軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

第271話 「環境適応」

レアたちマグナメルムにより、ルート村に解き放たれたドラゴン。

ベースとなったのは30体の真竜人だ。

アンフィスバエナが2体の真竜人から2本の首を得た事を考えれば、30本の首が生えていてもおかしくはなかったのだが、そのような事はなかった。

スケリェットギドラの時もそうだが、上位の種族が3体だけとか2体だけとか入ったせいでああなるのであり、すべてが同ランクに揃えられているならそんなことにはならないようだ。

さすがに全てを真竜人で揃えたためか、非常に強力な個体を生みだす事が出来た。

能力値やスキルから考えると準災厄級と言っても差し支えないレベルだ。

ライラによれば特にそういったアナウンスは無かったようなので、能力値はともかく、まださらにこの上が存在する可能性がある。

どうやらドラゴン系は元々強めの種族らしい。この先野生のドラゴンと敵対する事があるようなら注意が必要だ。

このドラゴンの種族は「トゥルードラゴン」。

素材や種族名から考えると、真竜人たちの祖先と言うか、そんな感じの存在のようだ。

全身の強靭な筋肉は暗褐色の鱗に覆われており、攻撃力も防御力も非常に高い。

スキルもドラゴン系共通と思われる『飛翔』『天駆』を備えており、『竜の咆哮』というドラゴン固有のものも持っている。

また『プライマルブレス』というブレス攻撃も持っており、威力は低めで追加効果もないが、その代わりに属性耐性などで軽減ができない性質があるようだ。何の属性も持たない攻撃という事だろう。当然物理的な斬属性や刺突属性などもなく、さらに物理攻撃でも魔法攻撃でもないため、事実上あらゆる耐性を貫通する攻撃とも言える。

「プライマルブレス、っていうと、基礎的な呼吸法っていうか、ただの腹式呼吸とかなんじゃ?って思うんだけど」

「文句があるなら──」

「いやわかってるよ。ていうかどっちみちもう遅いでしょ」

このトゥルードラゴンに関しては、ライラの希望で彼女の眷属として用意した。

正確に言えばライラが『使役』したリザードマン30体から転生と融合を行なった。

これにより、せっかく数を増してきていた地底湖のリザードマンたちも、また子供を除いてほとんど居なくなってしまったが仕方がない。

巨大な眷属があまり多くても持て余してしまうことは分かっているし、強力なドラゴンが欲しいのならユーベル強化計画を練ればいいだけだ。

賢者の石をはじめとするレアの持ち出し分や作業工賃としてミスリルなどの素材をもらう事が出来たため、レアとしては満足している。

トゥルードラゴンの最初の仕事はルート村での自己紹介だ。

おそらくここに村が出来た当初から村人たちが待ち望んできたドラゴン様である。

きっと喜んでくれたに違いない。

勢い余って人口は半分ほど減ってしまったようだが、どうせドラゴンと戦いたいプレイヤーが集まるだろうし、減った人口はすぐ戻るはずだ。

山には他にライラ配下のスキンクを放った。

これも念の為に、連れてきた大量のオーラルサラマンダーをこの山で転生させた。そうすることで大量のペアレスキンクを生み出し、山中へ散らせたのだ。

元になっているニュートたちは水辺に住んでいたこともあり、気温の低い山間部で生活させて大丈夫なのかとも考えたものだが、どうもこの、種族名の頭に地域名が付けられるのにはそれなりに意味があるらしく、ペアレで転生させた彼らはペアレの気候に問題なく馴染んでいるようだった。

よく見てみると体色も若干違うようだし、この手の種族は気候に合わせて最適化された生態に変化するのかも知れない。

オーラルスキンクという名前だとプレイヤーに『鑑定』された際に要らぬ詮索を招くかと考えて小細工をしただけだが、いい方に転がったようだ。

「確かにホッキョクグマとかも寒い地方に最適化しただけの熊だしね。遺伝子的にはヒグマと近いみたいで、生息圏が重なる地域なんかじゃヒグマとホッキョクグマのハイブリッドなんかも生まれるみたいだし」

「へえ、そうなんだ」

現実の動物とゲーム内の魔物を混同するのは危険だが、そういう言い方をされると説得力も生まれてくる。

むしろそういう理由でもなければ、地域ごとで名前が違っている必要性がない。

ともかくこうして、ルート村の北にそびえる山は晴れて魔物の領域となったのである。

あくまでプレイヤーであるライラが勝手に作った領域であるため、今後転移先リストに登録されるなどのサポートがあるかどうかは不明だが、今の所はドラゴンと堂々と戦える唯一のスポットだ。

