軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

第270話 「書類上は未達成」

クエストを受けた。それはいい。

その目標らしき遺跡を発見した。素晴らしい成果だ。

そしてその遺跡の発見によりワールドクエストのようなものが進行し、プレイヤーの全てを巻き込む大きな流れに発展した。まさに快挙と言える。

しかし肝心の、受けたクエストそのものの報告については忘れていた。

直後に運営から個別でメッセージが来たりしていたため、何となく終わったような気がしていたが、繋がりが疑われるとは言えあくまで運営は運営、傭兵組合は傭兵組合である。

新たなダンジョン「墜ちた天空城」の攻略に見切りをつけたヨーイチ達は、一足先にウェインたちとは別れ、オーラルのヒューゲルカップに急いでいた。

ウェインたちからされた提案については異論はない。

物件なども他のメンバーに全面的に任せ、金だけ出すつもりでいた。

「受けたクエストくらい、ちゃんと覚えてろよ」

「それはお互い様だろう。どちらか片方だけを責めるのは間違っている」

2人だけのパーティである。

喜びも報酬も、苦労も責任も割り勘だ。

とはいえ今回のクエストをヨーイチが率先して受けたのは事実であり、それはヨーイチもわかっているし、サスケの方も別に本気で責めているわけではない。

単にいつもの掛け合いである。

「クエストの期限については明記されていなかったから、これから報告しても問題ないはずだ。あれは騎士たちの目に触れさせたくないという事情もあったようだから、掲示板に貼り出されているということもないだろう。だから他の誰かに手柄を横取りされてしまっている心配もいらないはずだ」

あれだけの騒ぎになれば、ヒューゲルカップに住んでいる者なら何が起きたかくらいは耳にしているはずだ。

つまりあのコウサカという支部長も事の顛末を知っていてもおかしくない。

そこに今頃のこのこ現れてクエスト完了の報告をすれば、嫌味のひとつくらいは言われるかも知れない。

「報告はお前がしろよ。俺は宿題の提出を忘れて叱られるような──」

「──待て」

ほんの一瞬だが、『真・真眼』に光が見えた。

それはつまり、LPを持つ何者かが辺りに潜んでいるという事だ。

ヨーイチは基本的に、このような街道を移動する際は『真・真眼』を常時発動状態にしている。

『光魔法』ツリーのかなり上の方になるが、姿を消すことができる『迷彩』という魔法があることはすでにわかっている。

あの第七災厄も姿を消して行動していたことを考えると、おそらく他にも同様のスキルがあるはずだ。ビジュアル的なイメージはともかく、人類の敵である災厄が『光魔法』が得意だとは考えづらい。

そういった奇襲への警戒として発動していたものだが、今回はどうやらそういう特殊な敵ではないようだ。木に隠れてこちらをうかがっているだけである。

『真眼』は服やカーテンのような薄い障害物なら問題なく貫通して視ることができるが、壁や木のように厚みのあるものでは透過することができない。これは『真・真眼』でも同じだ。

一瞬見えたLPの光は街道から少し離れた木々に隠れているようで、今は全く視る事が出来ない。

しかし通常の視界ならばともかく、光るLPを見間違えることなど考えにくい。あの木の陰には間違いなく何者かが潜んでいるはずだ。

そしてわざわざ隠れているという事はこちらを認識しているという事であり、よからぬ事を企んでいる可能性も高いと言える。

ここは現実ほど治安のよい世界ではない。

あれがプレイヤーかNPCかはわからないが、 人気(ひとけ) のないところで不審な行動をしていれば盗賊だと疑われるのが当たり前だ。攻撃されても文句は言えない。

「──あの木か?」

「ああ。何者かが隠れている」

足を止め、慎重に辺りを窺う。

視えたのはあの木の影だけだが、他に潜んでいないとも限らない。

『触覚強化』と『聴覚強化』に意識を集中し、3次元的に空間を見る。

こちらもあちらも微動だにしない。

隠れているという事は奇襲を前提としているのだろうし、足を止めた以上、すでにこちらが気付いている事はわかっているはずだ。

であればその事実そのものが相手に対するプレッシャーにもなる。

しばらく膠着状態が続いたが、やがてヨーイチが視た、その木の影から1人のエルフの男が姿を現した。

「──いやー。実はちょっと盗賊みたいな奴らに追われててさ。追手かと思ってびっくりして隠れちゃっただけなんだよ。あんたたちに敵対するとかそういうつもりはなかったんだ」

