軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

9.クランメンバーと初めての団体行動

さて、今日はそろそろログアウト。

ゲームを始めてからずっと始まりの平原でログアウトしていた。

フィールドでのログアウトはどうぞお気になさらずといった感じなのだが、街中は違う。

このゲームはNPCに気を使わねばならない。突然消えて突然現れたら、彼らに記憶障害が起こるという。なるべく人影のないところとか、一番推奨されているのは、宿だ。

ということで、ダンとビルに聞いたオススメの安い宿に来てみた。

本へ注ぎ込みたいから金はもったいないけれど、一度くらいは泊まってみたい。

宿屋の扉はオープンタイプ。

セツナが入っていくと、少女が駆けてきた。

「いらっしゃい! 一晩50シェル。朝ご飯をつけるならプラス20シェルだよ!」

「1部屋頼みたいんだが、来訪者なので数日滞在するかもしれない。出てくるまでは放っておいてもらえると助かる」

「ああ、アランブレへようこそ! 来訪者の体質は把握してるよ。来訪者割引もあるし、初日の金額もらえたらあとは後日精算。1ヶ月起きなかったらゲート送りにさせてもらうね!」

アランブレの3日がリアル世界の1日だ。10日でゲート送りということだ。

このゲート送りというのは、街中でも、ログアウトした場所に出るとき誰か人と重なっていたらデータの安全のため、セーブポイントのあるゲートに送られる。セツナの場合まだ他の街には行っていないのでアランブレだ。

それと同じように10日ログインしないと強制ゲート送りになる。宿屋に泊まっていた際は、所持金から滞在費を引かれて送られるのだ。

まあ眠っている間にやるゲームだし? 10日ログインしないことはない。

「それでお願いします」

「はいよ、お客様1名様ご案内!」

奥から男の声でいらっしゃいと聞こえた。

「身体を拭くなら中庭の井戸で。トイレは共同廊下の突き当たりだよ」

トイレまであるとは。したからといってすっきりはしなさそう。これはNPC用なのだろう。

「風呂はないのか……」

「おや、故郷は裕福な生まれかい? 下町に風呂持ってるなんて豪邸構えてるやつくらいだよ。それかよっぽどの風呂好きさ」

まあ、そんなものか。リアルの風呂で我慢します。

案内された部屋はベッドのみの簡素な部屋。

清潔な安宿を所望したのでまあこんなもんだろう。

「それじゃ、ごゆっくり~」

俺は少女に片手で挨拶をすると、ごろりと横になった。

本日も退社からの急いで自分事を片付けてログインだ。

「お客さん、早かったね」

ゲーム内で2日は経たなかった。来訪者割引で90シェルを払うと宿を出る。というか、安いなぁ宿屋。ここだけなんかやたらと価格破壊。

「またのご利用をお待ちしてます!」

まあ、宿屋だけ価格破壊されてるのはたぶん、ユーザーに街中で適当なログアウトをされないためかと思った。

始まりの平原ならログインした途端おかしな敵に遭うこともあるまい。

金は、本にかけるに限る!

『おーい、セツナ!』

『ソーダ、どうした?』

『チュートリアル終わった?』

『おう、終わった』

『ならさ、クランメンバーと一緒に軽く狩りに行かない?』

『レベル差ありすぎて足引っ張らないか?』

『リザレクション持ちいるから大丈夫w 何度転んでも起こしてやるよ』

と言うことで待ち合わせ。なんと、始まりの平原の隣のマップだということで、始まりの平原でミュス狩りをしながら移動だ。

「あー、セツナくん! ……ど安定黒髪黒目! 反対に珍しいよね」

たぶんこれがピロリ。ピンクのツインテールで毛先が藍色という謎。布の限界に挑戦してる。白い水着のような上半身に、腰巻き……パレオ? 水着だ。変態だな。武器は双剣。

「よろしくセツナ君。チュートリアルどんなだったか後で教えてください」

こちらが八海山。黒い牧師さんのような詰め襟の長い服。下にはズボンを穿いているっぽい。分厚い本を手に持っていた。犬耳生えてる! 尻尾も、服を貫通してる! 青ベースの髪の毛にグレーが混ざり、グレーの犬耳。

「初めまして、拙者半蔵門線でござるwww」

「初めましてセツナです。よろしくお願いします」

上から下まで黒づくめの……わぁ……忍者だぁ! こちらは同じくヒューマンタイプかな?

「残念ながらまだ忍者の職が見つけられておらぬので斥候中でござるよ」

正しく心を読まれた。

「病は気からと言うように、忍者は外見からでござる!!」

「何か忍者に関することを見つけたら知らせるね」

「頼んだでござる!」

パーティーを渡されたので入る。今日はこの五人で行くらしい。

『クランメンバーもう2人いるけど、まあ前作から一緒なのはこいつらだけ』

『突然のサ終、からの新作発表だったもんね……VRの質を上げるのに、上書きじゃもう無理になったみたい』

『まあその分前作やっていたユーザーにβ優先与えられたから』

『βダッシュが最近だと微妙でござるよ。このゲームやることが多すぎ』

忍者になるための修行は辛いようだ。

『初心者必見の面白い場所があるから行こう。レベルはたぶん関係ない』

たぶんが怪しいんだよ。

ということで現場に着いた。

『他パーティーもいくつかいるなぁ』

ソーダがぼやく。

『ここたまに良い装備釣れるから、一日一回遊びにくるって人のSNS見たわ』

『拙者も通りかかればついでに釣っていくでござるよ』

『五人分払って来たよ』

八海山から釣り竿を渡された。

そう、ここは釣り堀? とても大きな池に、足場がいくつもせり出していて、皆が釣り糸を垂らしていた。

セツナたちもそのうちの一つの先に陣取りそれぞれ釣りを始めた。

『餌は?』

『なくていい。太公望の池なんだよ、ここ』

つまりここは渭水か。池だけど。

釣果は……微妙なものがたくさん取れる。

石、空き缶、長靴というお約束の物から、錆びたナイフ、名も知らぬ胸当て、誰かのパンツ、という一応装備品。さらには、にじんで宛名のわからないラブレター、裏帳簿、偽札。

よくわからないが、自分たちの周りがゴミに溢れていくのが嫌で【持ち物】の中に詰め込んでいく。

『脚絆を手に入れたでござるっ!!』

『ええぇ~こんなとこに捨てられてる脚絆とか気持ち悪そうっ』

『うるさいっ! あとは足袋でござるよ、草履は伝手を作ったのであと少しで忍者スタイルがっ!!』

こだわり抜いててそれはそれで楽しそう。

ちなみに俺が釣った中で興味を引かれたのは、赤い押し花の栞。謎の瓶。謎ってなんだろうな。

と、八海山の糸がぐっと水面に沈み、さらに竿がしなる。

『大物の予感!』

すぐさまソーダも駆けつけ一緒に竿を持つ。

『おい、ピロリも手伝え!』

『ええー、私かよわいしっ』

『一番の腕力お化けが何を言う! 早くしろよ、これは……出たぞっ!!』

『たぶん、セツナ殿の【ビギナーズラック】のおかげでござるね』

お役に立てたのなら良かったです。