多少アクセスが悪いとしてもきっと多くの客が訪れるだろうし、アクセスが悪いがゆえにプレイヤーたちはこの村に滞在せざるを得ず、村は経済的にも発展していく事だろう。

それは国からの援助などよりもよほど大きな利益をもたらすはずだ。

今頃村長は──生きていればだが──マグナメルムに感謝しているに違いない。

「ところでレアちゃん何位だった?」

「2位かな。ブランは?」

「わたしは4位! あれ? 3位は誰だろう」

「ねえ、お姉ちゃんには聞かないの?」

「うるさいな。じゃあ3位はバンブかな」

「お、おー、おう。誰だっけ」

「……前回3位のプレイヤーだよ。ゴブリン系の。ていうか、彼また3位なのか」

「ねえお姉ちゃんの──」

「どうせ1位なんでしょう! もうほんとうに鬱陶しいな!」

天使の討伐数の関係で上位をマグナメルム関係者が占める事はわかっていたため、それほど驚きはない。

運営からの「勢力の垣根を越えて協力する事」というような言い方から、自分以外の勢力への天使による被害を減らす方向で活躍した方がよりポイントが入るのではと考えていた。

そのためレアは主にダンジョンや街などで、眷属たちにはプレイヤーやNPCを守るかのように上空で戦わせ、他のプレイヤーによる討伐数を減らすとともに防衛ポイントのようなものも稼ぐように立ち回っていた。

おそらくライラも同様で、あちらは騎士団を動員して国家単位で同じような事をしていたのだろう。さすがにレアもヒルス王国全土を守るというわけにもいかなかったし、防衛という観点においては国を守る軍事組織に対抗しても勝ち目はない。

その差が1位と2位という結果だ。

ブランがバンブに負けたのは、天使討伐に対する姿勢というか、積極性の差だと思われる。

支配地域の面積を考えても、ブランは街3つ分、バンブは森と街1つ分であり、後者の方がかなり広いだろうし、この結果は妥当だと言えよう。

「大天使討伐数の匿名希望の嵐はあれかな。バンブのお友達かな」

「ああ、プレイヤーズクランを作らせたんだっけ。その人たちか。全員匿名を希望したのは意外だったけど、バンブ君の指示かな」

邪険にあしらったのにまるで堪えていない。どうやらライラは機嫌がいいらしい。

「たぶんね。大天使討伐に関してはイベントの途中からの企画だったから、最初に匿名って返信してなくても設定出来たはずだし」

後にバンブ経由で教えてもらった、例の非公式SNSを見る限りでは、魔物プレイヤーの彼らはあまり積極的にイベントに参加するつもりはないようだった。

そうであるなら、イベント開始時の運営からのメッセージにもまともに返信していない可能性が高い。もし彼らが通常ランキングの方にランクインしていたとしたら名前が表示されていただろう。

今回の賞品は、少なくともイベントランキングの1位から4位については内容に差はないようだ。

知り合いがいないため確認しようがないが、もしかしたら10位までは同じものなのかもしれない。

賞品は課金アイテム詰め合わせだった。

ライラは喜んでいたが、現状販売されている課金アイテムにはレアにとってはどれも魅力が全くない。

インスタントセーフティエリアが作れたところで意味は薄いし、『使役』や『鑑定』に関しては言うまでもない。初期種族転生アイテムに至ってはデメリットしかない。

これらを使う機会が来るとは思えないし、インベントリの肥やしに決定だ。

「まあ、トロフィー代わりにはなるかな。いや外に出せないからそれにすらならないか。何でミスリルとかじゃないんだよまったく……」

それよりも問題なのは大天使討伐の上位ランキング者向け報酬だ。

こちらはザグレウスの心臓だった。

バンブにちらりと聞いたところでは、少なくとも50位前後までは同じものらしい。こちらも100位までは同じなのかもしれない。

「プレイヤーたちにもようやく蘇生手段の解放か」

「ライラの予想していた通りだったね。大天使が出てきた時点で、イベント報酬で配るつもりだったんじゃないかって」

「でもこれ使うと『復活』もアンロックされちゃうんだよね? プレイヤーの人たちがみんなでゾンビアタックしてきたらやだなあ」

「うん。でもまあ、ロール的にも経験値的にも、レイドパーティの全員が『復活』を取得するとは考えづらいし、あれもリキャストタイムが長い魔法だからね。パーティメンバーの1割2割が持ってる程度なら、別にそんなに脅威にはならないと思う。

それよりも、彼らには一刻も早く『復活』を取得していただいて、こちらの実験に付き合ってもらいたい」

「実験?」

「そう。経験値の取得のタイミングは、判定がよくわからない時もあるけど、基本的には一連の行動の完了時だ。戦闘で言えば決着がついた時。これは複数人同士の戦闘であっても個別に判定されるから、たとえばメンバーのうち誰か1人が倒れたとしたらその時点で相手側全員に討伐経験値が分配される。若干のタイムラグはあると思うけど、人間が知覚できるラグじゃないから気にしなくてもいい。ということは、相手を倒した時点で、そいつが蘇生しようがしまいがすでに経験値は受け取っているというわけだ。