男は両手を軽く上げ、手のひらをこちらに向けて何も持っていない事をアピールしながら近づいてくる。

このゲーム世界でも敵意のない場合はこのような仕草をするのが一般的だ。

これだけではこの男がプレイヤーなのかNPCなのかはわからないし、男の言っていることが本当なのかどうかも不明だ。

しかし盗賊に追われていると言っていたが、ヨーイチたちはそのような者は見ていない。

仮にこの男がヨーイチたちが向かっているのと逆の方向へ逃げていたとするなら、その盗賊とやらとヨーイチは今頃すれ違っていなければおかしい。

同じ方向へ逃げていたとするなら、ヨーイチたちはどこかで盗賊を追い抜いてしまったということになる。

またヨーイチたちよりも先に盗賊がここを通り過ぎていたのなら、この男もいつまでも隠れている必要はない。

それに男が隠れていた場所、つまりこの街道だが、ここに盗賊が出たという話も疑わしい。

この街道はヒューゲルカップの街とダンジョンとを繋ぐものであり、当然商人や一般市民が通るような道ではない。街道といっても敷石などで整地されているわけでもなく、なんとなく草が禿げているだけである。

ここを通るとしたら傭兵か騎士たちくらいであり、そんな者たちをターゲットに盗賊行為ができるほどの実力があるのなら、木に隠れているだけの男を見逃すはずがない。

となればこの男の話は嘘である可能性が高い。

加えて言うなら、男の種族も気にかかる。

男は見るからに傭兵といった風体だが、NPCでエルフの傭兵というものをヨーイチはほとんど見たことがない。プレイヤーのエルフ率の高さも考えれば、エルフの傭兵を見たらほぼ確実にそれはプレイヤーである。

プレイヤーが街道脇で木の陰に隠れ、通りがかる傭兵を待っていた。

これほど怪しいシチュエーションはない。

「止まれ。それ以上近寄るな。動いたら射る」

ヨーイチはインベントリから素早く弓矢を取り出してつがえ、男の胸に狙いを定めた。

男の実力は『真・真眼』で見えるLPから考えると中々のものだ。ヨーイチたちトップ層とまではいかないだろうが、準トップ層くらいの実力は備えているものと思われる。

この男のビルドや身のこなしによっては回避されることもありうる。ならば的の小さい頭部よりも避けづらい体幹の中心部を狙うべきだ。

「おっと、そんな物騒なものは下ろしてくれよ。こっちは善良な一般市民だぜ」

「──善良な一般市民っつーのはな」

隣でサスケがスローイングダガーを構えた。

「コソコソ隠れて背後から近寄ったりはしねーんだよ!」

そして振り向きざまにダガーを放つ。

『投擲』ツリーの『ナイフ投げ』や『ジャグリング』でサポートされたその一投は、重力などまったく感じさせないような直線の軌道を描き、背後から摺り寄ってきていたもう1人の男の太ももに突き刺さった。

背後に伏兵がいることは最初から分かっていた。

警戒して武器を構えたのは男が嘘を言っていたからというだけでなく、背後にも1人伏せていることが分かっていたからだ。

足に当たったのはサスケがそう狙ったからだろう。

ヨーイチであれば命中率を重視して身体の中心、心臓などを狙うところだが、サスケは尋問することなどを考え、行動力を奪う意味で足を狙ったのだ。

様々なスキルを取得している2人が狙いを外すということは基本的には有り得ない。

今のサスケの例で言えば、まず『投擲』、『ナイフ投げ』、『ジャグリング』などのそれぞれの効果によって、命中率やナイフの軌道に大きなボーナスを受けている。軌道に対するボーナスというのはナイフが直線で飛んでいった事であり、風や重力のような自然現象の影響を受けずに投げることが可能になっている。速度や命中率についても同様だ。たとえ胴体に比べて細い脚だとしても、サスケがその狙いを外すことはない。

もっともそれも相手が適切な回避行動を取らなければの話だが。

「──ちっ」

すると前方にいた男の方も剣を抜き、姿勢を低くしてヨーイチに向かってきた。

ヨーイチも躊躇することなく男に矢を放つが、これは男の腕に弾かれてしまった。

よく見れば男は掲げた腕にナイフを握っている。二刀流というわけだ。

矢はあのナイフによって『パリィ』されてしまったようだ。

このタイミングであの速度の矢を『パリィ』出来たとなれば、やはりこの男は只者ではない。

背後の男も同じ程度の実力者であるとしたら、サスケが足にナイフを当てることができたのも不意打ちのような形だったからにすぎない。サスケには後でもう少し慎重にやるように言っておくべきだろう。

