軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

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僕は馬上で、キュッと矢を番えた弓を引き、スパッと放つ。

空を裂いて飛んだ矢が、ザクリと突き刺さったのは、鎧兜を身に纏った兵士の眉間。

人間ならば、矢が脳に達する致命傷だ。

しかしその兵士は、矢の衝撃によろめきながらも、こちらに歩み寄る足を止めない。

そう、僕が矢で射ったのは、鎧兜を身に纏っていても、人間じゃなかった。

あぁ、より正確に言うならば、もう人間ではなかった。

「屍人は、本当に嫌だね」

それは人の骸が、動き出した魔物。

屍人は、本来は珍しい魔物の筈なのに、今は三体も、こちらに向かってやってくる。

僕はもう一本、矢を番えて弓を引く。

既に死んでる肉体だから、急所を射抜いたところで、大きな意味がない。

この魔物を倒す手段は、大きく肉体を損壊させる事のみ。

スパッともう一度放った矢は、一体の屍人の足を貫き、動きを阻害して、転げさせた。

強い魔物では、決してない。

倒し辛いし力も強いが、動きは遅いし、知能らしきものもないのだから。

油断して間近で不意を打たれでもしない限り、対処は然程に難しくはないだろう。

普通の人間だって、走って逃げる事ができる相手だ。

ただ相対すると、不快になる。

それが存在しうる状況がまず以て不快だし、大きく肉体を損壊させなければ倒せない辺りも、尊厳を傷付けて壊しているようで、嫌だった。

キャラバンの他のエルフ達も、弓を持つ者は一斉に放ち、残る屍人を打ち倒す。

然したる脅威ではなかったが、誰も、何も言葉を発さない。

倒れただけでは、やがてまた起き上がってくるから、これからトドメを刺さなきゃならない。

……まぁ最初に転がした一体は、僕が引き受ける事にしよう。

僕がエルフのキャラバンに加わってから三ヵ月が経つ。

今、キャラバンはズィーデンの南部、つまりは元々はカーコイム公国だった場所を、移動中だ。

三ヵ月の旅の間に知れた事は、強国となったズィーデンが、それでも戦争の為には、相当に無理をしているという事実だった。

村や町の近くはまだマシだけれど、野外で魔物と出くわす頻度が、間違いなく多い。

馬車で街道を通っていてさえこうなのだから、仮に街道を離れて野を歩けば、もっと多くの魔物に襲われるだろう。

この魔物の増加は、恐らくはズィーデンが戦争に戦力を集中させているからこそ、起きている現象だ。

町や周辺を守る兵士は、流石に多少は残しているとは思うけれども、少ない兵力では本当に町中くらいしか守れず、積極的に魔物を狩れない。

或いは冒険者も兵士として徴用し、前線に回しているのか。

そうなれば当然、魔物の数は徐々に増加する。

すると流通は滞り、人々の生活も貧しくなっていく筈だ。

ただでさえ、ズィーデンと取引をする国は数少なくなっているというのに。

どうしてズィーデンが、そこまで他国と戦う事に力を注ぐのかは、わからない。

過去には増え過ぎた魔物に滅ぼされた国も、あると聞くのに。

ちなみにそうして魔物に滅ぼされた国が出ると、周辺国は一致団結して魔物の討伐に乗り出さなければならなくなる。

そうせねば更に数を増やした魔物に、自国も飲まれてしまうから。

流石にそんな事になってしまう程、ズィーデンの為政者も愚かではないと思いたいけれど……。

リスクを顧みないズィーデンの燃え盛るような拡大志向は、何に起因するのか。

何らかの理由はある筈なのだ。

そしてどうすれば、その拡大志向に歯止めを掛けられるのか。

……人任せになって悪いけれど、アイレナならそれを、恐らく上手く調べてくれる。

ズィーデン内のエルフの住む森を回る旅は、もう残りは半分だ。

後三ヵ月掛けて、残りの森を回りながら北上し、それからズィーデンの王都に向かう。

そう、僕が町の門を封鎖した、あの王都に。

実はまだ、ズィーデンはあの門の封鎖に僕が使った岩山を、撤去できないでいるらしい。

その撤去は、まぁ僕の仕事になる。

キャラバンのエルフ達にだって時間を掛ければ撤去は可能だろうが、手間取る姿を見せれば、ズィーデンに侮られかねない。

素早くあっという間に片付けてこそ、今のズィーデンがエルフに感じてる脅威を維持し、更に大きな物に見せる事ができるのだから。

ただまぁその後の交渉に関しては、僕に仕事はない筈だ。

そもそも交渉も一度や二度では終わらないから、エルフのキャラバンはあちらこちらを旅しながらも、何度もズィーデンの王都に立ち寄って、その度に交渉を進める。

ルードリア王国、ヴィレストリカ共和国、小国家群の意思も絡む。

交渉の終結までに、一体何年掛かるだろうか。

一度目の交渉の後、キャラバンはルードリア王国に向かうから、僕の同行はそこまでだろう。

カエハの墓に参った後の事は考えてないが、少しの間はルードリア王国で、ヨソギ流の道場で過ごしたい。

長く続いた旅の区切りは、きっともう然程に、遠くはなかった。