軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

26.石積み積み

門兵さんと軽く揉めた。

話通しておいてもらえなかったのか?

南北に走る通りをダッシュ、といっても、街中ではあまりむやみに走れない。それこそイベントでもなければ。なので気持ちだけダッシュで普通に歩いて真っ直ぐ向かう。

貴族門のところで、ハザックさんからお話が来ていると思いますが、セツナです。通してくださいと言ったら止められるどころか追い返されそうになった。

えーっ、と困っていると、先ほど石の采配をしていた、職人じゃなかろう人が通りかかり入れてもらえることになった。

「ありがとうございます。助かりました」

「いえいえ。あの門兵がおかしいですね。きちんと伝令は通っていましたから。セツナさんはハザックさんのお弟子さんですか?」

「いえ、違うんですけどなんかこーなりゆきで。石積みを見せてくださるそうで。光栄なことですね」

なんとなく、ハザックを持ち上げてみると、彼の顔がパァっと晴れる。

「ハザックさんの石積みは芸術ですからね! あれを見られるのはとても運が良い。私も城に仕えていなかったらハザックさんに弟子入りしたかったくらいです」

大ファンじゃん。

俺なんかよりこの人勧誘したらイチコロだろ。

とはいえ、持っている紙の束とかを見るに、文官なんだろうな。30くらいに見えるけど、線も細いし、力仕事向いてなさそう。

「今回は一緒にお仕事を出来ると聞いて夜も眠れませんでした」

ウキウキ嬉しそうな30歳男子。幸せでよかったね。

ようやく先ほどの現場に着くと、大きな石の塊がゴロゴロしていた。それを今はまた矢を打って細かく分けている。

「おう、セツナ。早かったな。始めたところだ。やはりあそこのストーンゴーレムは良い石になる」

ちょうど俺の腰の辺りまで石を積んでいた。

もとよりあった積み石が、崩れてしまったので補修するんだそうだ。本来積んであるところに積み直す。一からより難しいという。上の部分の壁も壊れていた。弟子たちがほどよい大きさに分けた石を無造作とも思えるスピードで積んで行く。だがそれのどれもがぴったりはまるのだ。

隣で大ファンの彼が口元を押さえてうるうるして感動していた。良い物見れたとは思うが、本当に大好きだな。

それから1時間もしないうちに石積みの部分はできあがった。あとはその上の壁部分だ。

「よし、今日はこんなところかな。船の手配ありがとな。残りの石はどこに置いておく? それとも船代折半でこっちで引き取ってもいいが?」

「上と話してきました。余計な仕事をさせたということで、船代はこちらもち。石もお渡しします」

「それで工賃をもらったらもらい過ぎな気もするが? あの石場は国のものだろ」

「日数もだいぶかかりましたし、採掘までさせてしまいました。問題ありませんよ」

「ならお言葉に甘えるが、そこまでされると気持ちわりぃな」

「……ヨーラン商会の石が、採掘場の物とは違いそうだという話になりました」

ハザックの目が鋭くなる。

「国の物に手を出したってことか? そりゃ、キナくせえな」

「口止め料も入っております。この件に関わりそうなことがありましたら即報告を願います」

「……わかったな、おめえら!」

「了解です!」

職人たちが口々に応える。

俺もうんうんと頷いておいた。

「明日は上の漆喰部分を仕上げる。今日はもう上がるぜ」

「お疲れ様でした」

晴れて解放だ。

帰宅道中、石積みの魅力についてめちゃめちゃ語られたが、ゲーム内で石積み極めてる暇がなさそうなので、また遊びに行きますと言って別れた。

《ハザックからフレンド申請が届きました》

まあまあ、予想していましたよっと。ぽちっとな。

ゴーレム狩り、今度誘われたときにはもう少し働けるよう何かスキル持っておきたいな。

《モランからフレンド申請が届きました》

なんでー!?

モランって、大砲のところで一緒に頑張った職人さんだけど、なんで?

まあ、とりあえずオッケー出すけど、謎だ。

よくわからない巻き込まれだったが、海の幸を山ほど手に入れられたのは良かった。もらってばっかりじゃ気が引けるが、俺の行動範囲で手に入るドロップって、ミュスの尻尾とバッドバットの羽根だけだからな。

さて、さてさてさて!! リアルタイム2日以上会っていない、アンジェリーナさんに逢いに行くぞおおおお!!!!

足りない、アンジェリーナさん成分が足りない!

ウッキウキで大通りを歩いていると、突然すぐ近くでものすごい音がした。

音というか、これ、咳?

そちらを見ると、身なりの良い老紳士が、崩れ落ちて身体を折って咳してる。

呼吸困難レベル。

「おい、誰か薬師のところに!」

「早く咳薬を!」

バタバタと人が行き交うので、俺は【持ち物】から例のヤーラの咳止め薬を取り出す。

「はい、おじいちゃん。これ飲める?」

粉だけどいけるかなー? 封を切って口を開けているところにざばーっと放り込んだ。

すると、なんということでしょう。

いや、ホントに怖いくらいピタッと咳が止まる。良かった良かった。

「じゃ! 急いでるから、お大事に!」

アンジェリーナさ~ん! 待っていてください。

ルンルン気分なのでおじいちゃんが何か言ってるけど無視だ。もうこれ以上誰にも俺を止められないのさっ!

懐かしの本の匂いを胸いっぱいに吸い込む。

「こんにちは」

「あら、セツナくん。ご無沙汰だったわね」

「ちょっと船に乗っていました」

「船!? すごいわね~」

「労働させられる側でしたけどね。クラーケンにも遭いましたよ」

「……それは、本当にすごいわね。無事に帰ってこられてよかったわ」

アンジェリーナさんに心配されてる!?

ドキドキしながら本を選ぶ。

何にしようかなあ。

ゴーレムはちょっと気になる。確か、どこかの棚にあったはずだ。

『ゴーレムの種類と特性』

『海の魔物たち』

「海とゴーレムって……もしかしてセツナくん、石切場に行ったの?」

「よくご存じですね。ハザックさんに連れられて、石積み見るはずが船に乗って石切場まで行ってきました」

「それは大冒険だったわね。でも、ハザックさんとゴーレム狩りもすごいことよ」

「ハザックさん、本当にすごい人でしたね」

1日であれだけの物が積み上がるはずがないのだが、まあ、すごかった。

「またしばらくは本を読んだりして過ごします」

「そうね、ごゆっくり」

やはりここが至福の空間だ。