弓兵であるヨーイチが、このように接近戦を得意とする敵と一対一で相対するのは不利としか言いようがない。

こういった場合やミラーマッチなどのためにも、通常、弓系のプレイヤーは近接武器として扱いやすいダガーや短剣のようなものをサブウェポンとして用意しているものだ。

しかしヨーイチに限ってはそれはない。

なぜならヨーイチは弓を愛し、弓に誇りを持っているからだ。

「ふっ!」

文字通り矢継ぎ早に男に対して矢を射るヨーイチ。

男はその悉くを避け、弾き、距離を詰めんと走り寄ってくる。

弓兵にとっては非常によくない状況だ。このまま接近されてしまえば、為すすべもなく斬り伏せられてしまうだろう。

しかしそのようなことをむざむざと許すヨーイチではない。

「ふっ! ふっ! ふっ!」

ヨーイチは矢を射る速度をどんどんと上げていく。

矢が飛ぶ速度は変わらないため、避けること自体はこれまで通り可能だろう。

また威力も同じため『パリィ』でも十分対応できるはずだ。

しかし飛来する間隔は確実に短くなっている。

『パリィ』をしても、その振るったナイフを戻す前に次の矢が目の前にある。

避けたと思っても、その避けた先にもすでに矢が置いてある。

いつしか男は足を止め、全力を振り絞って矢の処理に追われていた。

可能な限り回避をし、どうしようもない矢だけを『パリィ』するしかない。

それも両手に持った剣を使ってだ。片手だけで対処できる攻撃密度ではない。

それでも躱しきれず、防ぎきれずに男をかすめる矢も多い。

負った矢傷から流れ出す血が少しずつ自分のLPを削っているのは男にもわかっているだろうが、どうしようもない。

もはや退くこともできない。

少しでも違う行動をとれば、即座に急所を射ぬかれる。

ヨーイチはそんな男を冷静に観察しながら、その手を緩めることはない。

対する男の目には焦燥と敵意が浮いている。

「やはりプレイヤーだったか。PKというわけか」

彼がNPCなら、この状況でまず真っ先に感じるのは死への恐怖だろう。もう男が逃れる術はない。

しかし男は答えない。そんな余裕もないはずだ。

全く疲れを見せないヨーイチに対し、男の回避は次第に生彩を欠いてきていた。

矢を弾く腕こそまだ動いてはいるが、その膝は少し震えてきている。体力の限界が近いようだ。

「なかなかの腕だったが、スキルを使うほどでもなかったな。お前程度のPKごとき、通常攻撃だけで十分だ」

その言葉を聞いてか、それとも単純に体力の限界が訪れてか。

男は手元を誤り、肩にまともに矢を受けた。

だらりと垂れさがった腕ではもはや矢を防ぐ事はできず、最後の一射をその額に受けて、男は消えていった。

「──別にいいんだけどよ。出来るんなら、スキル使ってもっとスマートにやれや」

「む。終わったか」

サスケの方はとうに片を付け、後ろで眺めていたらしい。

「矢はインベントリから出すだけだし、実質無限に撃てるのは確かだが……。矢だってタダじゃねえんだぞ。野盗1人キルすんのにいくら使う気だよ」

「使ったのは一番安い、普通の矢だけだ。特殊なものや、高いものは射ってない。それにこのほうがかっこいいだろう」

「……まあわからんでもないが」

「ところで、尋問はしたのか? 奴らはなんだったんだ?」

「ああ。お前も看破したみたいにこいつらもプレイヤーだった。尋問しようとしたところで自害でリスポーンだ。まー普通のPKだな。つっても通りがかるキャラクターをキルするって点においちゃ獲物はプレイヤーだろうとNPCだろうと変わらんから、PKってよりは追い剥ぎ強盗だが」

