軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

297.飛んだ手袋

これはいったいどんな状況なのだ……。

俺にいち早く気付いたのはヴァージルだ。ここまではヴァージルの部下の騎士が連れてきてくれた。

聖地の内側に入ってわーとかふぉーとかしてたらニコニコ色々案内してくれて遅くなりましたね。部下さんを責めないでください。

大聖堂はさすがに覗かせてもらえなかったけど、途中闘技場とやらを通りました。

闘技場広すぎるんだよ。いやなんかPvPやるらしいから広くて当然だけど。聖地になにがあるんだよって感じ。

図書館の場所も教えてもらった。覗くだけ覗こうかな。内装とかは図書館本当にすごいんだって。

そうやって迎えに来てもらってからかなり時間が経って参上したらこんな惨状でした。

たぶんオオカミさんがローランド卿ですね。 細剣(レイピア) のスキル教えてくれる師匠。

なので俺は手を振りながら駆け寄りました。

「今日はありがとうございます!! 師匠と呼ばせてくださああいい!!!」

ぶんぶんって。

そうしたらリチャードに睨まれ、ヴァージルに苦笑された。

「貴様はっ!!」

「え、もうお互い関わるのやめましょうよ。リチャードさんも自分の品位をさらに落とすことになります。お互い、もう、関わるのを止めた方が、賢明です」

最後は区切り区切り、はっきりと言ってやると、顔を真っ赤に染めていた。

「ヴァージル、お待たせ」

俺はリチャードからヴァージルへと体を向き直る。だが彼にとってそれは我慢ならないことだったらしい。

何かが飛んできた。

飛んできた物はひょいと避ける。あ、【自動回避】まだとってないや。斥候に1度転職せねば。

考え無しに避けたらそれはヴァージルに当たった。

「あ、ごめ……」

俺が言うよりも早く、ヴァージルは投げられたそれを拾った。

下がっていた顔が正面を向いたとき、俺はヒッ、と小さく叫んだ。

イケメンめちゃくちゃオコなんだが!? 何を投げたんだ? と思って手元を見れば手袋。

あ……。

「ち、違う、そうじゃなく! 貴様! なぜ避ける!!」

「ばっか、知らねーよなにヴァージルに喧嘩売ってんだよ、お前が売るなら俺だろうが!」

「だから俺はお前に――」

「黙りなさい」

はい。

ヴァージルの声が聞いたことがないほど低い。いつもの習い性で動画撮ってるけど、これは、親衛隊には見せられぬのではないか。俺も見直したくないよ。

「君の意思はわかった。日時はまたサイラス卿を通して連絡するとしよう」

リチャードの顔が青い。

「ヴァージル、その、それはたぶん俺に対して……」

「セツナ」

と、ヴァージルは打って変わってこちらをむいて最高の笑顔を見せた。ヤバイ。トラヴィスの時よりいい笑顔で怖い。

「手袋が投げられ、それを私が拾った。つまりそういうことだ」

一人称が『私』になってるのがさらにヤバイ。

リチャード南無。

「てかお前謹慎中だろ……」

俺の突っ込みにリチャードは再びこちらを睨む。

が、ヴァージルがそれ以上を許さなかった。

「行きなさい。自分から説明するか、私からの説明で呼び出されるか、好きにするがいい」

赤くなったり青くなったり忙しいリチャードはさらにひと睨みされてその場を駆けだした。可哀想に。

フォローしてやりたいが、焼け石に水な気がする。

「ヴァージルあのさ……」

「私は少し根回しが必要になりそうなのでここで失礼します。セツナの 細剣(レイピア) スキル指導、よろしくお願いします」

えーん、話聞いてくれねえ!!

颯爽と去って行く姿はイケメンそのもの。立てばイケメン歩いてイケメン、座る姿に親衛隊昇天だよ……。

俺を案内してくれたイェーメールの聖騎士団員もヴァージルと一緒に帰って行った。

残された俺。どうしようかと思いつつ、挨拶をしてついでにどうしてこんな状況になったか聞いてみる。

「昨日何があったかはあまりよく知らないが、ヴァージル卿にセツナ殿と会わせる場を作ってくれ、と言っていたよ。彼は断っていたが……彼らは年も近いし、どちらも実家がその都市の領主だからな。対応に困っていたところだ」

一方は成人したての平騎士で、一方はすでに団長……もうステータスにどえらい差ができているじゃないか。

「その訴えをしに来たところに第9聖騎士団の私がいるのも気にくわなかったんだろうな。獣人に強い忌避感を覚えるものが多い」

「今回俺が巻き込まれた騒動……あくまでもあっちからですからね! それにも獣人さんが関わっていまして。困ったなぁ。ヴァージルマジで怒ってたし」

「獣人とは、第8都市の誰かだろうか?」

「ウォール家の息子さんが絡まれていたのが始まりですね。そこに出くわした俺の友人の獣人来訪者が巻き込まれました」

「ウォール家の!? 団長は把握してらっしゃるのだろうか……」

「あー、なんかつなぎを作っておくか? って聞かれたから、もうヴァージルとも友だちだし、そこからローランドさんを紹介してもらうんだって話してお断りしたから、もしかしたら知らないかも?」

「そうか……それではあとで確認を一応しておこう。まあ、ヴァージル卿の怒りようではその前に物事が進んでいそうだが、とにかく先にスキルを教えようか」

俺らが考えたって無駄だよね~な感じで今やれることをやろうの精神。嫌いじゃないぜ。

ローランド・ヴェルタさん。黒の強いオオカミ系獣人さん。ピコピコの耳とふさふさの尻尾。犬歯が結構がっつり出てるな。イェーメールに息子さんがいるのだ。

「火、風、雷を持っていると聞いている」

「はい、その3つを今持ってます。魔法の属性でないのは、時と、闇と星ですね」

「となると、教えられるのは2つ、氷と水だ」

氷、来たっ!

水も面白いけど氷は足止め系ありそうで嬉しい。

「よろしくお願いします!」

俺が元気よく頭を下げると、ローランドさんはにっこり笑った。ごついけど笑顔は人なつっこいんだよね、この人。