どうやら進む先を決める為に軽い荷で先行してるグループが魔物に出くわし、手際良く仕留めたらしい。

僕は頷き、足を速めた。

普通ならこんな岩だらけの山地では火を焚く燃料を集める事も難しいが、僕は一応魔術師でもあるから、魔力が尽きてなければ火は出せる。

火の魔術は、交易を担うドワーフ達には思ったよりもずっと、大袈裟なくらいに喜ばれた。

こんな険しい旅だからこそ、火を使った保存食でない食事は、何よりも贅沢だから。

それがどんなスキルであっても、誰かの役に立つ事は嬉しい。

この旅はまだもう少しの間、続く。

フォードル帝国での事は、うん、辿り着いてから考えよう。

そこでどんな困難が待ってたとしても、僕ならきっと、何とかなる。