軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

3.美の女神アフロディーテ

「納品のミュスです」

カウンターにどんっと討伐証明のミュスの尻尾を渡す。

これ、尻尾は勝手にアイテムとして手に入る。尻尾を一つ一つとるんじゃなくてよかった。

「あの錆びたナイフで頑張ったな。ほら、初心者用ショートソードだ。これ持って、次は戦士ギルドに行ってみろ。場所は道沿いに立ってる兵士に聞けばすぐわかる」

たぶんこうやっていろいろな職業体験をさせてくれるのだろう。

ありがとうとお礼を言い、冒険ギルドをあとにする。

ギルドを出たところで目にとまった兵士がいたので近づいた。

「こんにちは。戦士ギルドの場所を教えていただけませんか?」

「戦士ギルドなら、この道を真っ直ぐ行ったところにある赤い屋根の大きな建物だ」

「ありがとうございます」

兵士に聞くと道に矢印が現れた。ナビゲーションがついているようだ。これなら道に迷うこともない。

「こんにちは! 冒険者ギルドからこちらへ向かうよう言われたのですが」

「おお、ゲートからの来訪者か。ようこそ、ラングドラシルへ。ここは王都アランブレ。そして私は戦士ギルドのギルド長だ!」

「セツナです。よろしくお願いします」

なんでギルド長が受付をやってるんだよ。

そうやって、戦士、魔法使い、斥候、弓師、聖職者の五つのギルドを巡らされ、最後にまた冒険者ギルドに戻ると、それぞれの初心者武器プラス、初心者の服と、初心者の靴、初心者の帽子を貰い受けた。

「使い終わった初心者の装備はここに持ってきたら有効活用するぞ!」

そうは言われたが、流石にもらってすぐ返すのは気が引ける。少し経ってから来よう。

そしてこれが基本職五職というやつらしい。

ギルドを回ったことで、初期のスキルが手に入る。その後スキルは様々なことに触発されて生まれる。そして使えば使うほど熟練度が増し、一定数値を超えればさらなるスキルが派生する。

この、触発されるスキルがなかなかに多いらしく、それを解析することに情熱を向ける者たちがいるとも聞いた。

道端のベンチに座り込み、さてどうするかと悩んだ。

基本ソロ活動である。ソーダに、仕事や生活の間に、別に戦闘もしなくていいと言うから遊びに来ただけだ。

ハイランカーになって、スポンサーが付いて動画配信して儲けようなどとは思っていないのだ。

ちなみに、そういったネタバレは、絶対に見たくない派なので、見ない。

まあ、本当に戦闘をしないわけではないが、誰かに合わせてログインは難しいのだ。

となると、うん、戦士だな。

ちまちま獲物を狩って、この世界の流れを楽しもう。魔法使いや弓師だと、接近されたらきつい。

本当に、ずいぶんと自由度が高いという話だった。メインストーリーもあるのでそれもゆっくり堪能したい。

しかも、やりたければ魔法使いもできるらしい。一次職を全部網羅できるそうなので、魔法を使いたくなったら魔法使いになればいいのだ! どんなスキルが生えて来るのかわからないので、一次職はみんな色々と試しているという。

ちなみにギルドを巡ったら、レベルが2になった。

筋力は必要なので、レベルアップに伴うステータスポイントは筋力にすべて注いでおいた。

結果このようなステータスになった。

筋力 10 +10

知力 5

耐久力 5+10

命中 5

器用さ 5

敏捷 5

幸運 5

+10表示が戦士を選んだ結果のジョブボーナスらしい。つまり、微々たるもの。他ステータスがすべて5なのはヒューマンタイプだから。他種族は多少ばらつきがあるという。

今日はあと1時間くらいしかできないので、街なかを巡ろう。

街の作り込みもすごい。石畳は踏みしめてる感触があるし、建物の壁もざらついている。これは流行るのもわかるなぁ。

「人の家の壁がそんなに気になるか?」

窓の向こうから髭面のオヤジがこちらを睨んでいた。頭の上の文字がオレンジ色なのでNPCだ。

「あ、すみません。ゲートから来たばかりで……向こうと壁の材質が違って興味深くて触ってしまいました」

NPCはNPC扱いをすると怒る。あくまで物語に没頭せよというのが運営の方針だ。

言い訳にもひと手間いる。

「ああ、来訪者か。そんなに壁が違うのか?」

髭面オヤジは家の中から出てきて俺の隣に立った。

「俺の住んでいた地域は木かコンクリートで、この石のような手触りは珍しいんです」

「ほぉ、木の家か。それは面白いな。俺の名はハザック。建築士だ。今度その木の家について聞かせてくれ」

「セツナです。専門家じゃないので詳しくはありませんが、また今度。今日は少し辺りを見てまわりたいので」

「おう! アランブレはすべて揃う場所だ。楽しむといい」

俺が入り込んだ道は、どちらかと言うとここに住む住人の生活道路だったらしい。店の看板はなく、扉はあるがそれが開かれることはなかった。

と、そんな住宅街に看板が現れる。

本のマークだ。たぶん。

「本屋か?」

ゲームの中の本屋とか、魔法の本? とにかく面白そうなので、入ってみよう。

カランとドアベルが鳴る。

本の匂いがした。嗅覚にも対応しているとは、やはりすごいゲームだ。

「いらっしゃい」

本が所狭しと並ぶ中、奥から女性の声がした。耳心地の良い、声だ。

「あら、初めての方ね」

《血圧心拍が急上昇しました。直ちにログアウトしてください》

息を大きく吐く、そして吸う。何度か繰り返すと、眼の前に点滅して流れたアラートが消えた。

「はじめまして、セツナと申します」

自分に出せる、精一杯のイケボで答える。

店の奥には、とても美しい女性がいた。つややかに光る烏の濡羽の黒髪をポニーテールにし、二重の端にはキラキラと光るシャドウ。吸い込まれそうな黒い瞳と、すっと通った鼻筋から、ぽってりと赤い唇が口角を上げふふふと笑う。

台で腰から下が見えないが、本屋にあるまじき露出! ぐっとくびれたウエストに、支えて差し上げたいお胸。

何よりその顔が、どストライク!!

「ご丁寧にどうも。私はアンジェリーナ。冒険者が貸本屋に来るなんて珍しいわね」

その一言一言が耳の奥をくすぐる。

「実はつい先程ゲートを潜ってこちらにやってきたばかりで」

「あら! 来訪者さんなのね。ようこそアランブレへ」

微笑む姿が女神。

俺は、このゲームに心底感謝した。