現在、2人がいる街道はダンジョンからヒューゲルカップへと続いているものだ。

イベント期間中は街から街への転移ができるが、終わってしまえばそれも出来ない。

行きたい街があるのなら、そこから一番近いダンジョンに転移して、歩いて向かうのが手っ取り早い方法だ。今のヨーイチたちがそれである。

それを考えれば今の追い剥ぎのターゲットはプレイヤーがメインだった可能性が高い。

イベントが終了した今、このタイミングでヒューゲルカップをわざわざ目指すプレイヤーはそういないだろう。特にトップ層ならなおさらだ。彼らはイベント中はほとんどヒューゲルカップに詰めていただろうし、そこから離れこそすれ、向かっていくケースは考えにくい。

通常の盗賊ならこの辺りを狩り場に選んだりはしないだろうが、目的がPKなら別だ。

あまり人通りが多いようではかえって襲撃しづらいだろうし、そういう意味ではPKの狩り場にここを選んだのは悪くない。悪かったのは運である。

「今後も彼らがここでPK活動を続けるのかは不明だが、一応SNSで注意喚起くらいはしておいたほうがいいだろうか」

「余計な事すると逆恨みしたPKに無限に狙われることになるかもしれんし、まあほっとけばいいんじゃねーの? 街の外で油断してる方が悪いと思うぜ」

「……ふむ。そうかもしれないな」

ヒューゲルカップの街はイベント中のような熱狂的な活気こそ無くなってはいるものの、他の街よりは活気がある。

これは大天使討伐が始まる前でも同じだったため、領主の経営手腕の賜物だろう。

かつて訪れた時のように、道ゆく人を捕まえて場所を聞く必要はない。

2人はまっすぐ傭兵組合へ向かった。

「あ! 生きてたんですか!? いえ、よかった生きてたんですね」

組合の建物へ入ると相変わらず閑散としており、カウンターには支部長であるコウサカしかいなかった。

そのコウサカはヨーイチ達を見るなりそう言ってきた。

生死はともかくクエストを達成した結果遺跡が稼働した事については支部長も知っているだろうし、生きていたならもっと早く来いという嫌味だろう。

「遅くなってしまったが、クエストの報告だ。証拠となる物はないが、調査は完了した。事前情報の通り、この街の地下には暗渠のようなものがあり──」

調査依頼のようなクエストの場合、多くは証拠となる物品も一緒に持ち帰ってくることが条件となっている。

報告内容がその証拠品や状況などと矛盾がなく、かつ依頼主が納得すれば達成として報酬が支払われるのが一般的だ。

この納得という部分は非常に曖昧であり、いわば依頼人の胸三寸とも言える。

そのため本来、調査依頼はあまり受けたがる傭兵がおらず、ヨーイチたちもキークエストという疑いがなければ受けなかった。

とはいえそこで報酬を渋るようなら依頼をこなした傭兵も黙っていないだろうし、組合としても報酬を渋られては商売に差し支えるため引くことはない。組合も普段は傭兵をわざわざ守ったりはしないが、金や経営にかかわる場合は別である。

依頼人としても、暴力を生業としている傭兵や、大陸中に支部を持つ組合と険悪になってまで報酬を渋るメリットはないため、調査結果が納得できないとゴネられるケースは実際には稀であるようだが。

「──はい、わかりました。といってもすでにお2人が調査を完遂したであろうことは上の方から連絡が来ていたんですけどね。

こちら、報酬になります」

形だけという風で報告を聞いたコウサカは、用意してあったらしい報酬を差し出してきた。

それなら報告の前に言ってくれれば無駄に話さずに済んだというのに。

そう考えながらもヨーイチは報酬を受け取った。

組合を出たヨーイチたちは宿を取ることにした。

すぐにでも明太リストの言っていたリフレの街とやらに向かってもいいのだが、その前に落ち着いた場所で貰った報酬を確認しておきたかったためだ。

それはリフレの街でも出来ただろうが、このクエストはあくまで2人で受けて完遂したものである。

他のメンバーのいるところで、その報酬を見せびらかすように確認するのは憚られた。

「──金貨、はいいとして、だ。なんだこりゃ」

報酬は金貨の他にもうひとつ、水晶で出来た羅針盤のようなものがあった。

すべてが水晶で出来ているのなら羅針盤として使う事は到底出来ず、ただの置物にしかならないが、この形状と雰囲気には覚えがある。

「これ、地下にあったやつと似てるな。あっちはもっと突起がでかくて、日時計みたいにも見えたもんだが。こっちはもっと羅針盤に近いな」

「妙だな。クエスト完了の記念品という事なら、街の地下のアーティファクトと全く同じ形の模型にするはずだ。似てはいるが、わざわざ違う形ということは、これは単体で何か意味があるものなのか……?」

