軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

391.星々の欠片を目指して

クランハウスで相談会を開いた。

みんな結構いろいろクエストを拾ってきているみたいで、それなりに忙しい。新しい都市が開けばクエストは山積みになるのだ。

「てわけで、俺と八海山はセツナと行くんだけどみんなの予定は?」

二階テラスにて、夕日を眺めながらのお食事会だった。

「私は~、一日待ってくれたら一緒に行ける。あ、リアルね。このあと、もうひと暴れしたら終わるとおもうのよね」

「拙者は第七都市に潜む者を探すのがメインでござるが、なかなかどうして見つからぬので気晴らししに行くでござる。いつでも出発OK」

「俺っち、第七都市の師匠のところで料理してるだけだから合わせられるよッ!」

「うう、私は色々遊んでいたツケを払わねばならぬのじゃ……香水瓶の納期が迫っているから、そちらを片付けたら行くのじゃ。先に行っててくれたらいいのじゃ。アランブレから聖地じゃろ? ヒビキと【フロストダイス】でなんとか一人でも辿り着けると思うのじゃよ」

生産職は色々大変だ。所属の仕方で制限があったりする。柚子は売れっ子香水瓶職人という立場になっていた。貴族関連のお仕事は納期が厳しいという。

「酒瓶職人になるはずだったのに、なかなかそちらにいけないのじゃぁ」

しくしく泣き真似をしていた。

泣き真似しながら案山子のご飯を食べる手は止まらない。

「じゃあピロリのクエストが一段落ついたら行ってみるか。退魔の書のアップグレードとか、一番最初に手に入れたいしな」

「あのあたりは、聖地への道のりが開かれた後に現れたマップだから未知数だな」

「未知数マップへは突撃隊がだいたい行ってるでござるね。ざっと見たところ突撃隊レベルではモンスターが強すぎて通れないらしいでござる。彼ら……死に戻り上等で行くからもともとレベルが上がりにくい……いや、経験値を投げてるでござるから」

そんなに強いところなら、俺たちだけで大丈夫だろうか?

