軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

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そういえば割とどうでもいい事なのだけれど、人間というのはある意味で特別な種族だ。

それを何故かと説明するなら、話は種族の創造にまで遡るが、この世界に生きる多くの種族は、神々によって生み出された。

例外は精霊、ハイエルフ、雲の上に住む巨人、不死なる鳥、真なる竜と、それから神々になるだろう。

古の五種と神。

この六つの存在のみは、創造主の直接の子と言える。

そして神々は自分達が種族を創造する際に、始めはハイエルフを模して、エルフを創り出した。

なのでエルフは、この世界で最もハイエルフに近い種族ではあるのだけれど、それでも成り立ちから大きく異なる。

こう、あまり上手い例えではないのだけれど、ハイエルフが木彫りの人形だとすれば、エルフはその形を真似て土を捏ねた、素焼きの人形だとでも言えばいいだろうか。

次に神々は、エルフと真逆の存在、ドワーフを創り出す。

しかし真逆と言えば、ドワーフはエルフから非常に遠い存在に感じるだろうが、でも形を変えた素焼きの人形だと思えば、エルフはハイエルフよりもドワーフの方が近い種族になるだろう。

更に神々は、エルフとドワーフを創り出した経験を踏まえて、人間という種族を創る。

エルフのように精霊の力を借りる特殊な感覚を持たず、ドワーフのようなタフさや膂力を持たず、二つの種族よりもずっと寿命の短い人間を。

恐らく神々は、その後に生み出す種族の基とする為、敢えて強い力を持たせず、拡張性を重視して、人間を創り出したのだと僕は考えていた。

全ての神々が協力し合わずとも、個々の神が己の好きな種族を生み出す為のベースとして、先に人間という種族を用意したのだと。

実際、その後に生み出された種族の多くは、人間を基にしたのだろうと思われるものが多い。

人間に足りなかった力を補う為、獣の属性を帯びた獣人は、その代表じゃないだろうか。

もちろんこんな話をすれば、獣人は激怒する。

いやそれどころか、エルフもドワーフも人間も、その他の種族も殆どが、馬鹿にするなと怒る話だ。

……でもまぁ、それが真実だろう。

つまり西部の宗教が人間を持ち上げたがるのも、全く所以がない話という訳でもない。

その所以を、西部の宗教を信じる人間達が喜ぶかどうかは別にして。

もう一度繰り返すけれど、人間はある意味で、特別な種族だ。

ハーフに関して、人間とその他の種族がって話を最も多く耳にしがちなのは、その辺りも多分関係してる。

残念ながら、ハイエルフである僕には、全く意味がない話になるのだけれども。

ちなみにこれは人に分類される種族の話で、木々や獣はまた話は別だった。

木々や獣が何時、どこで生まれたのかは謎に包まれている。

恐らくは元よりこの世界に存在していたのか、或いは創造主が世界を生み出したのなら、その時に共に世界の一部として生まれたのだろう。

ズィーデンとの一度目の交渉を終えたエルフのキャラバンは、西のルードリア王国を目指す。

その一度目の交渉で決まった事は、エルフの森への不干渉と、今後の交渉の継続だった。

要するに王都の周囲の岩山を撤去した対価に、一方的に要求を飲ませた形となる。

もちろん今の大陸の現状を憂う言葉を伝えたり、ズィーデン国内に魔獣が増えつつある事への指摘もしたらしいから、本格的な交渉はこれからだろう。

アイレナは次の交渉の前に、ルードリア王国とヴィレストリカ共和国の為政者と会う心算らしい。

……正直、話が大き過ぎて、僕にはちょっとついていけないけれども。

いや、本当なら、黄古帝国で仙人達や、真なる竜の一つ、黄金竜に出会った事の方が、話としては大きいのだ。

だってその話をしたら、アイレナは眩暈を起こしていたし。

ただ僕にとって為政者や、国との交渉って物事があまりに縁遠いから、大きな話に感じるのだろう。

まぁ、つまり、それぞれの得意分野で頑張るべきだって話だった。