実験してみたいのは、その後その倒れた人物を蘇生したとして、もう一度そいつを倒したとしたら、また経験値はもらえるのかな、ってことだよ」

これが可能なら、相手パーティにあえて蘇生の余裕を与えてやることで、これまでよりも効率よくプレイヤーたちから経験値を得ることができるようになる。

「なるほどー! なんかもう、ナチュラルにプレイヤーをキルした場合の事をすでに考えてるあたりレアちゃんらしいよね」

「どういう意味だよ。あ、プレイヤーのキルで思い出したけど、ジャネットたちからモニカを通じて報告があったなそういえば」

ジャネットたちが勢いでキルしてしまった追い剥ぎが、実はプレイヤーだったらしいということだ。

つまりただの追い剥ぎではなくPKに襲われたということだが、問題はそこで『変態』を発動してしまった事である。

解放したのは一部の特性だけだったようで、服や装備が破損したわけではないようだが、少なくともただの獣人でないことがバレたのは確かだ。

もっとも彼女たちの話では、初撃こそかろうじて躱せたものの、実力的にはかなりの相手だったようである。

基本的にPKはある程度以上の実力がなければ成立しないプレイングのため、それは当然とも言える。とにかく普通に戦闘しては勝てたかどうかわからなかったとのことなので、それなら彼女たちを責める気にはならない。

「ああ。私も聞いたよそれ。

今のところは特に拡散されてるって感じもしないし、別にほっといていいんじゃない? それにジャネットちゃんたちが妙なスキルを持った人外系プレイヤーで、かつ特殊なNPCと繋がりがあるってバレたところで私たちが困ることはないでしょ。

その情報目当てに狙われるとしてもジャネットちゃんたちの自業自得だし、彼女たちから私たちの情報が漏れるとしても、大半はプレイヤーたちも知っている事実だけだよ。何ならむしろ黒幕ムーブの宣伝になるくらいだ」

付け加えるならば、アルケム・エクストラクタを始めとする、他キャラクターを物理的に強化することができる手札や、ヒューゲルカップに現れたアビゴルが実はマグナメルム側の役者だったことなども知られてしまう可能性もあるが、これも知られたからと言って何かができるわけでもない。

とはいえジャネットたちがプレイしづらくなってしまうのはかわいそうだし、彼女らのためにもプレイヤーである事はバレないように気をつけるよう、もう一度言っておいた方がいいだろう。

会話中にも村ではトゥルードラゴンが暴れていた。

しかしあまりやり過ぎると人口半減どころではなくなってしまう。

頃合いを見て、ライラが真ドラゴンを引き揚げさせる。

「さて、これでぶらり旅は終了かな」

「そうだね。家に帰るまでが遠足だけど、帰るだけなら一瞬だし」

「うーん! 思いの外いろんな事あって楽しかった!」

確かに、天然のドラゴンを見つけることは出来なかったが、代わりに転生に関する新たな情報を手に入れることができた。

あれと賢者の石を併用すれば、元種族さえ分かれば大抵の種族を生み出す事も可能なはずだ。

現状全く手がかりがないのは海皇くらいだが、海に進出すればその手がかりも手に入れることが出来るだろう。

北の極点、というかここ以外の大陸へ移動する方法を探すためにも一度海岸線まで出向いてみるのもいいかも知れない。

「次の遠足は海水浴かな」

「悪くないね。でもその前に、まずはやりかけの事を済ませておかないとね」

「ブランはシェイプ、ライラはポートリーの掌握か。わたしは──先にウェルスかな。ペアレは祭壇のこともあるし、しばらく様子見で」

「そういえば、バンブ君たちがウェルスで何かするとか言ってたね」

「言った覚えはないんだけど。もしかしてライラも見てるの? あのSNS」

「だってレアちゃん、VRベッドにメモ貼り付けてあるじゃん。そりゃ見るよね」

「貼り付けてあるのは内側で、ベッドに寝ないと見えないところなんだけど?」

そりゃ見るよね、ではない。つまり不在中に勝手にレアのベッドに寝転んだということである。信じられない。

「あのSNS?ってなんのこと?」

「……協力者のバンブが立ち上げた、魔物プレイヤーのみのクランのための外部コミュニティだよ」

「そんなのあるんだ! わたしも見たい!」

「いいけど、バンブに言っておかないと。ライラも自分のアカウント作って自分で見なよ。ライラは彼とフレンド登録してあったでしょう」

その魔物プレイヤーのクラン、MPCではウェルス王国襲撃を計画していた。

これは適度に王族にストレスをかけてやりたいというレアの思惑にも利用できそうなため、最大限協力することにしていた。

やりすぎて王族を全てキルしてしまうことがないように注意してやる必要があるが、それは聖女アマーリエとウェルス聖教会がいれば調整も可能なはずだ。

すでに計画は開始されている。今頃はウェルスにレアが用意した拠点にMPCのメンバーたちが密かに集結しているはずだ。

この拠点は魔物の領域などではない、何もない荒野の地下に勝手に作成したもののため、セーフティエリアもない危険な穴ぐらに過ぎないが、周辺は密かに白魔率いる氷狼たちに守らせている。ここで彼らがログアウトしてもリスキル地獄に陥ることはまず無いだろう。

「じゃあまた、しばらくはそれぞれのプレイをしようか。ある程度キリがついたらまたお茶会をしよう」