「──お? 動くぞこれ」

サスケの手の中で羅針盤が回る。水晶で出来てはいても、構造としては普通の羅針盤と同じらしく、傾けても盤は水平を保ち、針はどこか一定の場所を指しているようだ。

「アイテム鑑定は目利きのルーペだったか? ……おお、何も見えんぞ」

「公式の説明では、一部のキャラクターに作られたアイテムは調べることができない、だったか。普通に考えれば、人物鑑定同様に作成者のランクが関係していると見るのが妥当だ。

ギノレガメッシュの盾を調べることができたということは、少なくとも俺たちと同格か、少し上くらいのランクのアイテムなら調べられるという事だ。それが無理となると──」

「聖女級か、それ以上のキャラクターが作ったアイテムだってことだな」

前回イベントの「精霊王の心臓」や、今回の「レディーレ・プラエテリトゥム」のように、アーティファクトに分類されるアイテムであれば触れば大まかな内容はわかる。それがないという事はこれはアーティファクトではない。

通常のアイテムであるにもかかわらずランクが高いというのはこれまでにあまり見たことのないケースだ。

「いや、せっかくなんだから、高ランクアイテムくれるってんなら武器とかの装備品にしてくれよ……」

「しかし、あの時サスケが言ったように、あのクエストが本来今の俺たちではクリア不能な難易度だった場合、報酬であるこのアイテムも大天使との戦闘並に分不相応な物である可能性もある。

普通に考えれば、大天使戦同様に領主か聖女に話を聞きたいところだが──」

普通に考えれば、だ。もちろんそれは出来ない、というか、そうしない方がいいと思える理由もある。

「ただでさえ、騎士とかのNPCには受けてほしくなさそうだった依頼の報酬だしな。これを領主とか聖女なんかのNPCに丸投げするってのはマズイ気がするよな」

「ああ。運営の息がかかっているかもしれない傭兵組合の直々の依頼だった事を考えるとなおさらだ。ここはひとつ、このアイテムの詳細を探るのもクエストの続きだと考えて行動した方がいいかもしれん」

羅針盤の針が指しているのはどう見ても真北ではない。

いや、北ではあるのだが、少しだけ西に逸れている。

これが普通の羅針盤であれば、素直に北を指すだろう。

仮に別の方角を指すよう作られていたとしても、こんな中途半端な方向を示したりはすまい。

それ以前に、総水晶製の針でまともに方角がわかるとは思えない。

つまりこのアイテムは、魔法やスキルなどのゲーム特有の不思議パワーによって、特別な何かの場所を示していると考えることができる。

「どうする?」

「どうする、ってのは、この後の動きか? 違うよな。このアイテムについて他の連中に話すかどうかってことだよな」

「ああ」

ウェインたちとは同じクランでやっていくことを約束した仲だ。

彼らの事は信頼しているし、それは向こうも同じはずだ。

「──これが何なのか、わかってからでもいいんじゃねえかな。あいつらの事が嫌いなわけじゃねえが、30人からを引き連れてぞろぞろ探索って感じでもねえし。もし俺たちの手に負えねえようなら、そん時は謝って手を貸してもらおう」

「そうだな。俺も同じ事を考えていた。もう少し、俺たちだけでやれるところまでやってみよう」

クランと言っても、常時行動を共にするというわけではない。

どこかのダンジョンの攻略や、レイドでボスに挑戦するような時はもちろん力を合わせることになるだろうが、それ以外の行動は基本的に自由だと言われている。

システムで縛られているわけでもないし、クランマスターというものも厳密に決めてはいないが、それに近い立場にいるウェインにしても、アマテインにしても、あまり他人を縛るタイプではない。

「じゃあまず、リフレの街ってところに行って、クランハウスとやらを借りて、まあ結成式みたいなこととかはするんかな。とにかくそういうアレコレが終わったら、この針の示す先に向かってみようじゃねえか」

「ああ。ここからリフレの街はそう遠いわけではないが、近いわけでもない。もし針が大陸のどこか特定の場所を指しているとするなら、移動すれば今指している北北西から少しずれた方角になるはずだ。教授の作ったスゴロク地図も使えば、その差分が作る交点からおおよその位置は割り出せる」

「──ヨーイチってよ、見た目の割にたまにクレバーな事言うよな」

「見た目に関してはお前にだけは言われたくないが」

「こっちのセリフだそれは!」