軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

7.レアルートと生活魔法

鬼神の如く、俺はミュスを狩り続けた。夜になると彷徨くバッドバットというコウモリのようなモンスターは少し手強かったが、怒りに身を任せた俺の前で無惨な塵と化した。

バッドバットは羽が薬の材料になるらしいので、しっかり集めた。不思議と重量制限に引っかからず、初心者の初期設定重量100を越えても、150/100などという1.5倍表記になり、無限の可能性を秘めた俺の【持ち物】はミュスの尻尾とバッドバットの羽で埋め尽くされた。

後で聞いたところ、チュートリアル中は持ち物無制限になるらしい。

何度もログイン・ログアウトを繰り返し、ミュスとバッドバットを狩り続ける。

最終的に、ミュスの尻尾365、バッドバットの羽根180対を手に入れていた。

ちょうど一週間して、八海山の言った通り、ミュス乱獲をしていると、兵士と子どもと大人の女性が走ってくるのが見えた。

なんとなくイラッとして、ダッシュで逃げようとするが、この草原で鍛えた足運びをもってしても追いつかれる。

強制イベント発生だ。

「にいちゃぁーん!!」

「待ってくれー!」

そして、トムが人攫いではないと話してずっと探していたと言われた。

ずっとここの平原にいたが?

さらにイラッときたので持ち物から大量のミュスの尻尾を取り出して見せた。大人二人が目を丸くする。

「いえいえ、誤解は誰にでもありますから。おかげで狩りが捗りましたよ。ハハハ!」

可愛いミュスの成れの果てにトムはまた涙目になっていた。ザマアミロである。今後もミュスは接敵からの斬首の刑だ。我が仇敵と見なすことにする。

誤解が解けたことで早速冒険者ギルドに向かう。金がたんまり手に入る!

「納品お願いします」

どっさりミュスの尻尾とバッドバットの羽根を渡すと、受付のお姉さんは目を輝かせた。

「最近ミュスが増えてて心配だったんです。こんなにたくさん狩っていただけるとは、助かります! トムくんの件も聞いてますよ。災難でしたね。街でゆっくり休んでくださいね」

尻尾365×50=18250

羽根180×200=36000

合計54250シェル。100冊は借りられる!

一週間狩り続けた甲斐があった。

アンジェリーナさん成分が枯渇している。早く、早く貸本屋へ!

その前に、八海山にクランチャットを送る。

セツナ∶

先日はありがとうございました。無事誤解が解けて街の中に入れました。

ピロリ∶

聞いたよ〜レアルート引いてるって。トムからミュスの木彫りの根付もらった? あれ、そこのルートでしか手に入らないから一部の好事家に高値で売れるよ。初期の敏捷アップのアクセサリーとしても優秀だし。

セツナ∶

いえ……貰えなかったです。

ピロリ∶

え!? おっかしいなぁ……

セツナ∶

もしかしたらまた泣かせたからかも?

ピロリ∶

えwww

八海山∶

セツナ君何したのwww

セツナ∶

たぶんあのガキが大好きなミュス虐殺しまくったからですかね? 山盛りの尻尾見せたらまた泣きました。

ピロリ∶

www

八海山∶

楽しそうで何より。チュートリアルは? まだ続いてる? そのあとトム関係が多いから、もしかしたら話変わるかもしれないね。他の街でチュートリアルやる羽目になるし、ミュスの根付はたしかにいいけど、余計な時間がかかるからって、初期引っかかった人以外あんまりそっちルートわざわざやるやついないんだよね。ほぼ皆無だよ。どんなストーリーくるか教えてください。

セツナ∶

ナビゲーションオンにしたら出るんで続いてはいますね。また何かあったらお願いします。

二人は楽しみにしていると言っていた。

さあ、いざ行かん! この世の楽園へ!

カランとドアベルが鳴る。

「あら、久しぶり。聞いたわ、酷い目にあったみたいね」

「お久しぶりですアンジェリーナさん。まあ、ちょっとした行き違いですんで俺は気にしてないですよ」

あのトムの泣き顔で溜飲は下がった。大人の余裕で許してやったのだ。

それにしても今日も美しい……アンジェリーナさんホットパンツに上着を腰に巻いてるんだよ。目の毒です。本当にありがとうございます。

100冊も借りられるとなると、吟味する必要性がない気がする。せっかくだから棚の端から端まで読んでやろう。

俺は興味を引くタイトルを片っ端から選んでみた。剣士として剣の道を行くのも楽しそうなんだが、せっかくなら魔法も使いたいなぁなんて思いもある。

剣も魔法も使えたりしないのかなと考えていた。なにせVR。魔法のエフェクトとか楽しそうだ。

てことで魔導書5点!

『必見! 初心者魔法使い集まれ〜』

『魔法と効果』

『魔剣の魅力』

『魔法使いの弟子』

『生活魔法沼』

「魔法使いに興味が出たのかしら?」

「物理一辺倒だったので、魔法が使えるということに興味が……」

「あなたの世界は魔法がないのね! 新しいことって興味深いわよね。わかるわぁ」

「魔法に関する書物も初めてです」

書籍大好きアピールは欠かさず。

「また席を借ります」

魔法に関してはどれもこれも楽しそうだった。いやぁ、本当に魔法使いはアリよりのアリ!

ただ、ミュス狩りがなぁ。捗らん。やはり剣と魔法……魔法剣士! そんなような記述が『魔法使いの弟子』や、『魔剣の魅力』にも書かれていた。職業として成り立ちそうだ。

あと一番面白かったのは意外や『生活魔法沼』だ。タイトル通り、普段の生活のちょっとしたことに使える生活魔法についてたくさん書かれていた。

物に火を付ける【着火】。焚き火にはちょうど良い。

手のひら1杯分の水が手に入る【補水】。熱中症対策、顔を洗う、便利だ。

服や手を綺麗にする【洗浄】。覚えたらアンジェリーナさんに会う前に毎回己をきれいにしなければ。

時間を知らせる【アラーム】。周りにも聴こえるので、話の長い相手から逃れるチャンスを作る。さも、予定通りの時刻になりましたよと逃げられる。

びしょ濡れになった髪の毛を乾かす【温風】。それと対になる【冷風】。暑い夏の長蛇の列に並ぶにはピッタリだ!

持ち物を少し冷やす【冷蔵】。

ほんの少量の液体を凍らせる【冷凍】。

コップ一杯の水を熱湯に変える【沸騰】。

直ぐ側の小石程度のものを手元へ呼ぶ【引き寄せ】。

などなど、ちょっとした生活の知恵的なものがまだまだたくさん細かく説明されていた。

ここら辺は冒険者ではない街の住民も使えるらしい。

自称生活魔法の達人という独身男性の、生活魔法を駆使した自堕落生活についてだった。

沼だ。そこには自堕落の深い沼が広がっていた。