「アンジェリーナさんがお前に採ってこいって言ったんだろ? たまにあるんだよ、条件揃うまで運営が意地でも通さないマップ。たぶんそういったマップだったんだろうよ」

「都市開放なんかがそうね。都市の先のマップも迂回して行けば通れることは通れるけど、開放されるまでモンスターが突然即死攻撃とかクリティカル連発してくるの」

あくまでその先に道はあるが、通すことはできないマップか。

「友だちを誘ってって言われてるからたぶん一人じゃ難しいと、NPC目線から判定されたんです。あと……退魔師を連れていけとも」

あっ……八海山が目に見えて動揺している。

「レイス系かぁ……」

「【ダークストライク】だねッ」

「セツナくん、聖属性の付与触媒作っておいてくれない? 汎用でいいから。もちろん手間賃と素材代は払うし付与代も払うわ。クエスト終わらせる方を優先したいから」

「拙者も、聖属性はこちらの専用触媒が心許ないでござる。ピロリ殿を待つ間に行くのがよかろうかと」

「それなら花もだけど枝も行こうかな」

水で力増ししても、ピロリと柚子がいなくてもいける気がする。

花は昼間と夜行かなければならないので、まず枝から取りに行った。

昔を思い出す。ヴァージルとアランがいるパーティーは恐ろしい勢いだった。パワー系NPCこえええとなったのがいい思い出。

そしてこちらも……なんだかんだで強いんだなと実感した。

水でドロップマシマシも普通に倒せたのだ。

日をまたいで花狩り。昼間から夜も危なげなく終了。むしろ半蔵門線の追加お花の数がやばかった。

つまり夜が凄いことになりました。

昼間のうちに触媒にしてもらって出発準備完了。

こころなしか八海山の元気がなくなりつつありながらも、ピロリもクエストを終わらせ、いざ出発。

モンスターの強さはそれほどではない。

『トリガーのセツナがいるから、道中は余裕だろう』

『NPCからの強さお墨付きもあるしッ!』

何より騎獣で移動するから楽なのだ。うちのぎょろちゃんは今日も元気に足から火を噴いている。たまーに長い舌でべろっとモンスターを捕まえてくるので串刺しにするお仕事。

『ぎょろちゃんは本当にお利口さんね~』

ピロリが笑ってる。

空を行くタイプばかりではないので、基本地面からそれほど離れないで進む、俺が先頭を行って【気配察知】で逐一伝えるのだ。

やがて教えられていた村が見えてきた。こじんまりとした場所だ。その先のマップに俺たちの目的である、『星々の欠片』が採取できる木があるそうだ。

『オウル親方が、詳しいことは村の人に聞いてくれって』

『了解。騎獣を降りて行ってみよう』

村は牛やヤギが柵の内側で飼われ、たまに鶏の声もする。家がまばらに建っていて、人の姿が見えた。

『セツナで始まってることだから、セツナが会話も進めた方がいいと思う』

『了解』

とりま、村の人に聞き込みするところからだ。少し先にいる人に手を振りながら歩き出した。

「すみませーん、ちょっとおうかがい――」

「セツナ君! あっちだ。あっちの方だよ」

突然八海山が俺の声にかぶせ、珍しく大声で呼ぶのだ。

ううん?

どうした?

尻尾がすっかり股の間に隠れてますが、本当にどうした?

振り上げた拳じゃなくて、手を迷ったあげく降ろして引き返す。

『どうしました?』

『セツナ君……今行こうとした方に、人はいない』

『え?』

俺だけじゃなく他の面子も怪訝な表情。

グレーのわんこは首を振る。

『影がないんだ』

言われてぶわっと鳥肌が立った。

そっと後ろを振り返って地面をチラ見するが、あるのは近くの建物の影だけ。うわぁ、動物の影もないじゃん。

『これって、この村がすでに死者の村ッ?』

『聖属性付与剣ぶん回していいの!?』

『いやあ……どうなんだろうな。敵対しないなら敵対しないで終わりたいんだが』

なんて話していると向こうからやってきた。

本当に見かけは普通の朗らかな村のおばちゃんだ。

「あら、こんにちは。旅の方?」

「あ、はいそうです。実はこの先にあると聞いた星々の欠片が必要で」

「ああ。色々な素材になるって聞いてるわ。ただあれの採取時間は真夜中だったはずよ。キラキラ光る綺麗な乳白色の実が成るの。その昔、この辺りは星が落ちてくる場所だったんですって。落ちてきた星の欠片があたりに散って、木がその欠片を養分として育ったら、星々の欠片が実として成ったのよ」

「そんな伝説があるんですね」

「ふふふ、なんだか素敵な話よね。夜中まではまだ時間もあるし、よかったらうちの食堂でご飯でもしない?」

「や、あ、いえ……」

おばちゃんと話している間に村の人がわらわらと寄ってきている。

「旅人さんを無理やり留めたら申し訳ないだろう。そうだ、道中うちで焼いたパンを食べていくのはどうだ? お安くしとくよ」

「うちの裏の木に成ったリンゴはどうだろう。一つ五十シェルだよ」

商人根性たくましい感じ?

ぐいぐい来るんだが、みんながみんな影がないんだよ。

でも気配はあるし、なんなら実体もある。

『なんか、押し売り?』

『いやー、そこまでではないけどちょっと怖い勢いだな』

みんな腰が引けちゃっている。

「申し訳ないんですが、夜採取する前に現地の様子を見ておきたいので」

「そうかい? じゃあ採取が終わったら寄っておくれ。今日はお祭りだから、明け方でも人がいるだろうよ」

ソーダが丁寧にお断りするとあっさり引いていった。

子どもが絶対来てねと手を振っている。