軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

300.決闘の方法

失礼すると声をかけ、ローランドを先頭に中に入る。どこの宿舎も同じような作りらしい。扉から入った場所は前室代わりの談話室、奥に食堂と眠るための部屋へ続く廊下が見える。 今は談話室に一緒にイェーメールからやってきた騎士たちが勢ぞろいしていた。

入って来た俺たちに視線が集まる。

「ローランド卿、セツナ……スキルを教えてもらったのかな?」

いつもと変わらないヴァージルにほっとする。さっきはちょっと本気で怖かった。過去一怖かったです。

「属性2つも教えてもらっちゃったよ」

「覚えが早くすぐに己のものにしていた」

それはまあ、ゲームなんでね! 条件揃えばするっと覚えます。

「そうか、それはよかった」

そこで俺気づきました。

他の聖騎士の表情が無であることを!!

たぶんローランドも気づいている。触れていいのか悩んでる。

仕方ない。俺が行くか……このまま帰ることもできたろうが、さすがにな。

「ヴァージルの方はどうなった? あの例の、手袋……俺でも知ってるよ、決闘の申し込みって」

聖騎士たちの緊張が高まる。

「ああ、今申請中だが、俺も奉納試合に出ようと思うよ」

と言ったところで再び扉が開く。

おおお、第10聖騎士団団長サイラス卿でございますよ。すごくすごく、厳しいお顔をしている。

「ヴァージル卿、……うちの部下が申し訳ないことを。アレのやったことは取り返しのつかないことですが、今回は許してはいただけないだろうか」

にこりと笑うだけのヴァージルに、あ……ローランドの尻尾がへにょんてなってる。さっきまでお話ししてるときはゆらゆら揺れてたのに。

「正直実力は天と地ほど違う。一方的な試合になるのは間違いなく――」

「取り返しのつかないことをしたのですよ、サイラス卿」

いつものトーンなのに秘めたる感情が一瞬表面に浮かんでくるんだ。肌がピリピリするような感覚に襲われる。

「それは、確かにそうなのだ。だが、3年に1度の奉納試合だ。彼らにとって晴れの場となる場所で、あまりに……」

「奉納試合なら殺すことはしませんから」

にっこりと。

笑顔と真逆な、ヴァージルによって紡がれた言葉に誰もが息を呑む。

「これが、手袋を放たれたのが来訪者で、それを来訪者が拾っていたら、サイラス卿はここまで止めようとなさいましたか?」

むっと押し黙るサイラスに、ヴァージルは続けた。

「もしセツナに当たっていて、貴族のしきたりを知らぬセツナが手袋を拾い上げ、大怪我を負うようなことになっていたら、あなたはどう対応したのでしょう」

「彼とリチャードは階級が違いすぎる。決闘になる前に終わっていた」

「終わっていた? つまり、手袋を投げつけた愚かな男は、それを見越して投げつけたということですか? とんだ卑怯者ですね」

おっ……あれって絶対受けなきゃいけないってわけじゃないのか。

「まあどちらを選んでいただいても私は構いません。奉納試合か、死んでも文句を言わない試合ではない、決闘か」

結局サイラスは大きな体を折り曲げて、ヴァージルに頭を下げて出て行った。

大惨事だよ。大惨事。だけど、だけど……ヴァージル親衛隊さんたち!! 朗報です!! ヴァージル奉納試合に出ます!!

「手加減してやれよ、ヴァージル」

「もちろん、格下に本気を出すわけがないじゃないか」

笑顔がこえーんだよ。

部下たちがずっと無なのが1番怖い。

「俺もその試合見られる?」

「……一般の参加は基本受け入れていないが」

受け入れてないんですってよおおお!! ちょっとー! 親衛隊さんたちピンチ!

「ただまあ、それぞれの観覧席にはその所属している領地の者たちが普通に出入りしているから、セツナが見たいなら入れるように手配するよ」

「さすがにあずかり知らぬところでは寝覚めが悪い! 眠りのタイミングが合うなら見に行きたいよ」

「応援してくれるんだね、ありがとう」

動画のためだよ、ヴァージル。あと、本当に、どうなったか気になるじゃん。

親衛隊さん!! 期待してくださいっ!!

「私も団長と少し話をしてくる。発端がこちらにあるようだしね」

「えー、そちらは全然悪くないし気にしない方がいいですよ」

「そうです。あくまで俺とヤツと……少しだけセツナの問題だね。セツナ……手袋避けるのは本当に想定外だったんだと思うよ」

「いやごめんて……俺打たれ弱いから飛んでくる物は基本無意識に避けちゃうんだって。後ろにヴァージルいるのにごめん」

当たったら死ぬものだったら、ヴァージル死んでたじゃんね。来訪者ならいいけどNPCには当てちゃダメだった。

「俺はセツナよりは打たれ強いから問題はないが、ね」

「なんなら叩き返してやればよかった」

こう、ぺいってさ。と振り付きでやったらヴァージルが笑った。後ろの騎士たちも、ローランドも笑っていた。

塔にある出口までヴァージルが送ってくれる。

「入れるのって俺だけ?」

「……ソーダたちも一緒に来たらいいよ」

「やった! 思い切り声出して応援してもいいの?」

「それはどうだろう。周囲の声量を見てやってもらいたいな。試合では完全に黙らせるつもりだけど、その後何かあってもいけないからね」

「でも、なんかそれじゃ全部ヴァージルに恨みが行くじゃん。本来出ないはずの奉納試合にも出てさ。結局1位かっさらうんだろ?」

「普通に俺よりも強い騎士がたくさんいるからそれは無理だと思う。リチャードと初手当たるようにしてもらうからそこからはまあ、ね」

「えーっ、出るならもう1位狙いにいけばいいのにって、そうしたらそうか、1位になるやつに負けたんじゃ仕方ないねになるのか」

ヴァージルは笑って答えなかった。まあそういうことだろう。

と、目の端に動くものを見つける。

反射的に 細剣(レイピア) を抜いていた。

「【突き刺し】」

その先にあるのは息絶えたミュスだった。

「げぇー、こいつこんなところにもいるの!?」

「まあ、ミュスだからな。1匹見たら30匹いると思えと言われるモンスターだ」

いやいやいやいや、それGだろ? え、ミュスってG扱いなの?

そのうちすっとミュスの姿が消え、俺の【持ち物】に尻尾がINされた。

「ミュスはこの世界が生まれたときから存在するモンスターと言われているからね。奴らの歴史は長い」