尤もアイレナに関しては、話の大きさよりも僕に対する心配で、眩暈を起こしたのだろうとは思う。

元々腕の良い冒険者である彼女は、未知に対しての興味も強い。

それに竜の話に劣らないくらいに大きな、巨人が住む雲の上に行けそうで、白の湖も見付けられそうだって話には、凄く喜んでいたし。

ズィーデンを抜ければ、キャラバンはルードリア王国の東部へと入る。

ルードリア王国の東部は、やっぱり新しい砦が幾つも築かれていて、物々しい。

やはりカーコイム公国に攻めこんだズィーデンを、ルードリア王国は取引を続けながらも、警戒はしているのだろう。

しかしそうやって警戒しながらも、東部の貴族達はズィーデンとの対立を避けようと動く。

もしもズィーデンとの戦争になれば、矢面に立つのは自分達だからだ。

大多数はもっと情勢を良く見極めるべきだと考える日和見派だが、中にはズィーデンと対立するくらいなら協調して南、ヴィレストリカ共和国を相手にするべきだと主張する貴族もいるらしい。

もちろん逆に、これがルードリア王国の南部になれば、ヴィレストリカ共和国と協調してズィーデンと戦うべきだと唱える貴族が多くなるのだろう。

国という大きな視点での利害よりも、自分の領土の都合を優先して物事を考えるのは、別に貴族としては大きく間違った話じゃない。

仮に国が多大な利益を得ようとも、その為に自領の民が大勢死に、領地が荒れ果ててしまっては何の意味もないのだから。

そして王家は、今のところは日和見だが、心情は東部の貴族に近いらしい。

まぁこの辺りはアイレナから聞いた話なのだけれど、王家は以前の事件の結果、東部に広い直轄地を持っている。

それは今の王家を支える重要な力の源だ。

仮に東部が戦火に焼かれれば、王家の力は格段に低下しかねない。

あぁ、いや、それ以前にルードリア王国の食糧庫である東部が焼かれれば、多くの民が飢えてしまう。

万に一つでも東部を危険に晒す選択は、ルードリア王国としては選び難かった。

貴族が国よりも自分の領土を優先するように、国も周辺地域の安定よりも、自国の安寧を優先する。

他所の国の民が戦火に苦しもうが、飢えようが、……まずは自国の民を飢えさせない事こそが、為政者としての務めだ。

至極当然の話だった。

但し、それが常に最良の選択であるとは、決して限らないのだけれども。

対岸の火事が、ずっと対岸で留まっていてくれる保証は、どこにもない。

広い穀倉地帯を抜けて、更に西へと。

段々と、強く見覚えのある都市が近付いて来る。

そう、ルードリア王国の王都、ウォーフィール。

大きくて、古い、栄えた都市。

僕はそこで、ここまで一緒だったキャラバンの皆と別れた。

もちろん永遠の別れじゃない。

エルフのキャラバンが僕の力を必要とするなら、何時でも駆け付ける。

まぁその逆に、僕が彼らに助けて貰う事も、多分沢山あるだろうけれど。

ウォーフィールの道は、覚えてる。

僕は真っ直ぐに、その場所を目指す。

階段を上って、門を潜れば、すっかり変わってしまった顔ぶれが、それでも変わらずに剣を振る道場だ。

だけど僕はそこでも足を止めず、奥に向かう。

僕の事を知らない道場の弟子が制止しにくるが、それを別の弟子が腕を掴んで止めさせた。

あぁ、そちらの顔は、知っている。

でも随分と、老いていた。

だけど再会を喜ぶのは、後にしよう。

道場の傍らを通り抜ける僕を、老いた顔の知人達は誰も止めない。

僕が真っ先にどこに向かおうとしているのかを、皆が知っているから。

彼女が眠るのは、王都の民が眠る墓地ではなく、道場の敷地内にある、一族の為の墓地だ。

その前に立って、荷を地に下ろし、僕は大きく伸びをする。

やっと辿り着いた。

何だか随分と、遠かった。

少しばかり回り道をし過ぎたのかもしれない。

決して無駄な寄り道ではなかったのだけれど。

それから、僕は墓石に向かって、語り掛ける。

「ただいま。やっと帰ったよ」

彼女が眠る墓は綺麗に掃除がされていて、僕が大陸の東部へと旅立った日と、何も変わらない。

うん、何も変わらずに、カエハは僕を待っていてくれた。